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第十六話
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ルルドと共にアマリーはテイラーの後を追うと、中庭に人だかりができていた。
どうやら首謀者が捕まったようで、アマリーとルルドはその人だかりの中へと入ると中央へと進み出た。
中央にはハンスとテイラー、そして騎士に捉えられている仮面の男が押さえつけられていた。
ハンスはゆっくりと仮面を取ると、第二王子であるオルトの顔が現れた。
「まさか、お前がわざわざ来るとは思わなかったよ。」
ハンスの言葉に、オルトは苦々しげに答えた。
「お前の大事に思うものをこの手に入れてみたかったんだ。あーあ。失敗か。」
あっけらかんとしたその口調にハンスはため息をついた。
「自分のしでかした事を分かっているのか?」
オルトはにやにやと笑いながら頷いた。
「もちろん。俺はお前に一度でいいから吠えづらをかいてほしかったんだよ。けど、まぁ、仕方がないな。」
その言葉に、ハンスは大きくため息をつくとオルトの肩に手をおいた。
「オルト、正直に言え。」
ハンスの真っ直ぐに見つめてくる様子にオルトはにっこりと笑みを浮かべる。
「はは。吠えづらではないが、その顔もいいもんだな。まぁ、何だかんだアマリーはなかなか面白い女だったから、勿体無い気もしたがな。」
ハンスはその言葉に目を丸くすると、アマリーに視線を向けた。
アマリーなんとも言い難い表情を浮かべているが、ハンスの視線に声を上げた。
「失礼な方ですね。一言宜しいですか?」
オルトは面白そうに視線をアマリーに向けた。
アマリーはオルトの道化のような姿を見て、何故わざわざオルトがこの場に来たのか分かったような気がした。
「オルト様は、もう少し兄上を信じるべきです。」
「は?」
「口では何だかんだと仰っていますが、先ほどから貴方を見つめる瞳は心配しているではないですか。そして貴方も、もう少し、正直になってみては?」
「何を、、、。」
「私は人の感情は、分かる方です。貴方に殺気も悪意もない事くらい、一緒の部屋にいれば分かります。」
「ほう?先程は怯えていたのになぁ。」
「いえ、あれは気持ちが悪くて怒っていたのです。それに、、、私を傷つけたいなら、もっと有効な手段はいくらでもあったでしょう。」
アマリーの真っ直ぐな瞳に、オルトは小さく笑い声を立てて言った。
「はは。もう少し早く会いたかったよ。アマリー。兄上、今回の首謀者は俺、そして俺を王にしようと母であるエミリアーデも共謀しています。どんな咎も俺は受け入れる所存ですが、母には恩赦を与えてはいただけませんか?あくまでも、首謀者は俺です。」
茶番である。
アマリーはその光景を見て悲しくなってきた。ハンスは、自分を暗殺しようとする者を捕えるための茶番を。
そしてオルトはおそらく。
「オルト、、、私はいくつかの証拠を掴んでいる。首謀者がお前ではなくエミリアーデだということも、分かっているのだぞ。」
「はは。証拠はあっても、確かな、確証となる証拠までは行きついていなかったから、こんな茶番を仕組んだのでしょう?なら、俺の茶番にも付き合ってくださいよ。」
ハンスは小さく息をついた。
「私に相談する術はなかったのか?」
オルトは首を横に振った。
「いくら愚かであっても、母を裏切ることは出来ません。」
「エミリアーデはこれを知っているのか?」
「いいえ。貴方の暗殺を本格化させる前にと勝手に動きました。時期王を殺されてはたまりませんからね。」
にやりといたずらをした子のような表情に、ハンスは悲しげな表情を返して頷いた。
「追って処分は言い渡す。連れて行け。テイラー!この後、共謀したエミリアーデを捕えてこい。いいな。」
「はっ!」
ハンスはアマリーとルルドに視線を向けると言った。
「ルルド、アマリーを送ってやってくれ。」
「分かりました。」
