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六話 クズはやっぱりクズだった

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 ルナはクスクスと笑い、その場がシンと静まり返っていることに気づくと、視線をアーロとイーサンへと向ける。

 二人は少し驚いたような顔をしていた。

 ルナは何か自分が言ってはいけないことでも口走ったのだろうかと口を閉じる。

 イーサンはじっとルナの何かを探るように視線を向けてくるが、ルナとしては癖のあるふわふわとした黒髪も綺麗だなと思うばかりである。

 そしてそんなイケメン二人とヒロインでもない自分が一緒にいられることを幸せに思った。

 クズ王子と婚約者なのはいただけないが、イケメン二人を間近で見られるのはありがたいことである。

 イーサンはたれ目に涙ぼくろがある優しげなイケメンであり、くせのある髪の毛も人気であった。

 ルナの髪も癖があるので、雨が降る前の日は少しうねりが強くなる。それはイーサンも同じようで、ルナは親近感を勝手に覚えていた。

 そして思わずつぶやいてしまった。

「王弟殿下もやはり髪の毛が雨の前はうねりが強くなりますか?」

 言ってから、何を聞いているのだろうかとルナは王弟殿下に聞く質問ではなかったと思った。先ほどから失言ばかりしてしまうと、頭の中でルナが反省していると、イーサンは噴き出すように笑い始めた。

「はははっ! そ、そんな質問は初めてだなぁ」

「申し訳ございません」

 慌ててルナが頭を下げると、イーサンは首を横に振った。

「いや、面白かっただけだから」

「叔父上がそんなに笑うのを初めて見ました」

 アーロは驚いたようにそう言い、ルナは恥ずかしくなって顔を赤らめた。

「ふふふ。サイラスは素敵なご令嬢が婚約者でよかったねぇ」

 その言葉に、アーロとルナは苦笑を浮かべる。

 その様子にイーサンがまた首を傾げた時であった。王宮の渡り廊下から、サイラスが大きな欠伸をしながらシャツとズボンといった格好で現れた。

「まったく、いい所だったのに……」

 そうぶつぶつと呟きながらルナと視線があったサイラスは、その横にアーロとイーサンがいることに目を見開くと愛想笑いを浮かべた。

「あ、兄上に叔父上も。な、何故ルナと一緒に?」

 その服装と言葉にイーサンもアーロも険しい表情を浮かべる。

 イーサンは腕を組むと、サイラスに言った。

「サイラス。その恰好はなんだ。それに……」

 あまりにも乱れていると感じたのか、イーサンはサイラスを上から下までじっと見る。

 首元には生々しい跡がついており、口の端に口紅がついている。

 サイラスは慌てて首元を手で隠し、口を服の袖で拭いた。

 アーロの瞳が次第に険しくなっていく。

 せめて一回風呂に入るなりしてくるべきだろうとルナは内心思っていたが、あまりにも重い雰囲気に、ルナはどうしていいのか分からずに、ただただ冷や汗をかきながら固まったのであった。





 
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