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一話 家族の為

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「本当にお前はぐずだな」

 婚約者のエレン・オーディン様にそう言われ、私ミリー・ウェイバーはうつむいてしまいます。

 エレン様のお家は侯爵家、私の家は伯爵家であり、この婚約は幼い頃に決められたものでした。

 幼い頃から素行の悪かったエレン様は、従妹である私のことを昔から奴隷のようにこき使ってきました。

 私の家は、私が幼い頃に領地が災害によってひっ迫し、それを援助してくださったのがエレン様のご両親だったのです。ただ、エレン様のご両親も私のことをうまく使える駒くらいにしか思っていないのでしょう。

 何かあるごとに私はこき使われる毎日です。

 本当に嫌になるくらいに、私は奴隷生活を満喫中です。

 現在、王城の舞踏会に向かっているというのに、馬車の中でぐちぐちとエレン様はずっと私のことを蔑んでいます。

 幼い頃からずっと言われ続けていれば、エレン様のことを嫌いになるのは必然的であり、私はエレン様が大嫌いです。

 こんな人と結婚かと思うと、げんなりしてしまいます。

「はぁぁ。まぁいい。それも今日までだ」

 その言葉に疑問を抱きながらも王城の舞踏会の会場へと足を踏み入れると、少し違和感を感じます。

 なんだろうかと思っていると、第二王子の側近たちが集まってひそひそと話をしており、それを遠巻きにその婚約者のご令嬢達が見つめているのです。

 これは何かあるなと思っていると、エレン様は私に言いました。

「俺はあちらで話してくる。お前は適当にしていろ。ただし会場からは出るなよ」

 わざわざ会場から出るなという指示。

 いったい何が行われるのだろうかと思っていると、なんと第二王子殿下が学園で懇意にしている女子生徒と共に舞踏会に現れたのです。

 私は、ぞっとしました。

 ちらりと視線を走らせ、第二王子の婚約者である公爵令嬢のアナスタシア様を探します。

 燃えるように真っ赤な髪のアナスタシア様の表情は、笑顔を携えながらも目は笑っていません。

 エレン様は第二王子殿下の側近の一人です。

 私はこれからのことを想像して背筋が寒くなっていきました。

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