ハンスは大きく息を吐き、そして騎士に連れて行かれるオルトの背をしばらく見つめていた。
どうやら首謀者が捕まったようで、アマリーとルルドはその人だかりの中へと入ると中央へと進み出た。
中央にはハンスとテイラー、そして騎士に捉えられている仮面の男が押さえつけられていた。
ハンスはゆっくりと仮面を取ると、第二王子であるオルトの顔が現れた。
「まさか、お前がわざわざ来るとは思わなかったよ。」
ハンスの言葉に、オルトは苦々しげに答えた。
「お前の大事に思うものをこの手に入れてみたかったんだ。あーあ。失敗か。」
あっけらかんとしたその口調にハンスはため息をついた。
「自分のしでかした事を分かっているのか?」
オルトはにやにやと笑いながら頷いた。
「もちろん。俺はお前に一度でいいから吠えづらをかいてほしかったんだよ。けど、まぁ、仕方がないな。」
その言葉に、ハンスは大きくため息をつくとオルトの肩に手をおいた。
「オルト、正直に言え。」
ハンスの真っ直ぐに見つめてくる様子にオルトはにっこりと笑みを浮かべる。
「はは。吠えづらではないが、その顔もいいもんだな。まぁ、何だかんだアマリーはなかなか面白い女だったから、勿体無い気もしたがな。」
ハンスはその言葉に目を丸くすると、アマリーに視線を向けた。
アマリーなんとも言い難い表情を浮かべているが、ハンスの視線に声を上げた。
「失礼な方ですね。一言宜しいですか?」
オルトは面白そうに視線をアマリーに向けた。
アマリーはオルトの道化のような姿を見て、何故わざわざオルトがこの場に来たのか分かったような気がした。
「オルト様は、もう少し兄上を信じるべきです。」
「は?」
「口では何だかんだと仰っていますが、先ほどから貴方を見つめる瞳は心配しているではないですか。そして貴方も、もう少し、正直になってみては?」
「何を、、、。」
「私は人の感情は、分かる方です。貴方に殺気も悪意もない事くらい、一緒の部屋にいれば分かります。」
「ほう?先程は怯えていたのになぁ。」
「いえ、あれは気持ちが悪くて怒っていたのです。それに、、、私を傷つけたいなら、もっと有効な手段はいくらでもあったでしょう。」
アマリーの真っ直ぐな瞳に、オルトは小さく笑い声を立てて言った。
「はは。もう少し早く会いたかったよ。アマリー。兄上、今回の首謀者は俺、そして俺を王にしようと母であるエミリアーデも共謀しています。どんな咎も俺は受け入れる所存ですが、母には恩赦を与えてはいただけませんか?あくまでも、首謀者は俺です。」
茶番である。
アマリーはその光景を見て悲しくなってきた。ハンスは、自分を暗殺しようとする者を捕えるための茶番を。
そしてオルトはおそらく。
「オルト、、、私はいくつかの証拠を掴んでいる。首謀者がお前ではなくエミリアーデだということも、分かっているのだぞ。」
「はは。証拠はあっても、確かな、確証となる証拠までは行きついていなかったから、こんな茶番を仕組んだのでしょう?なら、俺の茶番にも付き合ってくださいよ。」
ハンスは小さく息をついた。
「私に相談する術はなかったのか?」
オルトは首を横に振った。
「いくら愚かであっても、母を裏切ることは出来ません。」
「エミリアーデはこれを知っているのか?」
「いいえ。貴方の暗殺を本格化させる前にと勝手に動きました。時期王を殺されてはたまりませんからね。」
にやりといたずらをした子のような表情に、ハンスは悲しげな表情を返して頷いた。
「追って処分は言い渡す。連れて行け。テイラー!この後、共謀したエミリアーデを捕えてこい。いいな。」
「はっ!」
ハンスはアマリーとルルドに視線を向けると言った。
「ルルド、アマリーを送ってやってくれ。」
「分かりました。」
ハンスは大きく息を吐き、そして騎士に連れて行かれるオルトの背をしばらく見つめていた。
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