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第十二話

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 ジャックフォッドはリフレ帝国について内々に調査を始め、そしてその後エマの呼び出しに応じた聖獣の話も聞いたのちに今後どうするべきかを思案していた。

 聖獣の話によれば、エマはリフレ帝国の正当な王となる存在であり、そして国民は王を待ち望んでいるのだと言う。

 聖獣はエマに頭を撫でなられながら、ジャックフォッドに言った。

『主を早急に城へと連れて行き、正式な王位継承の儀をしてもらいたい。』

 その言葉にエマの聖獣を撫でる手は止まった。

 それに気づいた聖獣は、おそるおそるといった様子でエマを見上げると悲しげな表情を浮かべた。

『主は、王になるのが嫌なのか?』

「・・・私には、過ぎた地位です。それに・・・あの国に帰るのが怖いのです。」

『主は我が守る。その首元にある呪いさえなければ、もっと早々に主を見つけることが出来たのに・・忌々しい。』

 ジャックフォッドはその言葉に眉間にしわを寄せた。

「呪い?・・それはエマ嬢が話してくれた、兄につけられたというものか?・・・それはどのような呪いなのだ?」

『主の力を隠し、見つけられないようにするものだ。』

「そもそも何故エマ嬢は虐げられていたのだ?お前はそれに気づかなかったのか?」

 その言葉に聖獣は悲しげな声で泣き声を上げると言った。

『我が産まれたのは、リフレ帝国に偽の王として、主の兄が収まっていた時であった。我は産まれ、そしてそれと同時に兄が偽の王であることを国民に知らしめた。正式な王位継承者がいるはずだと、国民は必至になって探したのだ。だが、それを兄であるエゼビアは隠匿し、自らも姿を消した。』

「なるほど・・・」

 ジャックフォッドは静かに頷くと、顔色の悪くなってきたエマに菓子を進めると、その頭を優しく撫でながら言った。

「大丈夫だ。心配するな。」

「ジャックフォッド様・・でも、もし兄が私に気付いたら・・・」

「俺が守る。心配することはない。」

『主!我もいる。エゼビアはただの人。どうすることも出来ないはずだ。』

「だが、その兄の行方は気になるな・・」

 聖獣は静かに頷いた。

『・・・死んではいない。あいつも王族の端くれだからな・・死ねば分かる。』

 震えるエマの手をジャックフォッドは優しく包みながら、小さく息を吐いた。

 どうするべきか。

 騎士であるジャックフォッドは国に忠誠を誓っている。しかし、自国の王が果たしてエマをどう扱うかは測り兼ねていた。

 ガリレア王国側がリフレ帝国の正統なる王位継承者を隠匿していたとなれば、リフレ帝国との開戦もやむを得ないかもしれない。

 だが、魔物の姫君であるエマをリフレ帝国に渡した時、魔物の国がどう出るかが分からない。

 そう、ジャックフォッドが考えをまとめあぐねいている時であった。

 聖獣の耳がピクリと動く。

『・・何かが、来たぞ。』

 ジャックフォッドも腰の剣に手を伸ばすと言った。

「あぁ。・・聖獣よ、エマを守れ。俺が外へ出る。」

『分かった。』

「ジャックフォッド様!?」

 震える手でジャックフォッドの服を掴んだエマの頭を、安心させるようにジャックフォッドはやさしくぽんぽんと撫でると言った。

「心配するな。俺は負けた事が無い男だぞ。」

 にやりと笑った顔があまりに男らしくかっこよく見えて、エマは顔を赤く染めるのであった。
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