7 / 7
七話 幸せ
しおりを挟む
結婚式が終わってから、スカーレットはルイスにぴったりと張り付かれていた。
本当はアゼフの事を一発撲りに行こうと思っていたのに、それすらも止められてしまい、結局はフラストレーションがたまった状態のままである。
婚約破棄についての慰謝料だなんだのは両親が解決するからいいと言われてしまい、人妻になったのだからアゼフに会いに行くことも出来なかった。
「ルイス。あの、離れてくれない?」
「ん? 嫌だよ」
そして結婚して以来、ルイスのべったり具合が加速していた。
読書をしていたスカーレットの膝の上にルイスは頭を乗せて、スカーレットの膝枕で心地よさそうにしている。
しかもふにゃっとした可愛らしい笑顔をスカーレットに向けてくるものだから、スカーレットとしてはたまったものではない。
「可愛い」
思わず素直な言葉がこぼれれば、ルイスはさらに嬉しそうに笑うと言った。
「スカーレットの方が可愛いよ」
そんないちゃいちゃとする二人を、遠目から見ていた両親は大きくため息をついた。
「アゼフくんには、本当に悪いことをした。最後に二人のおぜん立てまでしてくれて……本当にいい子すぎるだろう」
「ええ。そうですね。慰謝料の件はしっかりお支払しましょう」
「あぁ。子爵はいらないと言っているが、それではこちらが悪いしな」
「そうですね」
本来、この国では義弟と結婚するのは外聞がよくないとされている。
一緒に暮らしている男女だからこそ、結婚する前からそういう仲だったのではないかと噂する者がいるからだ。
だからこそ、両親もルイスとの結婚話を進める気はなかった。
だが、それをアゼフが後押ししたのである。
「二人には幸せになって欲しいから」
最終的にそう言われ、思わず涙してしまった二人である。
ルイスは後日、アゼフと二人きりであったようだが、その日の夜は酷く落ち込んでいた様子だったので恐らくは男として何か負けたような気分になったのだろうと二人は踏んでいる。
幸せそうに、スカーレットは笑い、そしてルイスも笑っている。
それを見て、二人も笑った。
親族一同への説明は大変なものではあったが、それでも二人の幸せが一番である。
「さぁ、少しばかりルイスの気を引き締めるかな」
「そうね。私もスカーレットの気を引き締めてあげましょう」
こうして両親によって、スカーレットとルイスはその後、引き離されてそれぞれお小言をもらうのであった。
おわり
★★★★
これにてこの物語はおわりとなります。
最後まで読んで下さり、ありがとうございました。
作者 かのん
本当はアゼフの事を一発撲りに行こうと思っていたのに、それすらも止められてしまい、結局はフラストレーションがたまった状態のままである。
婚約破棄についての慰謝料だなんだのは両親が解決するからいいと言われてしまい、人妻になったのだからアゼフに会いに行くことも出来なかった。
「ルイス。あの、離れてくれない?」
「ん? 嫌だよ」
そして結婚して以来、ルイスのべったり具合が加速していた。
読書をしていたスカーレットの膝の上にルイスは頭を乗せて、スカーレットの膝枕で心地よさそうにしている。
しかもふにゃっとした可愛らしい笑顔をスカーレットに向けてくるものだから、スカーレットとしてはたまったものではない。
「可愛い」
思わず素直な言葉がこぼれれば、ルイスはさらに嬉しそうに笑うと言った。
「スカーレットの方が可愛いよ」
そんないちゃいちゃとする二人を、遠目から見ていた両親は大きくため息をついた。
「アゼフくんには、本当に悪いことをした。最後に二人のおぜん立てまでしてくれて……本当にいい子すぎるだろう」
「ええ。そうですね。慰謝料の件はしっかりお支払しましょう」
「あぁ。子爵はいらないと言っているが、それではこちらが悪いしな」
「そうですね」
本来、この国では義弟と結婚するのは外聞がよくないとされている。
一緒に暮らしている男女だからこそ、結婚する前からそういう仲だったのではないかと噂する者がいるからだ。
だからこそ、両親もルイスとの結婚話を進める気はなかった。
だが、それをアゼフが後押ししたのである。
「二人には幸せになって欲しいから」
最終的にそう言われ、思わず涙してしまった二人である。
ルイスは後日、アゼフと二人きりであったようだが、その日の夜は酷く落ち込んでいた様子だったので恐らくは男として何か負けたような気分になったのだろうと二人は踏んでいる。
幸せそうに、スカーレットは笑い、そしてルイスも笑っている。
それを見て、二人も笑った。
親族一同への説明は大変なものではあったが、それでも二人の幸せが一番である。
「さぁ、少しばかりルイスの気を引き締めるかな」
「そうね。私もスカーレットの気を引き締めてあげましょう」
こうして両親によって、スカーレットとルイスはその後、引き離されてそれぞれお小言をもらうのであった。
おわり
★★★★
これにてこの物語はおわりとなります。
最後まで読んで下さり、ありがとうございました。
作者 かのん
15
お気に入りに追加
1,139
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
王子は婚約破棄を泣いて詫びる
tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。
目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。
「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」
存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。
王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
聖人な婚約者は、困っている女性達を側室にするようです。人助けは結構ですが、私は嫌なので婚約破棄してください
香木あかり
恋愛
私の婚約者であるフィリップ・シルゲンは、聖人と称されるほど優しく親切で慈悲深いお方です。
ある日、フィリップは五人の女性を引き連れてこう言いました。
「彼女達は、様々な理由で自分の家で暮らせなくなった娘達でね。落ち着くまで僕の家で居候しているんだ」
「でも、もうすぐ僕は君と結婚するだろう?だから、彼女達を正式に側室として迎え入れようと思うんだ。君にも伝えておこうと思ってね」
いくら聖人のように優しいからって、困っている女性を側室に置きまくるのは……どう考えてもおかしいでしょう?
え?おかしいって思っているのは、私だけなのですか?
周囲の人が彼の行動を絶賛しても、私には受け入れられません。
何としても逃げ出さなくては。
入籍まであと一ヶ月。それまでに婚約破棄してみせましょう!
※ゆる設定、コメディ色強めです
※複数サイトで掲載中
愛してほしかった
こな
恋愛
「側室でもいいか」最愛の人にそう問われ、頷くしかなかった。
心はすり減り、期待を持つことを止めた。
──なのに、今更どういうおつもりですか?
※設定ふんわり
※何でも大丈夫な方向け
※合わない方は即ブラウザバックしてください
※指示、暴言を含むコメント、読後の苦情などはお控えください
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
強い祝福が原因だった
棗
恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。
父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。
大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。
愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。
※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。
※なろうさんにも公開しています。
領主の妻になりました
青波鳩子
恋愛
「私が君を愛することは無い」
司祭しかいない小さな教会で、夫になったばかりのクライブにフォスティーヌはそう告げられた。
===============================================
オルティス王の側室を母に持つ第三王子クライブと、バーネット侯爵家フォスティーヌは婚約していた。
挙式を半年後に控えたある日、王宮にて事件が勃発した。
クライブの異母兄である王太子ジェイラスが、国王陛下とクライブの実母である側室を暗殺。
新たに王の座に就いたジェイラスは、異母弟である第二王子マーヴィンを公金横領の疑いで捕縛、第三王子クライブにオールブライト辺境領を治める沙汰を下した。
マーヴィンの婚約者だったブリジットは共犯の疑いがあったが確たる証拠が見つからない。
ブリジットが王都にいてはマーヴィンの子飼いと接触、画策の恐れから、ジェイラスはクライブにオールブライト領でブリジットの隔離監視を命じる。
捜査中に大怪我を負い、生涯歩けなくなったブリジットをクライブは密かに想っていた。
長兄からの「ブリジットの隔離監視」を都合よく解釈したクライブは、オールブライト辺境伯の館のうち豪華な別邸でブリジットを囲った。
新王である長兄の命令に逆らえずフォスティーヌと結婚したクライブは、本邸にフォスティーヌを置き、自分はブリジットと別邸で暮らした。
フォスティーヌに「別邸には近づくことを許可しない」と告げて。
フォスティーヌは「お飾りの領主の妻」としてオールブライトで生きていく。
ブリジットの大きな嘘をクライブが知り、そこからクライブとフォスティーヌの関係性が変わり始める。
========================================
*荒唐無稽の世界観の中、ふんわりと書いていますのでふんわりとお読みください
*約10万字で最終話を含めて全29話です
*他のサイトでも公開します
*10月16日より、1日2話ずつ、7時と19時にアップします
*誤字、脱字、衍字、誤用、素早く脳内変換してお読みいただけるとありがたいです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる