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三話 義弟がぐいぐいくる

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「ひゃあっ!!」

 驚いて悲鳴を上げると、くすくすという義弟ルイスの笑い声が聞こえてきた。

「る、ルイス? 何? どうして抱き着くのよ!?」

 思わずそう声を荒げると、ルイスは流れるような動作でスカーレットのことを横抱きにしてソファへと座った。

 突然のことに、スカーレットはされるがままであり、困惑して目を瞬かせた。

「え? え?」

「スカーレット。今日は本当に綺麗だったよ」

「は?」

 そう言うと、ルイスはスカーレットの頬にキスをし、そして嬉しそうににこにことほほ笑みながら、スカーレットの頭を優しく撫でる。

 いつのまにか大きくなった手で撫でられるのが思いの外気持ちがよく、スカーレットはぼうっとしていたのだが、はっとし、慌ててルイスと距離を取ろうとした。

 しかし、ルイスにがっちりと抱き寄せられていて、動けない。

「る、ルイス! 離して頂戴!」

 顔を真っ赤にしてスカーレットはそう叫ぶが、ルイスはただ楽しそうで、離す気はないようである。

「ちょっとルイス! やめて。 ちゃんと貴方とは離婚してあげるから、嫌がらせをしないで?!」

 その言葉に、部屋の気温が突然低くなったように感じ、ぶるりとスカーレットは身を震わせた。

「離婚なんて、絶対にしないよ」

「え?」

 ルイスの方を見ると、先ほどまでにこやかだったのが嘘のようにルイスの瞳は冷めており、スカーレットを優しくソファへと押し倒すと、その両手を片手で押さえ、もう一方の手でスカーレットの頬を撫でる。

「やっと姉さんを合法的に手に入れたんだ。絶対に手放さないから」

「は?」

 その言葉にスカーレットが呆然としていると、ルイスは優しく、振れるだけのキスをスカーレットに送った。

 ちゅっとリップ音が聞こえ、スカーレットの頭はそれだけで爆発しそうなほどに熱を持つ。

「なっなっな!」

「僕はね、ずっと姉さんのことが好きだったんだ。義父さんも義母さんもそれは知っているよ。僕と姉さんを結婚させてほしいって何度も願った。けど、アゼフがいるからダメだって……でも、今回の婚約破棄には本当に感謝している。そのおかげで、姉さんと結婚できたんだから」

「え?」

 呆然とするスカーレットはまさかアゼフとルイスが手を組んでこの婚約破棄を仕組んだのかと思ったが、ルイスがそれを先に否定した。

「言っておくけど、アゼフの婚約破棄については僕はノータッチだよ。あれはただのアゼフの本心」

「え……」

 それはそれで問題がある。やはりアゼフは一発撲ろうとスカーレットが心の中で思っていると、ルイスはぎゅっとスカーレットを抱きしめた。

「あぁ……幸せだなぁ」

「ちょ、ちょっと離して」

「うん。ごめんね。スカーレットは、僕と結婚なんてしたくなかったよね」

 寂しげな言葉に、スカーレットは思わず息を飲んだ。
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