9 / 16
九話 ジョゼフの衝撃
しおりを挟む
全身が痛み出し、ジョゼフは朝起き上がると苦痛に顔を歪めた。
体がきしむようであり、言いようのない痛みにジョゼフは前の時間軸の出来事を思い出す。
呪いが体に戻ってきた時、前もこの痛みを感じたのだ。
ジョゼフは慌てて立ち上がると鏡の前に走り、そして自分の体にまた呪いが広がっているのを見て愕然とした。
「な、何故……前は、こんなに早くなかった……どうして……」
鏡に映る自分を見て愕然としたジョゼフはぺたぺたと自分の顔を触り、そしてはっとしたようにエレナのいつもとは違った様子を思い出す。
「エレナ?……エレナ!?」
がばりと立ち上がったジョゼフは急いで朝の支度を整えると、馬車を用意させてエレナの住む公爵家へと向かわせた。
嫌な予感が胸の中をぐるぐると渦巻くような感覚に、ジョゼフは焦っていた。
「だ、大丈夫だ。エレナがいれば……アイリーンは牢に閉じ込めてある。大丈夫なはずだ……」
実のところ、ジョゼフは前の時間軸で事の発端となったアイリーンを内密に地下牢へと閉じ込めていた。アイリーンさえいなければ自分が呪いで苦しむことも、隣国と争うこともなかったはずだ。
ジョゼフは、自分を愛してなどいなかったアイリーンを恨んでいたのだ。
「急げ! 多少揺れてもかまわない! 急いでくれ!」
馬車を急がせ、ジョゼフは大きく揺れる馬車の中で祈るような気持ちでいた。
何故こんなにも焦燥感にかられるのか。その時、馬車が公爵家の前につき、ジョゼフは扉から飛び出すように出ると、騎士と共に公爵家の門をたたいた。
だが、いつもは門の前にいるはずの門番がいない。
日が昇る前からいつもは作業しているはずの庭師の姿もない。
嫌な予感が心臓を煩く鳴らし、ジョゼフは騎士に命じて門を開けるように伝えると公爵家へと向かった。
「誰か! 誰かいないのか!」
声を荒げるも返答はなく、ジョゼフは騎士に命じて入り口をこじ開け、扉から中に入って愕然とした。
誰も人がいない。
「こ……これは……こ、公爵家の者を探せ! いや、誰でもいい! 使用人でもいいから見つけろ!」
騎士達も困惑しているが、ジョゼフの命令によって屋敷の中を走りまわって人を探す。けれど屋敷の中にはだれもおらず、お手上げ状態である。
「殿下……一度城へと戻り国王陛下へとお伝えするべきでは……?」
騎士の言葉にジョゼフは呆然としながらもうなずく。
「わ、私は城へ一度帰る……二人だけ私についてこい。残りの騎士のうち半分は町を捜索し、使用人でもいいから探せ。後の半分は……アーティスト王国へ向かえ! アーティスト王国にいるかもしれない」
騎士たちはジョゼフの言葉に疑問を抱きながらもうなずき、命じられたとおりに行動を開始する。
ただし、アーティスト王国へ向かえという指示は出されても、国境を超えることは無理であろう。国境を超えるためにはアーティスト王国側の許可が必要になるはずだ。
それが分からないジョゼフではないであろうにと騎士は思いながらも馬を走らせたのであった。
体がきしむようであり、言いようのない痛みにジョゼフは前の時間軸の出来事を思い出す。
呪いが体に戻ってきた時、前もこの痛みを感じたのだ。
ジョゼフは慌てて立ち上がると鏡の前に走り、そして自分の体にまた呪いが広がっているのを見て愕然とした。
「な、何故……前は、こんなに早くなかった……どうして……」
鏡に映る自分を見て愕然としたジョゼフはぺたぺたと自分の顔を触り、そしてはっとしたようにエレナのいつもとは違った様子を思い出す。
「エレナ?……エレナ!?」
がばりと立ち上がったジョゼフは急いで朝の支度を整えると、馬車を用意させてエレナの住む公爵家へと向かわせた。
嫌な予感が胸の中をぐるぐると渦巻くような感覚に、ジョゼフは焦っていた。
「だ、大丈夫だ。エレナがいれば……アイリーンは牢に閉じ込めてある。大丈夫なはずだ……」
実のところ、ジョゼフは前の時間軸で事の発端となったアイリーンを内密に地下牢へと閉じ込めていた。アイリーンさえいなければ自分が呪いで苦しむことも、隣国と争うこともなかったはずだ。
ジョゼフは、自分を愛してなどいなかったアイリーンを恨んでいたのだ。
「急げ! 多少揺れてもかまわない! 急いでくれ!」
馬車を急がせ、ジョゼフは大きく揺れる馬車の中で祈るような気持ちでいた。
何故こんなにも焦燥感にかられるのか。その時、馬車が公爵家の前につき、ジョゼフは扉から飛び出すように出ると、騎士と共に公爵家の門をたたいた。
だが、いつもは門の前にいるはずの門番がいない。
日が昇る前からいつもは作業しているはずの庭師の姿もない。
嫌な予感が心臓を煩く鳴らし、ジョゼフは騎士に命じて門を開けるように伝えると公爵家へと向かった。
「誰か! 誰かいないのか!」
声を荒げるも返答はなく、ジョゼフは騎士に命じて入り口をこじ開け、扉から中に入って愕然とした。
誰も人がいない。
「こ……これは……こ、公爵家の者を探せ! いや、誰でもいい! 使用人でもいいから見つけろ!」
騎士達も困惑しているが、ジョゼフの命令によって屋敷の中を走りまわって人を探す。けれど屋敷の中にはだれもおらず、お手上げ状態である。
「殿下……一度城へと戻り国王陛下へとお伝えするべきでは……?」
騎士の言葉にジョゼフは呆然としながらもうなずく。
「わ、私は城へ一度帰る……二人だけ私についてこい。残りの騎士のうち半分は町を捜索し、使用人でもいいから探せ。後の半分は……アーティスト王国へ向かえ! アーティスト王国にいるかもしれない」
騎士たちはジョゼフの言葉に疑問を抱きながらもうなずき、命じられたとおりに行動を開始する。
ただし、アーティスト王国へ向かえという指示は出されても、国境を超えることは無理であろう。国境を超えるためにはアーティスト王国側の許可が必要になるはずだ。
それが分からないジョゼフではないであろうにと騎士は思いながらも馬を走らせたのであった。
126
お気に入りに追加
3,100
あなたにおすすめの小説
今まで尽してきた私に、妾になれと言うんですか…?
