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十八話 追い詰められた姉
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呼び出されたロザリーは、一体何がどうなっているのか部屋に入った直後にその異様な雰囲気に眉間にしわを寄せた。
その場にはショーンも付き添っているが、ばつが悪そうに顔をうつむかせている。
「ロザリー。聞きたいことがある」
父の言葉に、ロザリーは小首をかしげながらうなずいた。
「お父様。一体どうなさったの? それに、ライカがいる場所に私を呼び出すなんて……」
不安げな表情に両親の心が揺れているのが手に取るようにライカにはわかった。
ライカは姉の真意が分からずに、ただただ現状を見つめるしかない。
「ロザリー正直に言いなさい。お前は……お前はライカに嫌がらせなど、受けていなかったのではないか?」
「え?」
突然のことにロザリーは意味が分からないというように視線を彷徨わせ、そして震えた声で言った。
「ら、ライカがいる前で言うのははばかられますが、私はずっとライカに……嫌がらせを受けていましたわ。きっとライカはショーン様を取られたのが嫌だったのでしょう」
涙をにじませた瞳。それは迫真に迫っているように見え、皆が困惑する。
何が真実なのか。
しかし、ライカが嫌がらせをしたという証拠は一つもない。
先ほどの使用人らの言葉を聞いた以上、父はロザリーの言葉を信じられない。
「証拠はあるか?」
「え? 証拠?」
ロザリーの瞳が戸惑い揺れた。
「……使用人たちから聞き取りをしたが、お前が嫌がらせを受けていたという証拠は一つもない」
ロザリーは瞳から一筋涙をこぼした。
「そんな……私が嘘をついているというのですか?」
ライカはそんなロザリーに向かって口を開いた。
「私はそんなことしてません。お姉様、どうしてそんなことをおっしゃるのです?」
「……」
ライカはじっと姉を見つめ、それからショーンへと視線を移した。
「私は……私はショーン様を誘惑したこともございません」
繋がれていたヴィクターの手をぎゅっと握り、ライカはしっかりと二人を見て言った。
「私はお二人のことを祝福しておりました。たしかに、ショーン様のことを慕っていたことは間違いありません。ですが私は、自分の恋心よりも、二人の幸せの方が大事でした」
その言葉に、父と母が唇をかみ、そして目を伏せた。
「嘘つき」
そう口を開いたのは、ロザリーだった。
ロザリーは冷ややかな視線をライカへと向けると言った。
「貴方はいつもいい子ちゃんぶってばかり。でも、そんなの嘘よ」
両親が驚いたように目を見開く。
ショーンもぎょっとした表情でロザリーを見つめた。
「いやだいやだ。ナニコレ。結局、私があれだけ頑張ったっていうのに、今、私のことだれも信じてないじゃない」
肩をすくめたロザリーは首を回しながら大きくため息をついた。
その場にはショーンも付き添っているが、ばつが悪そうに顔をうつむかせている。
「ロザリー。聞きたいことがある」
父の言葉に、ロザリーは小首をかしげながらうなずいた。
「お父様。一体どうなさったの? それに、ライカがいる場所に私を呼び出すなんて……」
不安げな表情に両親の心が揺れているのが手に取るようにライカにはわかった。
ライカは姉の真意が分からずに、ただただ現状を見つめるしかない。
「ロザリー正直に言いなさい。お前は……お前はライカに嫌がらせなど、受けていなかったのではないか?」
「え?」
突然のことにロザリーは意味が分からないというように視線を彷徨わせ、そして震えた声で言った。
「ら、ライカがいる前で言うのははばかられますが、私はずっとライカに……嫌がらせを受けていましたわ。きっとライカはショーン様を取られたのが嫌だったのでしょう」
涙をにじませた瞳。それは迫真に迫っているように見え、皆が困惑する。
何が真実なのか。
しかし、ライカが嫌がらせをしたという証拠は一つもない。
先ほどの使用人らの言葉を聞いた以上、父はロザリーの言葉を信じられない。
「証拠はあるか?」
「え? 証拠?」
ロザリーの瞳が戸惑い揺れた。
「……使用人たちから聞き取りをしたが、お前が嫌がらせを受けていたという証拠は一つもない」
ロザリーは瞳から一筋涙をこぼした。
「そんな……私が嘘をついているというのですか?」
ライカはそんなロザリーに向かって口を開いた。
「私はそんなことしてません。お姉様、どうしてそんなことをおっしゃるのです?」
「……」
ライカはじっと姉を見つめ、それからショーンへと視線を移した。
「私は……私はショーン様を誘惑したこともございません」
繋がれていたヴィクターの手をぎゅっと握り、ライカはしっかりと二人を見て言った。
「私はお二人のことを祝福しておりました。たしかに、ショーン様のことを慕っていたことは間違いありません。ですが私は、自分の恋心よりも、二人の幸せの方が大事でした」
その言葉に、父と母が唇をかみ、そして目を伏せた。
「嘘つき」
そう口を開いたのは、ロザリーだった。
ロザリーは冷ややかな視線をライカへと向けると言った。
「貴方はいつもいい子ちゃんぶってばかり。でも、そんなの嘘よ」
両親が驚いたように目を見開く。
ショーンもぎょっとした表情でロザリーを見つめた。
「いやだいやだ。ナニコレ。結局、私があれだけ頑張ったっていうのに、今、私のことだれも信じてないじゃない」
肩をすくめたロザリーは首を回しながら大きくため息をついた。
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