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第八話
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エマとジャックフォッドは馬車に乗って町を抜け、東の森へと散策に出かけた。
西の森は比較的人気のデートスポットとなっているのだが、東の森はどちらかと言えば獣がいたり、木々が鬱蒼と生い茂っていたりすることもあってあまり人は近づかない。
何故ジャックフォッドが散策にこちらを選んだのかと言えば、出来るだけ人目を避けるためである。
これは別にジャックフォッドがエマを他人に見せるのを嫌がっているとかそういう事ではない。逆に、エマを見た人々の反応を、エマに知られたくなかったのだ。
エマを傷つけたくない。
そうジャックフォッドは思い、事前にこの森に視察に訪れて大体の散策場所を決めておいたのである。
西の森には劣るかもしれないが、こちらの森にだって見どころはある。
馬車が止まり、ジャックフォッドは向かい合わせに座るエマに言った。
「貴方が気に入ってくれるといいのだが。」
「ジャックフォッド様と一緒なら、きっとどこでも楽しいですわ。」
「そう言ってもらえるとありがたい。」
ジャックフォッドとエマは馬車をおりた。
そこは少し開けた小さな花畑になっており、様々な色合いの花々が、つつましやかに咲きほこっている。
「まぁ! とても可愛らしいお花ですね。」
魔物の国の植物は気を抜くとこちらを襲ってくるものばかりなので、エマは一瞬大丈夫だろうかと指でつついて、攻撃してこないことを確認するとほっとした。
「エマ嬢。あちらの方に小さな泉もあるんだ。行ってみよう?」
ジャックフォッドに優しく手を取られ、エマは森の中を歩いていく。
今日は歩くと聞いていたので、だいぶ軽装の服を選んで着て良かったとエマは内心で思った。
これでドレスにハイヒールの靴だったならば、どろどろになってしまうところであった。
森を進んで行くと小さな泉が見えてきて、エマは瞳を輝かせた。
泉はきらきらと輝き、そして美しく太陽の光を反射させている。
「まぁ・・・きれい。」
「この泉はね、不思議な言い伝えがあるんだ。」
「言い伝えですか?」
「あぁ。古傷でも癒してしまうとか、精霊が住んでいるとか、呪いを解くとか。ふふ。おかしなものばかりだな。」
エマはその言葉に一瞬びくりと肩を震わせた。
呪いを解く。
エマはそっと自分の首筋に手を触れた。
自身に何かしらの呪いがかかっている事は分かっていた。だが、これが一体何なのか、エマは未だにわからずにいる。
もしかしたら、水につかれば呪いが解けるのかしら?
そう、エマはおとぎ話のようなことを考えてくすりと笑った。
「面白い言い伝えですね。他にもあるのですか?」
「あぁそうだな・・・たしか・・・・あぁ、運命の人に出会えるとか。」
「運命の人・・・なら、私が覗いたら、ジャックフォッド様が見えるのかしら?」
その言葉に、ジャックフォッドは目を丸くした。
エマは慌てて口をつぐみ、ジャックフォッドを覗き見ると、顔色は変わらないが、耳元が真っ赤に染まっているのが見えた。
その姿にエマも恥ずかしくなり顔を赤らめると、場を和ませようと泉の中を覗き込んだ。
「何か、見えるかしら?」
澄んだ水の中が、ゆらりと揺れた。
「え?」
何かがこちらを覗き込んでいる気がしてエマは目を丸くしたが、ああ自分が被り物をかぶっているからそう見えるのかと納得した。
ただ、水の中に映っている影の瞳が見えた瞬間エマは身を固くする。
そこに映った瞳の色は、七色に移りゆく摩訶不思議な色合いをしており、自分の瞳の色とは違うことは明白であった。
『見つけた。我が主。』
次の瞬間水がざばりと勢いよく吹き上がり、エマは呆然とし、ジャックフォッドは剣を構えるとエマを自身の背に隠してかばった。
西の森は比較的人気のデートスポットとなっているのだが、東の森はどちらかと言えば獣がいたり、木々が鬱蒼と生い茂っていたりすることもあってあまり人は近づかない。
何故ジャックフォッドが散策にこちらを選んだのかと言えば、出来るだけ人目を避けるためである。
これは別にジャックフォッドがエマを他人に見せるのを嫌がっているとかそういう事ではない。逆に、エマを見た人々の反応を、エマに知られたくなかったのだ。
エマを傷つけたくない。
そうジャックフォッドは思い、事前にこの森に視察に訪れて大体の散策場所を決めておいたのである。
西の森には劣るかもしれないが、こちらの森にだって見どころはある。
馬車が止まり、ジャックフォッドは向かい合わせに座るエマに言った。
「貴方が気に入ってくれるといいのだが。」
「ジャックフォッド様と一緒なら、きっとどこでも楽しいですわ。」
「そう言ってもらえるとありがたい。」
ジャックフォッドとエマは馬車をおりた。
そこは少し開けた小さな花畑になっており、様々な色合いの花々が、つつましやかに咲きほこっている。
「まぁ! とても可愛らしいお花ですね。」
魔物の国の植物は気を抜くとこちらを襲ってくるものばかりなので、エマは一瞬大丈夫だろうかと指でつついて、攻撃してこないことを確認するとほっとした。
「エマ嬢。あちらの方に小さな泉もあるんだ。行ってみよう?」
ジャックフォッドに優しく手を取られ、エマは森の中を歩いていく。
今日は歩くと聞いていたので、だいぶ軽装の服を選んで着て良かったとエマは内心で思った。
これでドレスにハイヒールの靴だったならば、どろどろになってしまうところであった。
森を進んで行くと小さな泉が見えてきて、エマは瞳を輝かせた。
泉はきらきらと輝き、そして美しく太陽の光を反射させている。
「まぁ・・・きれい。」
「この泉はね、不思議な言い伝えがあるんだ。」
「言い伝えですか?」
「あぁ。古傷でも癒してしまうとか、精霊が住んでいるとか、呪いを解くとか。ふふ。おかしなものばかりだな。」
エマはその言葉に一瞬びくりと肩を震わせた。
呪いを解く。
エマはそっと自分の首筋に手を触れた。
自身に何かしらの呪いがかかっている事は分かっていた。だが、これが一体何なのか、エマは未だにわからずにいる。
もしかしたら、水につかれば呪いが解けるのかしら?
そう、エマはおとぎ話のようなことを考えてくすりと笑った。
「面白い言い伝えですね。他にもあるのですか?」
「あぁそうだな・・・たしか・・・・あぁ、運命の人に出会えるとか。」
「運命の人・・・なら、私が覗いたら、ジャックフォッド様が見えるのかしら?」
その言葉に、ジャックフォッドは目を丸くした。
エマは慌てて口をつぐみ、ジャックフォッドを覗き見ると、顔色は変わらないが、耳元が真っ赤に染まっているのが見えた。
その姿にエマも恥ずかしくなり顔を赤らめると、場を和ませようと泉の中を覗き込んだ。
「何か、見えるかしら?」
澄んだ水の中が、ゆらりと揺れた。
「え?」
何かがこちらを覗き込んでいる気がしてエマは目を丸くしたが、ああ自分が被り物をかぶっているからそう見えるのかと納得した。
ただ、水の中に映っている影の瞳が見えた瞬間エマは身を固くする。
そこに映った瞳の色は、七色に移りゆく摩訶不思議な色合いをしており、自分の瞳の色とは違うことは明白であった。
『見つけた。我が主。』
次の瞬間水がざばりと勢いよく吹き上がり、エマは呆然とし、ジャックフォッドは剣を構えるとエマを自身の背に隠してかばった。
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