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第十二話

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 フィリップは嬉々とした様子でセラフィーヌ家につくと、正面から堂々と屋敷へと足を向ける。

 止める門番などは、フィリップにとっては何の弊害にもならない。

「お待ちください!どうか!どうかしばしの間お待ちください!」

「私は待つ気はない。」

 フィリップはするりと屋敷へと入ると、精霊に案内をしてもらい中を進んでいく。

 幾人もの執事やメイドが止めようとするが、誰もフィリップに触れることさえ叶わない。

 そして、本棚の後ろの隠し部屋を開けると、そこには顔を青くしたセラフィーヌ家当主とその妻、そしてシルビアが身を寄せあっていた。

「ふふ。こんなところに隠れていたのか。」

 フィリップが楽しそうに笑みを浮かべると、セラフィーヌ侯爵が覚悟を決めたように立ち上がり、そしてフィリップの前に跪いた。

「フィリップ王弟殿下。お、お久しぶりにございます。セラフィーヌ家当主レオマでございます。」

「ふん。私がここに来た理由は分かっているな?」

「は・・はい。私共の香水の一件かと。」

「それだけではない。そら、お前が行った不正の数々だ。ふふふ。可愛そうになぁ。妻と娘は。」

「ど、どうかお許し下さい!貴方様のいずれ役に立って見せます!なので、どうか!」

「ははっ!私は王位には興味がないので、お前のようなものが役に立つ機会などこない。」

「ならば、どうか娘と妻だけでも!」

 その言葉にシルビアはフィリップに手を伸ばし、浅ましくもその腕に自分の胸を押し付けながら言った。

「ど、どうか許してくださいませ。私はフィリップ様にならばどのような事をされても構いません。ですからどうか。」

 熱に浮かされるような瞳。そして、甘い花の香りにフィリップは大きくため息をついた。

「私に媚薬が効くとでも思っているのか?」

「え?いえ、その。ですが、私を自由に出来るのですよ?フィリップ様も男ならば肉欲はございませんの?」

 その言葉にフィリップはシルビアを突き飛ばすと、美しい笑みを浮かべた。

「お前のような醜い女を抱く趣味はない。ウィリアムは目が悪いのか頭が悪いのか。媚薬ごときで操られるなど、王家の恥だと、私は思っている。まぁ、ルルティアが悲しむからそんなことは言わないけれどね。」

「なっ!何故です?!あんな女より私の方が美しいのに!」

「え?え?本当にそう思ってるの?」

「当たり前です!スタイルも、髪も顔も私の方が優れているわ!」

 フィリップは面白そうに笑うと言った。

「本当にお前は汚いねぇ。ルルティアの方が遥かに美しい。心根も外見も、私にとってはルルティアが最上であるよ。はぁ。疲れてきたな。さっさと終わらせるか。」

「う、嘘です!私の方が美しいのに!」

「はいはい。では、とりあえず。侯爵は爵位の剥奪。刑については後日、奥方は知らなかったとはいえ罪はある。よって流刑。娘は、その心根を鍛え直すために修道院送り。はい。と言うことだ。」

 ガタガタと人の入る音が響き、騎士達が現れてセラフィーヌ家を立ち入り調査を行っていく。

 最後までシルビアは悲鳴をあげ、逃げようとしていたが、女の力で逃げられるわけがない。

 最後は騎士に引きずられるようにしてその場を後にした。

 フィリップはその様子に苦笑を浮かべた。

「精霊が逃げるほどの醜い心の娘のどこが美しいというのかねぇ。はぁ。ルルティアを抱き締めて癒されたい。」

 けれども一刻も早くこの件を解決してルルティアを確実に手に入れたいと願うフィリップは、我慢をして仕事を続けるのであった。


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