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七話 幸せ

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 結婚式が終わってから、スカーレットはルイスにぴったりと張り付かれていた。

 本当はアゼフの事を一発撲りに行こうと思っていたのに、それすらも止められてしまい、結局はフラストレーションがたまった状態のままである。

 婚約破棄についての慰謝料だなんだのは両親が解決するからいいと言われてしまい、人妻になったのだからアゼフに会いに行くことも出来なかった。

「ルイス。あの、離れてくれない?」

「ん? 嫌だよ」

 そして結婚して以来、ルイスのべったり具合が加速していた。

 読書をしていたスカーレットの膝の上にルイスは頭を乗せて、スカーレットの膝枕で心地よさそうにしている。

 しかもふにゃっとした可愛らしい笑顔をスカーレットに向けてくるものだから、スカーレットとしてはたまったものではない。

「可愛い」

 思わず素直な言葉がこぼれれば、ルイスはさらに嬉しそうに笑うと言った。

「スカーレットの方が可愛いよ」

 そんないちゃいちゃとする二人を、遠目から見ていた両親は大きくため息をついた。

「アゼフくんには、本当に悪いことをした。最後に二人のおぜん立てまでしてくれて……本当にいい子すぎるだろう」

「ええ。そうですね。慰謝料の件はしっかりお支払しましょう」

「あぁ。子爵はいらないと言っているが、それではこちらが悪いしな」

「そうですね」

 本来、この国では義弟と結婚するのは外聞がよくないとされている。

 一緒に暮らしている男女だからこそ、結婚する前からそういう仲だったのではないかと噂する者がいるからだ。

 だからこそ、両親もルイスとの結婚話を進める気はなかった。

 だが、それをアゼフが後押ししたのである。

「二人には幸せになって欲しいから」

 最終的にそう言われ、思わず涙してしまった二人である。

 ルイスは後日、アゼフと二人きりであったようだが、その日の夜は酷く落ち込んでいた様子だったので恐らくは男として何か負けたような気分になったのだろうと二人は踏んでいる。

 幸せそうに、スカーレットは笑い、そしてルイスも笑っている。

 それを見て、二人も笑った。

 親族一同への説明は大変なものではあったが、それでも二人の幸せが一番である。

「さぁ、少しばかりルイスの気を引き締めるかな」

「そうね。私もスカーレットの気を引き締めてあげましょう」

 こうして両親によって、スカーレットとルイスはその後、引き離されてそれぞれお小言をもらうのであった。


 おわり

★★★★
これにてこの物語はおわりとなります。
最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

作者 かのん

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