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アンシェスター家の双子 舞踏会へ参加する 一話

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 ヘレンとロナウドは、朝起きて支度を済ませると、父エヴァンの鍛練場へと足を向けた。

 エヴァンは太い木刀を意図も容易く扱い、それを振り回している。

 その姿をこっそりと見ていた二人は、にこりと笑いあうと、近くに落ちていた枝を拾いあげ、森の中を駆け抜けていく。

 そして、二人は跳び跳ねるように森の中を駆け抜け、枝を剣に見立てて、枝をぶつけ合って遊ぶ。

 その身軽さと剣さばきは大人顔負けであるが、二人にとっては遊びである。

「ヘレン!」

「なぁに?ロナウド!」

「今度開かれる舞踏会、楽しみ?」

「えぇー?うーん」

 ヘレンはロナウドの持っていた枝を弾き飛ばすと、切り株の上へと腰かけて、ため息をついた。

「まぁねー。でも、私はこうやってロナウドと遊ぶ方が好き」

「僕もー!」

 けれども、出なければならないのである。

 二人とも頭は良いし、運動神経も悪くない。

 だからこそ、猫を被れば難なくこなせはするのだけれどあまり気乗りはしない。

「でもさ、いつか私も、婚約者見つけないといけないのよねー」

「ん?えー、結婚しなければいいじゃん」

「そういうわけにもいかないでしょー?」

「一緒にここを守ろうよ」

 そうできたら、どんなにいいだろうかとヘレンは思うけれど、母の姿を見ていれば、結婚への憧れもある。

「あーあ、どっかにお父様みないな人いないかしらねー」

「僕はお母様みたいな人がいいなぁー」
 
 二人は無理だろうなと頭の中で考えるのであった。

「それにね、私たちもいずれは貴族の役目を果たさなければならないでしょう?」

「あー、お母様がいってたやつかぁ」

「えぇ」

 母から、貴族の役目を教えられていたからこそ、それらに文句はない。

 ただし、まだ子どものままでいたいと、考えてしまう。

「あと、辺境との信頼関係を深めるためとかって、王族との縁談も来そうで嫌だよね」

「あー。それねー」

 二人は大きくため息をついた。

 今のところラクト殿下の相手として最有力はエスタ令嬢ではあるが、まだまだどうなるかはわからない。

 恋愛のれの字すら知らない二人には、舞踏会で華やかに着飾るよりも森の中を駆け回る方が楽しいに決まってはいる。

 それに。

「お母様の側にいたいわ」

「まぁねー、そりゃーねー」

 二人は空を見上げながら、まだまだ子どもでいたいと何度も繰り返して思うのであった。





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