水垣するめ
恋愛
主人公伯爵家のメアリー・キングスレーは公爵家長男のロビン・ウィンターと婚約していた。
メアリーは幼い頃から公爵のロビンと釣り合うように厳しい教育を受けていた。
そして学園に通い始めてからもロビンのために、生徒会の仕事を請け負い、尽していた。
しかしある日突然、ロビンは平民の女性を連れてきて「彼女を正妻にする!」と宣言した。
そしえメアリーには「お前は妾にする」と言ってきて…。
メアリーはロビンに失望し、婚約破棄をする。
婚約破棄は面子に関わるとロビンは引き留めようとしたが、メアリーは婚約破棄を押し通す。
そしてその後、ロビンのメアリーに対する仕打ちを知った王子や、周囲の貴族はロビンを責め始める…。
※小説家になろうでも掲載しています。
【完結】裏切ったあなたを許さない
紫崎 藍華
恋愛
ジョナスはスザンナの婚約者だ。
そのジョナスがスザンナの妹のセレナとの婚約を望んでいると親から告げられた。
それは決定事項であるため婚約は解消され、それだけなく二人の邪魔になるからと領地から追放すると告げられた。
そこにセレナの意向が働いていることは間違いなく、スザンナはセレナに人生を翻弄されるのだった。
【完結】旦那様、お飾りですか?
紫崎 藍華
恋愛
結婚し新たな生活に期待を抱いていた妻のコリーナに夫のレックスは告げた。
社交の場では立派な妻であるように、と。
そして家庭では大切にするつもりはないことも。
幸せな家庭を夢見ていたコリーナの希望は打ち砕かれた。
そしてお飾りの妻として立派に振る舞う生活が始まった。
理想の『女の子』を演じ尽くしましたが、不倫した子は育てられないのでさようなら
赤羽夕夜
恋愛
親友と不倫した挙句に、黙って不倫相手の子供を生ませて育てさせようとした夫、サイレーンにほとほとあきれ果てたリリエル。
問い詰めるも、開き直り復縁を迫り、同情を誘おうとした夫には千年の恋も冷めてしまった。ショックを通りこして吹っ切れたリリエルはサイレーンと親友のユエルを追い出した。
もう男には懲り懲りだと夫に黙っていたホテル事業に没頭し、好きな物を我慢しない生活を送ろうと決めた。しかし、その矢先に距離を取っていた学生時代の友人たちが急にアピールし始めて……?
父の大事な家族は、再婚相手と異母妹のみで、私は元より家族ではなかったようです
珠宮さくら
恋愛
フィロマという国で、母の病を治そうとした1人の少女がいた。母のみならず、その病に苦しむ者は、年々増えていたが、治せる薬はなく、進行を遅らせる薬しかなかった。
その病を色んな本を読んで調べあげた彼女の名前は、ヴァリャ・チャンダ。だが、それで病に効く特効薬が出来上がることになったが、母を救うことは叶わなかった。
そんな彼女が、楽しみにしていたのは隣国のラジェスへの留学だったのだが、そのために必死に貯めていた資金も父に取り上げられ、義母と異母妹の散財のために金を稼げとまで言われてしまう。
そこにヴァリャにとって救世主のように現れた令嬢がいたことで、彼女の人生は一変していくのだが、彼女らしさが消えることはなかった。
虐げられた令嬢は、耐える必要がなくなりました
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私アニカは、妹と違い婚約者がいなかった。
妹レモノは侯爵令息との婚約が決まり、私を見下すようになる。
その後……私はレモノの嘘によって、家族から虐げられていた。
家族の命令で外に出ることとなり、私は公爵令息のジェイドと偶然出会う。
ジェイドは私を心配して、守るから耐える必要はないと言ってくれる。
耐える必要がなくなった私は、家族に反撃します。
真実の愛がどうなろうと関係ありません。
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。
婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。
「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」
サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。
それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。
サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。
一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。
若きバラクロフ侯爵レジナルド。
「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」
フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。
「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」
互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。
その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは……
(予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる