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こんにちは魔王様2
しおりを挟む魔王城の中は薄暗く、自分の足音が異様に響いて聞こえる。
リナリーはなんと、一週間前の婚約破棄騒動直後に拉致されるように馬車に押し込められると、そのまま魔族の国の魔王城まで運ばれた。
途中宿屋に泊まらせてはもらえたが、自分のことを自分しなければならないという事実は思いのほか難しく、リナリーは今、心も体も疲れ果てている。
「リナリー様。心配はいりません。まずはお部屋に案内いたしますから、体をゆっくり休められてくださいね。」
そう言ったのは、リナリーの前を歩くメイド姿の女性であった。
黒髪に黒目。眼鏡をかけているのであまり表情は見えないが、穏やかな雰囲気を感じる。
「あの、魔王様は私が来ることをご存知だったのでしょうか?」
思わずそう尋ねると、メイドは大きく頷いた。
「もちろんでございます。リナリー様は人間と魔族の架け橋としていらっしゃった尊い方でございます。魔王様も、リナリー様の為に色々と準備されておりました。」
それを聞き、リナリーはほっと胸をなでおろした。どうやらちゃんと連絡は来ているようだ。もしや自分は押しかけ女房のような感じになっているのではと思ったが、ちゃんとそこは国王が話を通しているようでほっとした。
部屋に案内されたリナリーはその後数名のメイド達に風呂に入れられ、髪や服を整えられて、やっと「少しお待ちください」と部屋に一人になる事が出来た。
(メイド達がいるってありがたいわ。それになんだか皆友好的で良かったわ。)
メイド達はそれは嬉しそうに嬉々としてリナリーを着飾った。
鏡に映る自分を見つめ、リナリーは微笑みを浮かべた。
(綺麗な髪飾り。それにドレスは採寸もしていないのにぴったりだわ。)
リナリーの銀の髪に飾られたのはルビーの美しい髪飾りであった。
マーメイド型の黒と赤で仕上げられた妖艶な印象を与えるドレスは身体のラインにピタリと合い、リナリーの身体をさらに美しく魅せている。
(なんだか魔王様にお会いするのがドキドキしてきたわ。私変じゃないわよね?)
鏡の前でくるりと周り、姿を確かめていると、部屋をノックする音が響いた。
「リナリー様、失礼してもよろしいですか?」
「はい。どうぞ」
扉がガチャりと音を立てて開くと、最初に案内をしてくれたメイドがにこやかに告げた。
「魔王様がお待ちです。ご案内いたします。」
リナリーは、ゴクリと喉を鳴らし、そして長く息を吐いて心を落ち着かせると、にこやかに微笑んで頷いた。
(さぁ、魔王様とご対面ですわ。気を引き締めて行きましょう!)
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