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十四話 考えを改めること
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国王は、顔を大きく歪めると、堪えきれずに大きな声で笑い始めた。
「はっははっは!やはりウソであったか。エミリア嬢。ダレン。前へ来なさい。」
ダレンはにこやかにエミリアを抱きかかえて前へと進むと、国王の横へと立った。
国王は、笑い声を収めると、その場にいた者達にはっきりとした口調で言った。
「皆の者、突然の事に動揺していると思うが、事の顛末を話そう。」
国王はそう言うと、今回訪れた聖女に疑問を抱いていたことを皆に話をし、王太子であるダレンとそして教皇と協力して今回の騒動を起こした旨を伝えた。それ故に、今回の婚約破棄も無効であると知らされた。
集められていた貴族らは、顛末に驚いたものの、聖女の偽りによって本来王太子妃として問題のなかったエミリアが裁かれなかったことに安堵した。
そもそも王太子であるダレンと婚約者であるエミリアの仲が良い事は貴族中が知っている事であり、それ故に今回の聖女騒動で胸を痛めていたものも少なくない。
「だが、今回は聖女が関わっていた騒動故に、下手な事をすることも出来ず、皆には迷惑をかけた。だが、私は王太子はダレンが正統であると考えている。意義のあるものは?」
異議を申し立てるものはおらず、皆が王太子としてダレンを認めているのだとエミリアはほっと胸をなでおろした。だがしかし、だからといって、自分が本当にダレンの横にいていいのか、エミリアは不安からダレンに視線を向けた。
すると、ダレンは皆の前だというのにエミリアを抱きしめ、そして言った。
「本当に良かった・・。」
「ダレン様・・」
その中の良い姿に皆が微笑ましげに視線を向けている。
国王は大きく安堵の息を吐くのであった。
元々、事前に話を聞かされた国王であったが、その当初はダレンも、ダレンの護衛騎士らも皆本当にエミリアと共にこの国を去る決意を固めていた。その話はロラン公爵にも伝えられており、その言葉を聞いた瞬間、国王は自らの考えを改めることにした。
この国は聖女というものに縛られ過ぎていた。
これまでの歴史の中でも聖女が現れた時には必ず王太子妃となっていた前例があったからこそ、今回の聖女もそうすべきだとした。だが、聖女の性格をかんがみ、聖女とは本当に清らかでありこの国に平穏をもたらす存在なのだろうかと言う疑問が生まれた。
それは神殿も同様であり、教皇も交えて話をした結果、今回の騒動を起こす事となったのである。
聖女にはもちろん感謝している。だが、それでも聖女がこの国の王太子妃にふさわしいとの結論に皆が至らなかったのである。
ならばどうすることが最善か考え、そして自らの意思で元の世界に帰ってもらうのが一番との結論に至った。
そうするためには、聖女の口自ら国に帰りたいと言わせる事。そして、エミリアへの言葉がウソであることを告げさせる必要があったのだ。
エミリアは場所を移してから細かに話を聞き、顔をうつむかせると口を開いた。
「あの・・ですが、聖女様が闇を封印して下さったのは事実で・・・本当によろしかったのですか?」
国王は、自分が牢に入れられ、処刑されたかもしれないのにもかかわらずそう言える彼女に感服しながら、笑顔を向けた。
「あぁ。それに、感謝の気持ちを込めて、ドレスや宝石などは一流の物を渡してある。王太子妃の立場よりは安いが、それでも、かなりの額にはなるはずだ。」
「そう・・ですか。」
エミリアはダレンの膝の上に抱かれ、後ろからしっかりと抱きしめられている。
その様子に、国王は言った。
「・・そなたらを引き裂かない結果になって、本当に良かった。牢になど入れ、本当に申し訳なかった。」
エミリアは首を横に振ると、ダレンの手をぎゅっと握りしめて言った。
「・・・いえ・・・今、ダレン様の傍にいられることに、本当に感謝申し上げます。」
