3 / 16
三話 ルカ
しおりを挟む
エレナは泣きながらルカにこれまでの話をすると、ルカは黙ってその話を聞いていた。そして、話し終えたエレナが泣きつかれて寝てしまったのを確認すると、馬車に公爵家に戻るように伝えた。
元々この馬車はルカの知り合いの物であり、エレナが落ち着くまで町の中をぐるぐると走らせていたのである。
エレナの気持ちはわかるが、突然公爵令嬢を他国へなど連れていけるわけもなく、ましてやエレナは王子の婚約者である。
下手をすれば自分の首が飛んで終わるだろうとルカは思った。
泣きつかれていてもエレナは美しい。先ほどまでカエルのような声で鳴きながらえぐえぐ言ってる姿すら可愛く見えるのだから自分は重傷だとルカは両手で顔を抑えながら大きくため息をついた。
ただ先ほどエレナから聞いた話にはルカも驚いていた。
「……時が戻ったか……信じがたいが、エレナが嘘をつくとも、思えない……」
これまでエレナはルカに対して一度たりとも嘘をついたことがない。
社交界では様々な称賛を受けるエレナではあるが、ルカの前だと精神年齢がかなり下がる。
それが可愛くも思える一方で、男として見られていないことにがっくりとしてしまう自分がいた。
これまでは、エレナの恋を応援してもいた。
一途に王子のことを想うエレナは可愛らしかった。けれど、今日のエレナは違った。
『もう冷めだぁぁぁぁ。首切られて、好きだなんて、思えないぃぃぃぃ』
「冷めた……のか」
自分の口から洩れた言葉と、一瞬にやけてしまった口元に、ルカは自分の頬を手でたたくと気を引き締めた。
エレナが辛い思いをしたというのに、それをよく思うなんてだめだと自分を律する。それと同時にルカは頭の中で先ほどの話を整理するとともに、今後どういう対応をしていくべきか思案する。
「もう、やだぁぁ」
小さく寝言で呻くエレナの髪をやさしくなで、ルカは頬を伝って落ちるエレナの涙を指で拭った。
何があったにしろ、エレナを守るのは自分の役目である。それを前の時間軸で自分が出来なかったというのであれば、今回は絶対にエレナを守らなければならない。
「大丈夫。俺が絶対に守る」
エレナに好かれなくてもいい。
自分が運命の相手でなくてもいい。
それでも、幸せに笑っていてほしい。
だからこそ、ルカは自分にできる限りの手を使ってエレナを守ってみせるとそう誓うのであった。
元々この馬車はルカの知り合いの物であり、エレナが落ち着くまで町の中をぐるぐると走らせていたのである。
エレナの気持ちはわかるが、突然公爵令嬢を他国へなど連れていけるわけもなく、ましてやエレナは王子の婚約者である。
下手をすれば自分の首が飛んで終わるだろうとルカは思った。
泣きつかれていてもエレナは美しい。先ほどまでカエルのような声で鳴きながらえぐえぐ言ってる姿すら可愛く見えるのだから自分は重傷だとルカは両手で顔を抑えながら大きくため息をついた。
ただ先ほどエレナから聞いた話にはルカも驚いていた。
「……時が戻ったか……信じがたいが、エレナが嘘をつくとも、思えない……」
これまでエレナはルカに対して一度たりとも嘘をついたことがない。
社交界では様々な称賛を受けるエレナではあるが、ルカの前だと精神年齢がかなり下がる。
それが可愛くも思える一方で、男として見られていないことにがっくりとしてしまう自分がいた。
これまでは、エレナの恋を応援してもいた。
一途に王子のことを想うエレナは可愛らしかった。けれど、今日のエレナは違った。
『もう冷めだぁぁぁぁ。首切られて、好きだなんて、思えないぃぃぃぃ』
「冷めた……のか」
自分の口から洩れた言葉と、一瞬にやけてしまった口元に、ルカは自分の頬を手でたたくと気を引き締めた。
エレナが辛い思いをしたというのに、それをよく思うなんてだめだと自分を律する。それと同時にルカは頭の中で先ほどの話を整理するとともに、今後どういう対応をしていくべきか思案する。
「もう、やだぁぁ」
小さく寝言で呻くエレナの髪をやさしくなで、ルカは頬を伝って落ちるエレナの涙を指で拭った。
何があったにしろ、エレナを守るのは自分の役目である。それを前の時間軸で自分が出来なかったというのであれば、今回は絶対にエレナを守らなければならない。
「大丈夫。俺が絶対に守る」
エレナに好かれなくてもいい。
自分が運命の相手でなくてもいい。
それでも、幸せに笑っていてほしい。
だからこそ、ルカは自分にできる限りの手を使ってエレナを守ってみせるとそう誓うのであった。
125
お気に入りに追加
3,100
あなたにおすすめの小説
今まで尽してきた私に、妾になれと言うんですか…?
