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十九話 わぁっぁぁ
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「叔父上、発言の許可をお願いします。」
「いいだろう」
アーロの声が静かに響く。
「知らなかった、記憶がなかった。なるほど。まず知らなかったとはいえ婚約者がいるのにもかかわらず、女性と関係を持つのは人間としてダメだろう。スノーティア嬢も同様に、婚約者がいる相手とは分かっていたはず。それなのに関係を持つとは、それもまた人間としてダメだろう」
至極正論なことをアーロは言う。そして言葉は続いた。
「……私がお前とスノーティア嬢が関係を持っている場の部屋の外でルナ嬢を見つけた時の気持ちが分かるか? 王宮の私室でまさかそのようなことをする王子がいるとは…私は情けなくて仕方がなかった」
ルナはアーロの言葉に、そんなことを内心思っていたのかと苦笑を浮かべる。
「スノーティア嬢が結婚前に異性と関係を結ぶようなそのような女性であったことも、驚いたがな」
冷ややかなアーロの視線にスノーティアは瞳に涙をいっぱいに貯めて言った。
「き、記憶を失っていたのです。ですから、サイラス殿下に好意を寄せていただき、初めての事に動揺して、それで、王子様に声をかけていただけるなんてと舞い上がってしまったのです!」
ルナはその言葉に、思わず呟いた。
「ですが、スノーティア様は知っていましたよね? 自分がスノーティアであり第一王子殿下の婚約者であったと」
その言葉に皆がルナの方へと視線を向ける。ルナは勝手にしゃべってしまったと、慌ててイーサンへと視線を向けると言った。
「勝手に発言し、申し訳ございません」
「いや。だが何故そう思う?」
ルナはスノーティアの方を見つめて言った。
「髪色と瞳の色です。アーロ殿下の婚約者であるスノーティア様が行方不明となりその絵姿は公開されています。それなのに男爵家は何故今までスノーティア様を保護したと言わなかったのでしょう。同じ髪色と目の色をした令嬢を保護したならば確認の為に連絡をするはずでは? それなのに今まで沈黙し、そして今回の舞踏会に出すという。何かしらの意図がなければそうはしないでしょう」
「な、何の事ですか!? 私の男爵家の両親は、私の体調がよくなるまでと心配をして」
「はい。そこです。体調がよくなるまで、今までかかったならばそのように美しい所作が身につくでしょうか?」
「え?」
「スノー様の所作は大変美しい物です。先日のダンスも見事でした。どこであのようなダンスを習ったのですか? 失礼ながら、サイラス様と踊るためには、かなりのダンスの腕前でないと難しいはずです。サイラス様は簡単なワルツでさえたまにステップを適当にされます。それに合わせられるなんて、そんじょそこらの男爵令嬢が出来ることではございません」
「か、体が覚えていたのです! どんなにサイラス様がダンスが下手でも、体が、体がダンスを覚えていたのだと思います!」
小刻みにアーロの型は震え、イーサンは笑うのを隠そうともしない。
サイラスは顔を真っ赤にする。
「なるほど。では先日私に言った言葉は覚えていらっしゃいますか?」
「え?」
「『アーロ様よりサイラス様の方が好みなの。ごめんなさいね』と、貴方はおっしゃいました。第一王子殿下を名前で呼ぶ事など、恐れ多いはずです。所作は完璧な貴方なのに、間違えたとでも言うのですか?」
「あ……」
スノーの顔色が悪くなったことに、その場にいた皆が驚いたように表情を歪めた。
「いいだろう」
アーロの声が静かに響く。
「知らなかった、記憶がなかった。なるほど。まず知らなかったとはいえ婚約者がいるのにもかかわらず、女性と関係を持つのは人間としてダメだろう。スノーティア嬢も同様に、婚約者がいる相手とは分かっていたはず。それなのに関係を持つとは、それもまた人間としてダメだろう」
至極正論なことをアーロは言う。そして言葉は続いた。
「……私がお前とスノーティア嬢が関係を持っている場の部屋の外でルナ嬢を見つけた時の気持ちが分かるか? 王宮の私室でまさかそのようなことをする王子がいるとは…私は情けなくて仕方がなかった」
ルナはアーロの言葉に、そんなことを内心思っていたのかと苦笑を浮かべる。
「スノーティア嬢が結婚前に異性と関係を結ぶようなそのような女性であったことも、驚いたがな」
冷ややかなアーロの視線にスノーティアは瞳に涙をいっぱいに貯めて言った。
「き、記憶を失っていたのです。ですから、サイラス殿下に好意を寄せていただき、初めての事に動揺して、それで、王子様に声をかけていただけるなんてと舞い上がってしまったのです!」
ルナはその言葉に、思わず呟いた。
「ですが、スノーティア様は知っていましたよね? 自分がスノーティアであり第一王子殿下の婚約者であったと」
その言葉に皆がルナの方へと視線を向ける。ルナは勝手にしゃべってしまったと、慌ててイーサンへと視線を向けると言った。
「勝手に発言し、申し訳ございません」
「いや。だが何故そう思う?」
ルナはスノーティアの方を見つめて言った。
「髪色と瞳の色です。アーロ殿下の婚約者であるスノーティア様が行方不明となりその絵姿は公開されています。それなのに男爵家は何故今までスノーティア様を保護したと言わなかったのでしょう。同じ髪色と目の色をした令嬢を保護したならば確認の為に連絡をするはずでは? それなのに今まで沈黙し、そして今回の舞踏会に出すという。何かしらの意図がなければそうはしないでしょう」
「な、何の事ですか!? 私の男爵家の両親は、私の体調がよくなるまでと心配をして」
「はい。そこです。体調がよくなるまで、今までかかったならばそのように美しい所作が身につくでしょうか?」
「え?」
「スノー様の所作は大変美しい物です。先日のダンスも見事でした。どこであのようなダンスを習ったのですか? 失礼ながら、サイラス様と踊るためには、かなりのダンスの腕前でないと難しいはずです。サイラス様は簡単なワルツでさえたまにステップを適当にされます。それに合わせられるなんて、そんじょそこらの男爵令嬢が出来ることではございません」
「か、体が覚えていたのです! どんなにサイラス様がダンスが下手でも、体が、体がダンスを覚えていたのだと思います!」
小刻みにアーロの型は震え、イーサンは笑うのを隠そうともしない。
サイラスは顔を真っ赤にする。
「なるほど。では先日私に言った言葉は覚えていらっしゃいますか?」
「え?」
「『アーロ様よりサイラス様の方が好みなの。ごめんなさいね』と、貴方はおっしゃいました。第一王子殿下を名前で呼ぶ事など、恐れ多いはずです。所作は完璧な貴方なのに、間違えたとでも言うのですか?」
「あ……」
スノーの顔色が悪くなったことに、その場にいた皆が驚いたように表情を歪めた。
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