「はぁ・・本当に良かったよ。」
ぎゅっとまだ抱きしめられ、エミリアは顔を真っ赤に染め上げるのであった。
「はっははっは!やはりウソであったか。エミリア嬢。ダレン。前へ来なさい。」
ダレンはにこやかにエミリアを抱きかかえて前へと進むと、国王の横へと立った。
国王は、笑い声を収めると、その場にいた者達にはっきりとした口調で言った。
「皆の者、突然の事に動揺していると思うが、事の顛末を話そう。」
国王はそう言うと、今回訪れた聖女に疑問を抱いていたことを皆に話をし、王太子であるダレンとそして教皇と協力して今回の騒動を起こした旨を伝えた。それ故に、今回の婚約破棄も無効であると知らされた。
集められていた貴族らは、顛末に驚いたものの、聖女の偽りによって本来王太子妃として問題のなかったエミリアが裁かれなかったことに安堵した。
そもそも王太子であるダレンと婚約者であるエミリアの仲が良い事は貴族中が知っている事であり、それ故に今回の聖女騒動で胸を痛めていたものも少なくない。
「だが、今回は聖女が関わっていた騒動故に、下手な事をすることも出来ず、皆には迷惑をかけた。だが、私は王太子はダレンが正統であると考えている。意義のあるものは?」
異議を申し立てるものはおらず、皆が王太子としてダレンを認めているのだとエミリアはほっと胸をなでおろした。だがしかし、だからといって、自分が本当にダレンの横にいていいのか、エミリアは不安からダレンに視線を向けた。
すると、ダレンは皆の前だというのにエミリアを抱きしめ、そして言った。
「本当に良かった・・。」
「ダレン様・・」
その中の良い姿に皆が微笑ましげに視線を向けている。
国王は大きく安堵の息を吐くのであった。
元々、事前に話を聞かされた国王であったが、その当初はダレンも、ダレンの護衛騎士らも皆本当にエミリアと共にこの国を去る決意を固めていた。その話はロラン公爵にも伝えられており、その言葉を聞いた瞬間、国王は自らの考えを改めることにした。
この国は聖女というものに縛られ過ぎていた。
これまでの歴史の中でも聖女が現れた時には必ず王太子妃となっていた前例があったからこそ、今回の聖女もそうすべきだとした。だが、聖女の性格をかんがみ、聖女とは本当に清らかでありこの国に平穏をもたらす存在なのだろうかと言う疑問が生まれた。
それは神殿も同様であり、教皇も交えて話をした結果、今回の騒動を起こす事となったのである。
聖女にはもちろん感謝している。だが、それでも聖女がこの国の王太子妃にふさわしいとの結論に皆が至らなかったのである。
ならばどうすることが最善か考え、そして自らの意思で元の世界に帰ってもらうのが一番との結論に至った。
そうするためには、聖女の口自ら国に帰りたいと言わせる事。そして、エミリアへの言葉がウソであることを告げさせる必要があったのだ。
エミリアは場所を移してから細かに話を聞き、顔をうつむかせると口を開いた。
「あの・・ですが、聖女様が闇を封印して下さったのは事実で・・・本当によろしかったのですか?」
国王は、自分が牢に入れられ、処刑されたかもしれないのにもかかわらずそう言える彼女に感服しながら、笑顔を向けた。
「あぁ。それに、感謝の気持ちを込めて、ドレスや宝石などは一流の物を渡してある。王太子妃の立場よりは安いが、それでも、かなりの額にはなるはずだ。」
「そう・・ですか。」
エミリアはダレンの膝の上に抱かれ、後ろからしっかりと抱きしめられている。
その様子に、国王は言った。
「・・そなたらを引き裂かない結果になって、本当に良かった。牢になど入れ、本当に申し訳なかった。」
エミリアは首を横に振ると、ダレンの手をぎゅっと握りしめて言った。
「・・・いえ・・・今、ダレン様の傍にいられることに、本当に感謝申し上げます。」
「はぁ・・本当に良かったよ。」
ぎゅっとまだ抱きしめられ、エミリアは顔を真っ赤に染め上げるのであった。
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