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六話 男爵家

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 遠縁の子爵家からトーランド男爵家に縁談が突然舞い込んだ時、男爵家の皆が何かしらがあったのだろうということを悟った。

 そしてそれはトーランドの長男であるヴィクターへと告げられる。

「どうやら、姉の夫と、不貞を働いたようでな、それで子爵は早急にライカ嬢を嫁がせることにしたようだ。そこで白羽の矢がたったのが我が家というわけだ」

 父であるダン・トーランドの言葉に、ヴィクターは頭を押さえた。

「それは、またすごいな」

「しかも誘ったのがライカ嬢であったようでな、姉のロザリー嬢は妊娠中だというし……はぁ。断ることもできるが、今後事業を広げていくうえで、あまり格上相手に強くも言えない状況だ」

 トーランド家は男爵家とはいえ、この北の辺境の山を開拓し、現在かなりの鉱山を有している。その上、業績は上々でありその辺の上位貴族より裕福な状況にあった。

 そんな彼らに必要なものはやはり上とのつながりであるから、子爵家との婚姻は悪い条件ではない。

 ただ、嫁が淫乱な女性であるというのは、あまり良いとは言えない。

 息子に苦労をさせたいわけがなく、ダンは渋い顔を浮かべる。

 けれど、そんなダンの心配をヴィクターは笑い飛ばした。

「まぁ、実際にご令嬢に会ってみたいと分からないけど、妻とするならば自分を想ってもらえるように努力するよ。それに浮気しようとしても、ここには鉱山で働く者たちばかりで、ご令嬢のお眼鏡にかなうような男はいないしなぁ」

 その言葉にダンは苦笑を浮かべた。

「まぁ、そうかもなぁ。では、この婚姻進めてもいいか? 一応、相手にはこちらに花嫁修業に来てもらう形として、結婚式は来年とするかな」

「了解。それでかまわないよ」

 頼もしい笑顔でそううなずかれ、ダンは婚姻の了承の旨を手紙ですぐに送った。

 それからしばらくして、ライカが馬車に揺られてこの地へとやってくるのだが、ヴィクターはライカに出会った瞬間雷に打たれることとなる。

 家同士のつながりだからと、結婚にも期待していなかったヴィクターだ。

 しかも鉱山の女たちは逞しく、筋肉質な女性が多い。

 ヴィクターの母もまた、とても肉体的にも精神的にも逞しい人であったから、女性とはそういうものであるとヴィクターも思っていた。

「子爵家より参りました。ライカ・ウィズリーと申します。よろしくお願いいたします」

 金糸のようにきらめく美しい髪と、淡い夕焼け色の瞳。その体の線は細いのに、体つきは女性らしく、ヴィクターは顔に一気に熱が集まるのを感じた。

 全身を何かが駆け抜けていく。

 そんな息子の姿を見たトーランド夫妻は、息子にも春が来たかと内心笑いをかみ殺した。

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