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第六話

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「アマリー嬢。失礼だが、あまりそういう事は言うものではない。」

 その瞳の色に、熱がどんどんと上がっていくように感じた。

 むず痒いようなこの気持ちはなんなのだろうか。

 ルルドの瞳に自分が写っているのだと言うことに、心臓が煩いくらいに鳴る。

「えっと、、。」

 動揺を隠せずに、視線を泳がせると、ルルドは確かめるように、静かにもう一度尋ねた。

「やめる気はないのだな?」

 真剣な声に、アマリーは一瞬怯んだが、これを逃せば自分に婚期は訪れないと、踏ん張って頷いた。

「ええ。ルルド様の優しさは、、その、嬉しいのですが。」

 その言葉にルルドは小さくため息をつくと立ち上がった。

「分かった。その代わり、嫌になったりやめたくなったらすぐに言う事。それを約束してくれ。」

「はい。」

「では、これで失礼する。お茶会には私も出席するので、よろしく頼む。恐らくそこで何かがあるはずだ。」

「はい。分かりました。」

「では。見送りは結構。失礼する。」

 アマリーは見送ろうとしたのだが、ルルドはスタスタと歩いて行ってしまい、馬車に乗って帰ってしまった。

 あまりの早い帰宅に話は自分を説得するものだけだったのだと、アマリーは思うと顔がまた火照ってくるのを感じた。

 自分の為にわざわざ足を運んでくれたと言う事が、嬉しくなる。

 だが、アマリーは窓ガラスに映った自分を見て一瞬で現実に引き戻される。

 丸い体に丸い顔。

 ポチャッ娘令嬢と言う言葉を思い出して気分が落ちる。

 現実を見ろと窓ガラスに映る自分に言われる。

 こんな姿の自分を誰が愛してくれると言うのだ。

 勘違いするな。

 ルルドは誰であっても、きっと心配したはずだ。自分が特別なわけではない。

 そう思うと、自然と熱が嘘のように引いていく。

「どうせ私は、、、。」

 自嘲に満ちた言葉を吐きそうになり、ルルドの先程の言葉を思い出して、それを無理やり飲み込むと笑顔を作った。

 本当は変わりたい。

 けど、何をやっても自分の体型は変わらない。

『見て、あの醜い体。』

『一体何を食べているのかしら。』

『酷いわねぇ。』

『ちゃんと教育なさっていないのかしら。』

『はは。婚約者は可愛そうだな。』

『貰い手がいるのか?』

『あれはないな。』

 デビュタントからずっと、夜会に出るたびに、お茶会に顔を出すたびに呟かれる言葉。

 それは自分を否定するものばかりで、アマリーの自信を削ぎ落とすには十分過ぎるほど鋭利なものであった。

 けれど、思うのだ。

 変わろうと出来るだけの努力はした。

 それでも変わらない。

 なら、受け入れるしかないのだ。

 これが、私。

 窓ガラスに映る自分に手を伸ばし、その頬に触れると小さな声で呟いた。

「こんな私を、、、誰か、、愛してくれればいいのに。」

 そんな人現れないと分かっているのに願ってしまう。

 でも、願うのだけならば自由だろう。

 だから、アマリーはため息を付きながら願った。

 どうか、どうか、と。

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