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二十話 とんとん拍子

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 スノーティアはその後泣き始めてしまい、別室にて聞き取り調査がされることとなった。

 スノーティアが退場し、残されたサイラスの顔色は悪い。

 そんなサイラスに向かって国王は大きくため息をつくと言った。

「サイラス。お前は兄の婚約者を奪った立場となる。あまりに醜聞。よってルナ嬢との婚約は、昨日の時点でお前の不義によっての破棄とした」

「ち、父上! ですがっ! ルナは僕を愛しているのですよ! ルナが可愛そうではないですか!」

 声を上げるサイラスは、縋るような瞳でルナへと視線を向けた。

 ここで婚約破棄となった場合、自分の身分が危うくなるとサイラスは考えルナに執着を見せているのであろう。

 国王は問いかけるようにルナへと視線を向けた。

 ルナはサイラスの方へと視線を向け、そしてはっきりとした声で今まで溜まっていたうっ憤を吐き出すように言った。

「私はもう、貴方様を慕ってはおりません。婚約破棄、ありがたくお受けいたします」

「ルナ! この薄情な女め!」

 声を荒げるサイラスをイーサンは睨みつけると言った。

「イーサン口を慎め。お前のせいでどれほどの迷惑が今、皆にかかっているのか分かっているのか。行っておくがお前が遊び歩いている間、私とアーロは共にスノーティア嬢について調べ、その裏にいる男爵についても調査を行っていたのだぞ」

「え?」

「男爵はスノーティア嬢を使い、兄弟間に亀裂をいれる企てだったようだ。スノーティア嬢の本当の実家ではスノーティア嬢が見つかったことで男爵へと抗議文を送っている。スノーティア嬢が何故記憶を取り戻してなお男爵家にいたのかは今の所不明だがな」

 その言葉にサイラスの顔は青ざめ、そして国王へと視線を移すと言った。

「っち、父上! 僕は、僕は騙されていたのです! ですから!」

「・・・しばらく頭を冷やせ。公爵家令嬢を傷物にしてそのままにはできまい。お前の身の振り方については検討する」

「父上!」

「連れて行け」

「父上!」

 騎士達に両脇を掴まれ連れて行かれるサイラスを、ルナはじっと見つめた。

「ルナ嬢」

「はい」

 国王によばれそちらへと向き直る。

「そなたには、本当に申し訳ないことをした。サイラスとの婚約は破棄されたが、ムーン公爵家と王家の繋がりは確たるものとしたい。そこで提案だが、ここにアーロとイーサンがいる。どちらかと婚約を結んではもらえぬか?」

「え?!」

 その言葉にルナは目を丸くし、イーサンへと視線を向けた。アーロは自分への視線が素通りされたことに苦笑を浮かべている。

 イーサンはにっこりとほほ笑みを浮かべると言った。

「私を選んでくれたら、絶対に大切にするよ」

 その言葉にルナは顔を真っ赤に染め上げる。

 アーロはいつもの雰囲気とは違い、クスクスと笑いながら言った。

「父上。どうやら私には勝ち目がないようですよ? どうか、叔父上に素敵な婚約者を」

「ルナ嬢、どうかな?」

 ルナはちらりとイーサンを見つめると頷いた。

「・・・はい。私でよろしいのであれば・・・・」

「うん。君がいいんだ」

「・・・私も、です」

 国王はその言葉に頷くと、柔らかく微笑みを浮かべた。

「息子には失望したが、年の離れた弟に可愛らしい婚約者が出来たことは喜ばしい。ルナ嬢。中々に面倒くさい奴ではあるが、よろしく頼む」

「いえ。その、はい」

 顔を真っ赤にしながらもルナは頷き、イーサンと笑い会ったのであった。


 





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