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第三十二話

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 顔が、体が熱い。

 まるで体が煮えたぎっているような感覚に、アマリーは自分の心臓の音すら聞こえるような気がした。

 ルルドはダンから視線をアマリーへと移すと、困ったような表情を浮かべた。

「アマリー。そんな目で見られては勘違いをしてしまうよ。」

 その言葉にアマリーが首を傾げると、ルルドはくすりと笑いアマリーの額に優しくキスを落とした。

 突然の事にアマリーは何が起こったのかが分からず、目を丸くすると、ルルドは口元に手を当て、ため息を飲み込みながら言った。

「あまり、誘惑しないでくれ。」

「へ?誘惑?」

「ああ。、、、はぁ。それで?舞踏会はどうだい?キミのお眼鏡にかなう男性はいたのかな?」

「え?えっと、、、、そうですね、、、えー。」

 確かに素敵な男性達はたくさんいた。

 美しい人、逞しい人、魅惑的な人。

 けれど、どの人もアマリーには同じように見えた。

 そして、同じように見えない唯一の人が今、目の前にいる。

 アマリーは、ルルドの服の袖を掴むと、小さく息を吐いて、気持ちを固めるとゆっくりとルルドを見上げて言った。

「ここに、、、、あの、、います。」

 その言葉に、ルルドは一瞬目を見開くと、何かを言いかけて、口を開けたが、そのままゆっくりと閉じると、とても柔らかな笑みを浮かべた。

「それは、私という事で間違いないかな?」

 小さくアマリーはこくりと頷くと、恥ずかしさに顔から火が出そうであった。

 ルルドは嬉しげに目を細め、アマリーをぎゅっと抱き寄せた。

「本当にいいのかい?素敵な男はいただろうに。」

「ルルド様が、、、、いいのです。」

 抱きしめる腕が強められ、アマリーはぴったりとくっついた感覚に心臓が跳ねた。

「あまり可愛い事を言わないでくれ。我慢が効かなくなる。」

「る、、、ルルド様は遠慮しすぎなのです。私は、他の男性を見なくても、、、最初からルルド様が良かったです。ッきゃッ!」

 ルルドはその言葉にアマリーの両頬を両手で包むとアマリーの顔をじっと見つめてにやりと笑って言った。

「誘惑するなと言っているのに、本当に私でいいんだな?」

「え?はい。その、、ルルド様が、、、よろしいのであれば。」

 顔を真っ赤にするアマリーに、ルルドは満面の笑みを向けるとその唇にキスをした。

 アマリーは驚きのあまり硬直したが、触れるだけのキスの甘さに唇が離れるとほうと息をついた。

「良かった。アマリー。愛している。」

「は、、はい。私も、、愛しております。ルルド様。」

 ルルドに抱きしめられ、アマリーは幸せを感じていた。

 自分を見てくれる人に出会えた事で胸の中が幸せで満たされていく。

 舞踏会の音楽が遠くで響いて聞こえる中、アマリーはまるで夢の中にいるような感覚に包まれた。






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