上 下
3 / 95

第三話

しおりを挟む
 アマリーが帰った後、ハンスは笑い声を漏らし、ルルドとテイラーがそれを困った顔で見つめた。

「テイラーの台詞を思い出した。くそ、、ふふ。動けるデブだと!?凄く失礼だな!ははは!」

 テイラーは項垂れて、恨みがましくハンスを見た。

「あの時は驚いてしまって、、すみません。」

「あー。面白かった。だが、アマリー嬢か。以前から気にはなっていたが、凄いな。」

 そこへ、後始末を終えた執事のスタンリーが入ってくると、スタンリーは三人にお茶を出した。

 お茶を飲むと、ルルドが口を開いた。

「だから、あんな猿芝居は反対だったのだ。うまく行くはずがない。」

 その言葉にハンスは肩をすくめた。

「ちまちま命を狙われるのが面倒だったんだ。だが、今回の件で、僕の命が狙われている事が皆に伝わっただろう。きっと僕の命を狙う第二王子の派閥は、僕の警備が強固になる前にと仕掛けてくるぞ。」

 その言葉に、テイラーは心配そうな表情を浮かべた。

「そんな危険な事に、アマリー嬢を巻き込んで良かったんですか?」

 ハンスはにこりと笑った。

「言っただろう?以前から気になっていたって。」

「え?」

 ルルドはテイラーを見てため息をつくと言った。

「ハンス殿下は、以前からアマリー嬢を巻き込もうとされていたよ。私が反対をしていた。だが、自身で身を投じるとは思わなかった。」

「えぇ?!」

「本人だって承諾したんだ。いいじゃないか。」

「ちなみにですが、アマリー嬢の結婚相手は誰を押すつもりだ?」

 ルルドの言葉に、ハンスはにやりと笑った。

「さぁ、誰がいいかなぁ。」

 テイラーはその言葉に顔を青ざめさせると声を上げた。

「わ、、私は、好きな人がいるので、止めて下さい!」

 ハンスは笑い、頷いた。

「お前の好みはボンキュッボンが好みだしな。分かっているさ。まぁ、時間はあるんだ。それはおいおい。じゃあ、ここからは真剣な話をしていくぞ。」

 その言葉に三人の表情は真剣なものへと変わる。

 ルルドはカバンから資料を取り出すと、それを二人に見せた。

「第二王子派のリストだ。そして、ハンス殿下の命を狙っているのは、この方、でしょう。」

 そこには、資料と、そして側室であり第二王子の母であるエミリアーデの似顔絵が添えられている。

「やはりそうだよな。まぁ、我が子が可愛いんだろう。あの可愛らしいお顔でよく、ちまちまと暗殺を目論んだものだな。」

「ですが、殿下が婚約するとなると戴冠式が近いと思われるでしょうし、動くでしょうね。」

「あぁ。アマリー嬢ならばそう簡単には死にそうにないし、ありがたい。」

「護衛はつけますよ。彼女はレディです。傷ついたらどうするおつもりか。」

「ルルド様はアマリー嬢を気にかけているんですね?」

 テイラーの言葉に、ルルドは眉間にシワを寄せた。

 真面目で表情があまり変わらない、冷徹非道と呼ばれるルルドが女性の心配をしている様を初めて見たテイラーは驚いていた。

「気にかけているわけではない。」

「そうですかね?」

 ハンスは苦笑を浮かべると顔をまた真剣に戻して言った。

「エミリアーデ様には、第二王子と共に療養してただく流れかな。」

「それがよろしいかと。」

「エミリアーデ様、キレイな方なのにですねー。」

「あぁ。キレイな花には棘があるものさ。さぁ、決着をどうつけるか考えていこうか。」

 ハンスの言葉に、二人は頷いた。


 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生おばさんは有能な侍女

吉田ルネ
恋愛
五十四才の人生あきらめモードのおばさんが転生した先は、可憐なお嬢さまの侍女でした え? 婚約者が浮気? え? 国家転覆の陰謀? 転生おばさんは忙しい そして、新しい恋の予感…… てへ 豊富な(?)人生経験をもとに、お嬢さまをおたすけするぞ!

【完】婚約破棄された伯爵令嬢は騎士様と花咲く庭で

えとう蜜夏☆コミカライズ中
恋愛
伯爵令嬢のナターシャは婚約者の子爵子息から運命の恋をしたいと婚約破棄を言い渡された。しかし、実は他に女がいたからだった。 その直後、ナターシャの両親が馬車の事故で亡くなり、途方に暮れていたところ、遠縁を名乗る男爵夫妻が助けにやってきた。ところが、結局は夫妻に伯爵家は乗っ取られ、ナターシャは借金のカタに売り飛ばされることになってしまう。  他サイトでも掲載しております。  Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.  ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

【 完結 】「平民上がりの庶子」と言っただなんて誰が言ったんですか?悪い冗談はやめて下さい!