水垣するめ
恋愛
主人公伯爵家のメアリー・キングスレーは公爵家長男のロビン・ウィンターと婚約していた。
メアリーは幼い頃から公爵のロビンと釣り合うように厳しい教育を受けていた。
そして学園に通い始めてからもロビンのために、生徒会の仕事を請け負い、尽していた。
しかしある日突然、ロビンは平民の女性を連れてきて「彼女を正妻にする!」と宣言した。
そしえメアリーには「お前は妾にする」と言ってきて…。
メアリーはロビンに失望し、婚約破棄をする。
婚約破棄は面子に関わるとロビンは引き留めようとしたが、メアリーは婚約破棄を押し通す。
そしてその後、ロビンのメアリーに対する仕打ちを知った王子や、周囲の貴族はロビンを責め始める…。
※小説家になろうでも掲載しています。
【完結】旦那様、お飾りですか?
紫崎 藍華
恋愛
結婚し新たな生活に期待を抱いていた妻のコリーナに夫のレックスは告げた。
社交の場では立派な妻であるように、と。
そして家庭では大切にするつもりはないことも。
幸せな家庭を夢見ていたコリーナの希望は打ち砕かれた。
そしてお飾りの妻として立派に振る舞う生活が始まった。
【完結】裏切ったあなたを許さない
紫崎 藍華
恋愛
ジョナスはスザンナの婚約者だ。
そのジョナスがスザンナの妹のセレナとの婚約を望んでいると親から告げられた。
それは決定事項であるため婚約は解消され、それだけなく二人の邪魔になるからと領地から追放すると告げられた。
そこにセレナの意向が働いていることは間違いなく、スザンナはセレナに人生を翻弄されるのだった。
理想の『女の子』を演じ尽くしましたが、不倫した子は育てられないのでさようなら
赤羽夕夜
恋愛
親友と不倫した挙句に、黙って不倫相手の子供を生ませて育てさせようとした夫、サイレーンにほとほとあきれ果てたリリエル。
問い詰めるも、開き直り復縁を迫り、同情を誘おうとした夫には千年の恋も冷めてしまった。ショックを通りこして吹っ切れたリリエルはサイレーンと親友のユエルを追い出した。
もう男には懲り懲りだと夫に黙っていたホテル事業に没頭し、好きな物を我慢しない生活を送ろうと決めた。しかし、その矢先に距離を取っていた学生時代の友人たちが急にアピールし始めて……?
あなたに未練などありません
風見ゆうみ
恋愛
「本当は前から知っていたんだ。君がキャロをいじめていた事」
初恋であり、ずっと思いを寄せていた婚約者からありえない事を言われ、侯爵令嬢であるわたし、アニエス・ロロアルの頭の中は真っ白になった。
わたしの婚約者はクォント国の第2王子ヘイスト殿下、幼馴染で親友のキャロラインは他の友人達と結託して嘘をつき、私から婚約者を奪おうと考えたようだった。
数日後の王家主催のパーティーでヘイスト殿下に婚約破棄されると知った父は激怒し、元々、わたしを憎んでいた事もあり、婚約破棄後はわたしとの縁を切り、わたしを家から追い出すと告げ、それを承認する書面にサインまでさせられてしまう。
そして、予告通り出席したパーティーで婚約破棄を告げられ絶望していたわたしに、その場で求婚してきたのは、ヘイスト殿下の兄であり病弱だという事で有名なジェレミー王太子殿下だった…。
※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。
※中世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物などは現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。
出て行けと言って、本当に私が出ていくなんて思ってもいなかった??
新野乃花(大舟)
恋愛
ガランとセシリアは婚約関係にあったものの、ガランはセシリアに対して最初から冷遇的な態度をとり続けていた。ある日の事、ガランは自身の機嫌を損ねたからか、セシリアに対していなくなっても困らないといった言葉を発する。…それをきっかけにしてセシリアはガランの前から失踪してしまうこととなるのだが、ガランはその事をあまり気にしてはいなかった。しかし後に貴族会はセシリアの味方をすると表明、じわじわとガランの立場は苦しいものとなっていくこととなり…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる