8 / 16
八話 動揺
しおりを挟む
見る見るうちにルカの顔が真っ赤に染まっていくのをエレナはじっと見つめていた。
今まで見たことのないルカの表情の変化に、エレナは視線を泳がせたのちに小首をかしげ、そしてもう一度まじまじとルカを見た。
「やめろ。そんな目で見るな」
「え? だって」
ルカはエレナの頭をわしわしと撫でまわすと大きく息をついてから立ち上がり、そして言った。
「とにかく、今回は絶対に俺がお前を守るから。心配するな。手筈が整い次第この国を出るぞ」
「え? えぇーっと……」
驚きすぎて涙が止まったエレナに、ルカはふっと笑うと言った。
「別に、今すぐに返事はしなくていい。お前にとって俺が兄のような存在だってことは理解している」
「あ、え、えっと」
「涙が止まったならいい。じゃあ俺は今後のことについて話をつけてくるから、お前は寝ていろ」
ルカはそういうとひらひらと手を振って部屋から出て行ってしまった。
呆然とルカの出ていった扉を見つめていたエレナは、ベッドのへとそのまま後ろに倒れ、そして天井を見つめると近くにあった枕をぎゅっと抱きしめた。
「え? え? え?」
先ほどのルカの言葉が頭の中をぐるぐると回るのをエレナは感じ、枕に顔を埋めると悶絶した。
あのルカが自分のことを好き? あの、ルカが?
突然のこと過ぎてエレナは理解が出来ないでいた。
その頃、ルカはというと自室に一度戻ると大きく息を吐いてうずくまっていた。
言ってしまった。やってしまった。
傷心のエレナに付け入るなんて真似は卑怯だとはわかっていても、それでももう自分を抑えられなかった。
好きだ。諦めようと何度も思ったが、無理だ。もう、我慢できない。
たとえ卑怯だと言われようと、エレナをもう他の誰にもやるつもりなどない。
けれどそのためにはやらなければならないことが山積みである。それに、ルカとしてはエレナを傷つけた者をそのまま放置する気もなかった。
「エレナを傷つけておいて、ただで済むと思うな」
実のところ、ルカは自身の出自については覚えていた。ただ、国に戻ったところで自分の居場所などないと考えていたから、この国でエレナの傍にいたのだ。
だから誰にも言ったことがなかった。
けれどおそらくエレナが体験したという前の時間で、自分はその権力を手にする必要があると判断してエレナの傍を離れたのだろう。
急がなくてはならない。
「遠慮など、もうしない」
ルカはそう呟くと立ち上がり、気を引き締めて自室を出た。
今まで見たことのないルカの表情の変化に、エレナは視線を泳がせたのちに小首をかしげ、そしてもう一度まじまじとルカを見た。
「やめろ。そんな目で見るな」
「え? だって」
ルカはエレナの頭をわしわしと撫でまわすと大きく息をついてから立ち上がり、そして言った。
「とにかく、今回は絶対に俺がお前を守るから。心配するな。手筈が整い次第この国を出るぞ」
「え? えぇーっと……」
驚きすぎて涙が止まったエレナに、ルカはふっと笑うと言った。
「別に、今すぐに返事はしなくていい。お前にとって俺が兄のような存在だってことは理解している」
「あ、え、えっと」
「涙が止まったならいい。じゃあ俺は今後のことについて話をつけてくるから、お前は寝ていろ」
ルカはそういうとひらひらと手を振って部屋から出て行ってしまった。
呆然とルカの出ていった扉を見つめていたエレナは、ベッドのへとそのまま後ろに倒れ、そして天井を見つめると近くにあった枕をぎゅっと抱きしめた。
「え? え? え?」
先ほどのルカの言葉が頭の中をぐるぐると回るのをエレナは感じ、枕に顔を埋めると悶絶した。
あのルカが自分のことを好き? あの、ルカが?
突然のこと過ぎてエレナは理解が出来ないでいた。
その頃、ルカはというと自室に一度戻ると大きく息を吐いてうずくまっていた。
言ってしまった。やってしまった。
傷心のエレナに付け入るなんて真似は卑怯だとはわかっていても、それでももう自分を抑えられなかった。
好きだ。諦めようと何度も思ったが、無理だ。もう、我慢できない。
たとえ卑怯だと言われようと、エレナをもう他の誰にもやるつもりなどない。
けれどそのためにはやらなければならないことが山積みである。それに、ルカとしてはエレナを傷つけた者をそのまま放置する気もなかった。
「エレナを傷つけておいて、ただで済むと思うな」
実のところ、ルカは自身の出自については覚えていた。ただ、国に戻ったところで自分の居場所などないと考えていたから、この国でエレナの傍にいたのだ。
だから誰にも言ったことがなかった。
けれどおそらくエレナが体験したという前の時間で、自分はその権力を手にする必要があると判断してエレナの傍を離れたのだろう。
急がなくてはならない。
「遠慮など、もうしない」
ルカはそう呟くと立ち上がり、気を引き締めて自室を出た。
133
お気に入りに追加
3,138
あなたにおすすめの小説