しずもり
恋愛
 ここはチェン王国の貴族子息子女が通う王立学園の食堂だ。確かにこの時期は夜会や学園行事など無い。でもだからってこの国の第二王子が側近候補たちと男爵令嬢を右腕にぶら下げていきなり婚約破棄を宣言しちゃいますか。そうですか。 お昼休憩って案外と短いのですけど、私、まだお昼食べていませんのよ?  突然、婚約破棄を宣言されたのはチェン王国第二王子ヴィンセントの婚約者マリア・べルージュ公爵令嬢だ。彼女はいつも一緒に行動をしているカミラ・ワトソン伯爵令嬢、グレイシー・テネート子爵令嬢、エリザベス・トルーヤ伯爵令嬢たちと昼食を取る為食堂の席に座った所だった。 そこへ現れたのが側近候補と男爵令嬢を連れた第二王子ヴィンセントでマリアを見つけるなり書類のような物をテーブルに叩きつけたのだった。 よくある婚約破棄モノになりますが「ざまぁ」は微ざまぁ程度です。 *なんちゃって異世界モノの緩い設定です。 *登場人物の言葉遣い等(特に心の中での言葉)は現代風になっている事が多いです。 *ざまぁ、は微ざまぁ、になるかなぁ?ぐらいの要素しかありません。

悪役令息、拾いました~捨てられた公爵令嬢の薬屋経営~

山夜みい
恋愛
「僕が病気で苦しんでいる時に君は呑気に魔法薬の研究か。良いご身分だな、ラピス。ここに居るシルルは僕のために毎日聖水を浴びて神に祈りを捧げてくれたというのに、君にはがっかりだ。もう別れよう」 婚約者のために薬を作っていたラピスはようやく完治した婚約者に毒を盛っていた濡れ衣を着せられ、婚約破棄を告げられる。公爵家の力でどうにか断罪を回避したラピスは男に愛想を尽かし、家を出ることにした。 「もううんざり! 私、自由にさせてもらうわ」 ラピスはかねてからの夢だった薬屋を開くが、毒を盛った噂が広まったラピスの薬など誰も買おうとしない。 そんな時、彼女は店の前で倒れていた男を拾う。 それは『毒花の君』と呼ばれる、凶暴で女好きと噂のジャック・バランだった。 バラン家はラピスの生家であるツァーリ家とは犬猿の仲。 治療だけして出て行ってもらおうと思っていたのだが、ジャックはなぜか店の前に居着いてしまって……。 「お前、私の犬になりなさいよ」 「誰がなるかボケェ……おい、風呂入ったのか。服を脱ぎ散らかすな馬鹿!」 「お腹空いた。ご飯作って」 これは、私生活ダメダメだけど気が強い公爵令嬢と、 凶暴で不良の世話焼きなヤンデレ令息が二人で幸せになる話。

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

紅い砂時計

cyaru
恋愛
ルドヴィカは1年に及ぶ隣国との交渉を終えてやっと帰国した。 本来ならば国王若しくは婚約者であり王太子でもあるジェルマノが出向かねばならなかった交渉。 しかし、落馬によって足を負傷したジェルマノは行くことが出来ず、ルドヴィカは「王太子妃になるのだから問題ない」と押し切られてしまった。 成果を持って帰国したルドヴィカはその日から人生が変わる。 王太子妃となり、いずれは王妃となってジェルマノと国を統べるはずだった未来。 その為に生まれた時から王妃となるべくして育てられてきたルドヴィカだったが、無理矢理に名代にされた交渉に出向いている間に異母妹のミレリーとジェルマノは子をなしていて、ミレリーは臨月間近。 子が出来た以上、王太子妃はミレリー。 そしてルドヴィカは側妃。 1つの家から2人も妃は出せないと突っぱねてみれば、ルドヴィカはミドラン伯爵家に養女として出されて手続きも終わっていた。 既に話が出来上がっていることに、怒る気にもなれないが何もせずに側妃となるのも腹立たしい。 ルドヴィカは全てを捨てて、自由に生きることを決意した‥‥のだったが…。 ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★2月22日投稿開始、完結は2月26日2時22分<(_ _)> ★男性に守られる女性をご希望の方はブラウザバックを強く推奨します。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません。

【完結】お父様。私、悪役令嬢なんですって。何ですかそれって。

紅月
恋愛
小説家になろうで書いていたものを加筆、訂正したリメイク版です。 「何故、私の娘が処刑されなければならないんだ」 最愛の娘が冤罪で処刑された。 時を巻き戻し、復讐を誓う家族。 娘は前と違う人生を歩み、家族は元凶へ復讐の手を伸ばすが、巻き戻す前と違う展開のため様々な事が見えてきた。

村八分にしておいて、私が公爵令嬢だったからと手の平を返すなんて許せません。

木山楽斗
恋愛
父親がいないことによって、エルーシャは村の人達から迫害を受けていた。 彼らは、エルーシャが取ってきた食べ物を奪ったり、村で起こった事件の犯人を彼女だと決めつけてくる。そんな彼らに、エルーシャは辟易としていた。 ある日いつものように責められていた彼女は、村にやって来た一人の人間に助けられた。 その人物とは、公爵令息であるアルディス・アルカルドである。彼はエルーシャの状態から彼女が迫害されていることに気付き、手を差し伸べてくれたのだ。 そんなアルディスは、とある目的のために村にやって来ていた。 彼は亡き父の隠し子を探しに来ていたのである。 紆余曲折あって、その隠し子はエルーシャであることが判明した。 すると村の人達は、その態度を一変させた。エルーシャに、媚を売るような態度になったのである。 しかし、今更手の平を返されても遅かった。様々な迫害を受けてきたエルーシャにとって、既に村の人達は許せない存在になっていたのだ。

処理中です...