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十一話 トントン拍子
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アーティスト王国の国王の弟である公爵と自身の父とが大親友だなんてこと想像すらしたこともなかった。
父はルカを保護していたこと(別に保護してたわけではない)の功績と、また今回父は手土産にアーティスト王国側と何か交渉したらしく、なんと侯爵の地位を勝ち取ってきた。
そして、トントン拍子に私はというとルカとの婚約が決められたのであった。
アーティスト王国の貴族らは、行方不明であった第4王子が無事に生きていたことにも驚いたが、その婚約者がすぐに決められたことにも驚いたことだろう。
「エレナ。さぁ、行こう」
今日はルカの婚約者としての初めての舞踏会であり、私は緊張をしていた。
そんな私の手をルカは優しく握り、微笑みを浮かべた。
「大丈夫。俺がいる」
その言葉に、私の胸はとくんとなった。
ルカの婚約者となったのは、私も同意したからである。
ただ、まだルカのことを恋愛的に好きかと聞かれると曖昧になってしまう。
もちろん好きは好きなのだが、今までジョゼフしか見てこなかった私にとっては恋愛の対象を突然ルカへとシフトすることはかなり難しい。
ただ、優しい瞳で見つめられれば遠からず彼を愛することになるだろうなと私は気づいていた。
舞踏会の会場はきらびやかで美しい。
拍手と共に会場に迎えられた私に向けられるのは、何故か生暖かな視線であった。
もっと鋭い視線で睨まれるかと思っていたのだが、父がアーティスト王国の公爵と仲が良いことと、第4王子に溺愛されているという噂が広がっていたことを理由に、私を含む私の家族はアーティスト王国貴族に受け入れられているらしい。
「エレナ肩の力を抜け。ずっと、俺はエレナと一緒にダンスするのが夢だったんだから」
「あら、家でよく踊ってくれたじゃない」
「家で、ならな。でもお前の横は元婚約者殿の席だった。けど、今は違うだろう?」
熱のこもった瞳でそう告げられ、私は頬を赤らめてしまう。
「ええ。そうね。今はルカが婚約者ですもの」
「あぁ」
嬉しそうに歯を見せて笑うルカの姿に、私の胸はまた高鳴る。
「エレナ。楽しもう」
「えぇ」
舞踏会でルカと一緒に踊る日が来るなんて思っても見なかった。
けれど、横を見ればルカがいる。
私はそれが何となく気恥ずかしいけれど、ルカの幸せそうな顔を見れば悪くないと思えた。
「エレナ。愛してる」
「も、もう。恥ずかしいわ」
照れることなく嬉しそうに、幸せそうに囁かれる度、私のジョゼフに植え付けられた処刑台の恐怖は和らぎ、ルカとの幸福な未来に思いを馳せることができた。
父はルカを保護していたこと(別に保護してたわけではない)の功績と、また今回父は手土産にアーティスト王国側と何か交渉したらしく、なんと侯爵の地位を勝ち取ってきた。
そして、トントン拍子に私はというとルカとの婚約が決められたのであった。
アーティスト王国の貴族らは、行方不明であった第4王子が無事に生きていたことにも驚いたが、その婚約者がすぐに決められたことにも驚いたことだろう。
「エレナ。さぁ、行こう」
今日はルカの婚約者としての初めての舞踏会であり、私は緊張をしていた。
そんな私の手をルカは優しく握り、微笑みを浮かべた。
「大丈夫。俺がいる」
その言葉に、私の胸はとくんとなった。
ルカの婚約者となったのは、私も同意したからである。
ただ、まだルカのことを恋愛的に好きかと聞かれると曖昧になってしまう。
もちろん好きは好きなのだが、今までジョゼフしか見てこなかった私にとっては恋愛の対象を突然ルカへとシフトすることはかなり難しい。
ただ、優しい瞳で見つめられれば遠からず彼を愛することになるだろうなと私は気づいていた。
舞踏会の会場はきらびやかで美しい。
拍手と共に会場に迎えられた私に向けられるのは、何故か生暖かな視線であった。
もっと鋭い視線で睨まれるかと思っていたのだが、父がアーティスト王国の公爵と仲が良いことと、第4王子に溺愛されているという噂が広がっていたことを理由に、私を含む私の家族はアーティスト王国貴族に受け入れられているらしい。
「エレナ肩の力を抜け。ずっと、俺はエレナと一緒にダンスするのが夢だったんだから」
「あら、家でよく踊ってくれたじゃない」
「家で、ならな。でもお前の横は元婚約者殿の席だった。けど、今は違うだろう?」
熱のこもった瞳でそう告げられ、私は頬を赤らめてしまう。
「ええ。そうね。今はルカが婚約者ですもの」
「あぁ」
嬉しそうに歯を見せて笑うルカの姿に、私の胸はまた高鳴る。
「エレナ。楽しもう」
「えぇ」
舞踏会でルカと一緒に踊る日が来るなんて思っても見なかった。
けれど、横を見ればルカがいる。
私はそれが何となく気恥ずかしいけれど、ルカの幸せそうな顔を見れば悪くないと思えた。
「エレナ。愛してる」
「も、もう。恥ずかしいわ」
照れることなく嬉しそうに、幸せそうに囁かれる度、私のジョゼフに植え付けられた処刑台の恐怖は和らぎ、ルカとの幸福な未来に思いを馳せることができた。
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