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十三話 告白

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「ミリー嬢!」

 後ろからトーマス様に抱きしめられて止められ、私の心臓が煩くなります。

 だめです。そんなに優しくしないでほしい。そう思いながらも、抱きしめられた温かさに、縋りつきたくなる。私は矛盾した気持ちに、苦しくなります。

「離してくださいませ。大丈夫です。すみません……大丈夫ですから」

「大丈夫じゃないだろう。そんなに泣いて。その……その涙の理由は私だと、うぬぼれてもいいのだろうか?」

「え?」

 トーマス様は抱きしめている腕に力を入れると、息を小さく吐き、私に問いかけます。

「私は、アナスタシア殿下とは婚約しない」

「え?……そう、なのですか? ですが」

「そういう話題が出なかったと言えばうそになる。だが、アナスタシア殿下は他国へ嫁ぎたいとおっしゃったし、私は……私は」

 そこで言葉が途切れると、トーマス様が私を抱きしめていた腕を緩め、私と向き合うようにして立つと真剣なまなざしでこちらを見つめてきます。

「実のところ、私は……結構前から、君のことが……好きだ」

「え?」

「自覚したのは最近なんだ。けれど、ずっと舞踏会などで君のことを見かけるたびに視線で追っていた自分がいて、その、君と一緒に話をするようになってから、その、自覚をした。私は……君が好きだ」

 突然の告白に、私の頭の中はパニックです。そんなわけがありません。私には他人より秀でているところはありませんし、そこまで美しい美貌をもっているわけでもありません。

「う、嘘です」

 思わずそういうと、トーマス様は眉間にしわを寄せて言った。

「嘘なんてつくわけないだろう? 私は、舞踏会の中でこっそり菓子やケーキを美味しそうに食べる君も、意外とはっきりと自分の意見を言う君も……私に笑顔を向けてくれる君も、好きなんだ」

 私の心臓はうるさいくらいに音を立てます。

 期待してもいいのでしょうか。

 好きだと伝えてもいいのでしょうか。

 私は、勇気を振り絞って言いました。

「……私も……私もトーマス様が、好きです」

 小さな声になってしまいました。

 ちゃんと、トーマス様に聞こえたか不安になりゆっくりと視線をトーマス様へ向けました。

「トーマス様?」

 耳まで真っ赤になったトーマス様は、慌てて両手で顔を覆うと、大きく深呼吸をされています。

「あの……」

「すまない。すごく、すごく嬉しい」

 私はその言葉に、胸が満たされていきます。

 トーマス様は、大きく息を吐いてから、私のことをぎゅっと抱きしめてくれました。

「うん。ありがとう。私も好きだ。はぁぁっ。よかった。本当にうれしい」

「わ、私も、嬉しいです」

 もう心臓が、破裂するのではないかと思うほどでしたが、トーマス様の心臓も私と同じくらい早くて、なんだかとても嬉しい気持ちになりました。

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