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十二話
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ルカは銀髪さんと一緒にアシュタル国へと向かう事を決め、今後の方針を話をすることにした。
何だかんだと話をしているうちに、銀髪さんがそんなに悪い人ではないことも分かり、誘拐したことや襲ったことも謝ってくれたので、まぁいいかと許してしまった。
アシュタル国の主な問題は、精霊の守護がないために、魔物に脅かされていることと、農作物の実りが少ない事が挙げられた。
それを解決できたなら、私がアシュタル国にいる必要はないだろう。
そうすれば、四人の所に戻れる。
私は四人のあの恐ろしい顔を思い出してぶるりと震えるが、だが、やはり離れているこの数日間で寂しさの方が強くなってきた。
四人の傍は温かい。
あの温もりがないことが寂しくてしょうがないと思っている自分は、もう四人に心を奪われているのであろう。
だが妖精の力を借りてアシュタル国へと入り、銀髪さんの計らいで王宮の客間へと案内されたルカは、その後国様と謁見する手はずとなったのだが、その場に現れた四人を見て、固まった。
国様の顔は銀髪さんによく似ているが、二人そろって顔色が悪い。
それもそうだろう。
カイン、ライ、クレスト、エバンは正式にフィガロ王国の使者として来ているということを王様から説明はされたが、四人の張り付けたような笑顔に、ルカは背筋が寒くなる。
怖い。
さっきまでは寂しくて早く会いたいとさえ思っていたはずなのに、今はこの場から逃げたくてたまらない。
だが四人は視線をルカから王様へと向けると、書状を差出し、王様がそれに目を通していく。私としては妖精さん達に力を借りて、アシュタル国の力になれたらと思っていたのだが、四人は私なんかの案よりもすばらしい案を持ってきてくれた。
妖精や精霊に頼り切らないその案に、私はなるほどなと思った。
妖精や精霊は愛し子によって対応が変わる。そういう不安定な政策は国としては出来るだけ避けたい事なのだろう。
「フィガロ王国とアシュタル国は近接していますし、同盟を結び、我が国との国境付近に神殿を新たに建てれば、魔獣の侵入をある程度は抑えることも可能でしょう。」
クレストに続いて、ライも口を開いた。
「農作物については、こちらの気候でしか育たない作物もあるので、それらと我が国とで貿易をこれから豊かにしていきましょう。」
その言葉に、王様も銀髪さんも瞳を輝かせた。フィガロ王国はそれなりに大きな国らしく、小国のアシュタル国からしてみれば、同盟はメリットしかないらしい。
だが、最後にカインの差し出した書面を見て、王様と銀髪さんの顔色がまた変わった。
「これは・・・・」
四人はにっこりと笑みを浮かべている。私は何だろうかとチラリと銀髪さんを見つめると、銀髪さんの視線が私と、四人とを行き来して、そしてうなだれるように頷いた。
「分かりました。いえ、愛し子を攫うなどという愚行を犯した自分に、多大なる恩赦、ありがとうございます。」
「どうしたの?何が書いてあったの?」
私がそう尋ねると、クレストが笑顔で言った。
「ルカに今後一切かかわりを持たない事と、王弟殿下には我が国から最も離れた領地へと引っ込んでもらうように書面にしたまでです。ルカを誘拐した張本人が、近くにいるなど、許せませんからね。」
「え・・・でも・・・」
銀髪さんは首を横に振ると、四人に向かって深々と頭を下げた。
「ありがとうございます。この国を、どうか同盟国としてよろしくお願いします。」
私は、この数日で少なからず銀髪さんの人となりを知っていたからこそ本当にいいのだろうかと不安に思ったが、顔を上げた銀髪さんの顔は晴れやかであり、私はほっとした。
何だかんだと話をしているうちに、銀髪さんがそんなに悪い人ではないことも分かり、誘拐したことや襲ったことも謝ってくれたので、まぁいいかと許してしまった。
アシュタル国の主な問題は、精霊の守護がないために、魔物に脅かされていることと、農作物の実りが少ない事が挙げられた。
それを解決できたなら、私がアシュタル国にいる必要はないだろう。
そうすれば、四人の所に戻れる。
私は四人のあの恐ろしい顔を思い出してぶるりと震えるが、だが、やはり離れているこの数日間で寂しさの方が強くなってきた。
四人の傍は温かい。
あの温もりがないことが寂しくてしょうがないと思っている自分は、もう四人に心を奪われているのであろう。
だが妖精の力を借りてアシュタル国へと入り、銀髪さんの計らいで王宮の客間へと案内されたルカは、その後国様と謁見する手はずとなったのだが、その場に現れた四人を見て、固まった。
国様の顔は銀髪さんによく似ているが、二人そろって顔色が悪い。
それもそうだろう。
カイン、ライ、クレスト、エバンは正式にフィガロ王国の使者として来ているということを王様から説明はされたが、四人の張り付けたような笑顔に、ルカは背筋が寒くなる。
怖い。
さっきまでは寂しくて早く会いたいとさえ思っていたはずなのに、今はこの場から逃げたくてたまらない。
だが四人は視線をルカから王様へと向けると、書状を差出し、王様がそれに目を通していく。私としては妖精さん達に力を借りて、アシュタル国の力になれたらと思っていたのだが、四人は私なんかの案よりもすばらしい案を持ってきてくれた。
妖精や精霊に頼り切らないその案に、私はなるほどなと思った。
妖精や精霊は愛し子によって対応が変わる。そういう不安定な政策は国としては出来るだけ避けたい事なのだろう。
「フィガロ王国とアシュタル国は近接していますし、同盟を結び、我が国との国境付近に神殿を新たに建てれば、魔獣の侵入をある程度は抑えることも可能でしょう。」
クレストに続いて、ライも口を開いた。
「農作物については、こちらの気候でしか育たない作物もあるので、それらと我が国とで貿易をこれから豊かにしていきましょう。」
その言葉に、王様も銀髪さんも瞳を輝かせた。フィガロ王国はそれなりに大きな国らしく、小国のアシュタル国からしてみれば、同盟はメリットしかないらしい。
だが、最後にカインの差し出した書面を見て、王様と銀髪さんの顔色がまた変わった。
「これは・・・・」
四人はにっこりと笑みを浮かべている。私は何だろうかとチラリと銀髪さんを見つめると、銀髪さんの視線が私と、四人とを行き来して、そしてうなだれるように頷いた。
「分かりました。いえ、愛し子を攫うなどという愚行を犯した自分に、多大なる恩赦、ありがとうございます。」
「どうしたの?何が書いてあったの?」
私がそう尋ねると、クレストが笑顔で言った。
「ルカに今後一切かかわりを持たない事と、王弟殿下には我が国から最も離れた領地へと引っ込んでもらうように書面にしたまでです。ルカを誘拐した張本人が、近くにいるなど、許せませんからね。」
「え・・・でも・・・」
銀髪さんは首を横に振ると、四人に向かって深々と頭を下げた。
「ありがとうございます。この国を、どうか同盟国としてよろしくお願いします。」
私は、この数日で少なからず銀髪さんの人となりを知っていたからこそ本当にいいのだろうかと不安に思ったが、顔を上げた銀髪さんの顔は晴れやかであり、私はほっとした。
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