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二話 婚約者の発表

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 姉のロザリーの16歳の誕生日、1つ年上のショーンとの婚約が決まった。

 ウィズリー子爵家も、ダイナン子爵家も、両家とも2人の婚約を喜び、ロザリーとショーンは皆に祝福されていた。

 そんな幸せそうなロザリーと、ショーンの前に妹のライカも笑顔で祝福しに向かう。

「お姉様! ショーン様! おめでとうございます!」

 すると、二人は寄り添いながら照れ臭そうに頷いた。

「ありがとうライカ」

「ライカ嬢。本当にありがとう。ライカ嬢のおかげでロザリーと婚約できたよ」

 そう言うと、ロザリーはくすくすと笑い声をあげた。

「たしかに、ロザリーのおかげだわ。私、全然ショーン様の気持ちに気付かなかったもの」

 その言葉に、ショーンは肩をすくめながらうなずく。

「本当にさ、ロザリーは鈍感すぎるよ。ライカに協力してもらって2人きりになろうとするたびに、ライカも一緒にって誘うんだもんなぁ」

「だって! あなたが私と2人きりになりたいだなんてわからなかったんだもの」

「まぁ、そういうところも可愛いんだけどさぁ」

 ショーンの言葉にロザリーは恥ずかしそうに頬を赤く染めた。

「もう。恥ずかしいわ」

 幸せそうな2人を見て、周りも微笑ましげに見守っている。

 ライカも笑顔で、2人に言った。

「2人がやっと婚約してくれてよかったわ! いつまでかかるのかしらって心配してたのよ」

 面目なさそうにロザリーとショーンは眉を下げた。その姿にまたライカは笑う。

「本当におめでとう。それじゃああいさつ回り頑張ってね!」

 ライカはその場を後にして、飲み物を取りに行くと、それをちびちびと飲みながら遠目にショーンの姿をじっと見つめた。

「我ながら、諦めが悪いわね」

 小さく誰にも気づかれないように呟き、それから一人になれる場所へいこうと、中庭へと出た。

 噴水の前のベンチに腰掛け、ちびちびと飲み物を口にしながら、目の前の庭での思い出が過っていく。

『ライカはドジだなぁ』

 そう言って転んだ私を背中に背負って帰ってくれたこと。

『大丈夫さ。ちゃんと謝れば許してくれるよ。ほら、俺も一緒に謝るから』

 女の子なのに木登りをして、ドレスを汚してしまって家に帰れずに隠れていたら、いつも一番に見つけて、一緒に怒られてくれた。

 全然女の子らしいところがない自分。

 それを優しく見守ってくれた。

 けれど、ショーンが選んだのは、女の子らしくて真面目なロザリーだった。

 涙がポタリと流れた。

「私じゃ、ダメなんだよなぁ」

 諦めなきゃダメだと思うのに。

 祝福しなきゃいけないと思うのに。

 どうしても、ずっと笑顔ではいられない。

 ライカは、諦めなきゃと自分に言い聞かせながら、一人で涙を流した。


 

 

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