【完結】恨んではいませんけど、助ける義理もありませんので
白草まる
恋愛
ユーディトはヒュベルトゥスに負い目があるため、最低限の扱いを受けようとも文句が言えない。
婚約しているのに満たされない関係であり、幸せな未来が待っているとは思えない関係。
我慢を続けたユーディトだが、ある日、ヒュベルトゥスが他の女性と親密そうな場面に出くわしてしまい、しかもその場でヒュベルトゥスから婚約破棄されてしまう。
詳しい事情を知らない人たちにとってはユーディトの親に非がある婚約破棄のため、悪者扱いされるのはユーディトのほうだった。

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。

【完結】元婚約者が偉そうに復縁を望んできましたけど、私の婚約者はもう決まっていますよ?
白草まる
恋愛
自分よりも成績が優秀だからという理由で侯爵令息アッバスから婚約破棄を告げられた伯爵令嬢カティ。
元から関係が良くなく、欲に目がくらんだ父親によって結ばれた婚約だったためカティは反対するはずもなかった。
学園での静かな日々を取り戻したカティは自分と同じように真面目な公爵令息ヘルムートと一緒に勉強するようになる。
そのような二人の関係を邪魔するようにアッバスが余計なことを言い出した。

婚約者に選んでしまってごめんなさい。おかげさまで百年の恋も冷めましたので、お別れしましょう。
ふまさ
恋愛
「いや、それはいいのです。貴族の結婚に、愛など必要ないですから。問題は、僕が、エリカに対してなんの魅力も感じられないことなんです」
はじめて語られる婚約者の本音に、エリカの中にあるなにかが、音をたてて崩れていく。
「……僕は、エリカとの将来のために、正直に、自分の気持ちを晒しただけです……僕だって、エリカのことを愛したい。その気持ちはあるんです。でも、エリカは僕に甘えてばかりで……女性としての魅力が、なにもなくて」
──ああ。そんな風に思われていたのか。
エリカは胸中で、そっと呟いた。

【完結】裏切ったあなたを許さない
紫崎 藍華
恋愛
ジョナスはスザンナの婚約者だ。
そのジョナスがスザンナの妹のセレナとの婚約を望んでいると親から告げられた。
それは決定事項であるため婚約は解消され、それだけなく二人の邪魔になるからと領地から追放すると告げられた。
そこにセレナの意向が働いていることは間違いなく、スザンナはセレナに人生を翻弄されるのだった。

【完結】このまま婚約破棄してもいいのですよ?
横居花琉
恋愛
有力者の勧めもあり、ウォードと婚約することになったコンスタンス。
しかし婚約しても彼の態度は冷たく、まるで婚約を望んでいなかったかのようだった。
関係改善のために努力しても無駄に終わり、困ったコンスタンスは有力者に相談を持ち掛ける。
その結果、婚約破棄しても構わないと言われた。
どうにもならない関係で未来への希望を失っていたコンスタンスは、再び希望を抱いた。

【完結】他人に優しい婚約者ですが、私だけ例外のようです
白草まる
恋愛
婚約者を放置してでも他人に優しく振る舞うダニーロ。
それを不満に思いつつも簡単には婚約関係を解消できず諦めかけていたマルレーネ。
二人が参加したパーティーで見知らぬ令嬢がマルレーネへと声をかけてきた。
「単刀直入に言います。ダニーロ様と別れてください」

私を売女と呼んだあなたの元に戻るはずありませんよね?
ミィタソ
恋愛
アインナーズ伯爵家のレイナは、幼い頃からリリアナ・バイスター伯爵令嬢に陰湿ないじめを受けていた。
レイナには、親同士が決めた婚約者――アインス・ガルタード侯爵家がいる。
アインスは、その艶やかな黒髪と怪しい色気を放つ紫色の瞳から、令嬢の間では惑わしのアインス様と呼ばれるほど人気があった。
ある日、パーティに参加したレイナが一人になると、子爵家や男爵家の令嬢を引き連れたリリアナが現れ、レイナを貶めるような酷い言葉をいくつも投げかける。
そして、事故に見せかけるようにドレスの裾を踏みつけられたレイナは、転んでしまう。
上まで避けたスカートからは、美しい肌が見える。
「売女め、婚約は破棄させてもらう!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる