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四話 え? 宿題ですか?

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 婚約破棄騒動から二日が経ち、私は休日明けに学園に行く足取りがこれまでで一番軽かった。

 舞踏会の後二日は学園が休みだったことで、休日の間に正式に婚約破棄は受理された。私の両親は、これから私をどうするかで頭を悩ませているようであった。

 私としては、エレン様以外であれば、誰かの後妻でも構わないし、おじいちゃんに嫁ぐのも問題ない。

 まぁ、加虐趣味がある殿方は遠慮したいところだが、私の両親も親である。それくらいは配慮してくれるであろうと信じたい。

 学園に着いた私は、いつもはエレン様の為にノートを取らないといけないので一番前に座っていたが、今日は真ん中あたりに座り、のほほんと教師が来るまでの間本を開いた。

 こんなにのんびりと授業前に過ごせるなんて初めてのことである。

 その時であった。教室がしんと静まり返ると、私の前の前にエレン様が来て睨みつけてくると言った。

「俺の宿題は?」

「え?」

 私は、静かに、ゆっくりと小首をかしげた。

 するとエレン様は眉間にしわを寄せて、私の頭を手の平で軽く二、三度小突きながらいらだった口調で言った。

「俺の宿題は? って聞いてんだろう? 俺様がわざわざ取りに出向いてやったんだぞ? なんで届けに来ないんだよ?」

 そう。通常であればエレン様の所へと毎朝宿題や荷物を届けに行って、それから自分の教室へと来ていたのだ。

 けれどそれは婚約者であったからやっていたことである、

 私が口を開こうとした時、私を小突いていた手を、誰かが止めた。

「え?」

 誰だろうかと顔をあげると、そこにはトーマス様の姿があり、トーマス様はエレン様の腕をぎりぎりと掴み、苛立たしそうに眉間にしわを寄せていた。

「なっ。いてっ……一体何を!?」

 エレン様が何故トーマス様がここにいるのか、そして何故自分の腕を掴まれているのか分からない様子で声を絞り出すと、トーマス様はエレン様の腕を払うと言った。

「君は、令嬢に何をしている」

「は? いや、こいつは」

「こいつ? 失礼だが君と彼女は婚約破棄が成立したはずだ。エレン殿。婚約者でもない令嬢の頭を触るのは失礼に値する。また、令嬢に対して何故そのように雑な扱いが出来る? 君はどう教育を受けているんだ?」

 低い声に威圧され、エレン様がしり込みしているのが分かりました。

 トーマス様に助けていただいている状況と、いつもは偉そうなエレン様が子犬のようにぷるぷるとしている姿が滑稽で、私は胸がすく思いでした。


 
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