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七話 告白
しおりを挟むルイスはあくまでもエラの気持ちを大事にしていこうと思ったようで、休日があればエラを誘い一緒に出掛けることが増えた。
エラ自身もまた、ルイスに誘われることを楽しみに思い、出かけるたびに自分を幸せにしてくれるルイスにひかれていった。
二人が出会って二か月が経った頃、ルイスはエラと一緒に王立の公園を散歩しながら意を決したように口を開いた。
「エラ嬢」
「はい。ルイス様。どうかされましたか?」
ルイスはエラの手を取ると、じっとその瞳を見つめて言った。
「そろそろ、ご両親に正式に今後交際をしていきたいというご挨拶をしたいのだが、どうだろう」
真っすぐなその瞳に、エラは心臓がどきどきとするのを感じながら、小さくうなずいた。
「はい……でも、私でよろしいのですか?」
「エラ嬢がいい。君も俺でいいだろうか?」
「え? えぇ。もちろん……です」
二人は顔を赤らめあい、ルイスはほっとしたように息をつくとエラと手をつないでまた公園の道を歩き始める。
「それで、その、交際の話を出せば婚約の話も出ると思うのだが……その、いいだろうか?」
「え?」
エラはルイスが婚約破棄の一件を気にしていたのだと思い、ふっと笑みをこぼすとうなずいた。
「えぇ、もちろんです。ルイス様であれば」
「そうか!」
ルイスは嬉しそうに笑うと、エラを抱き上げてくるりと回してからぎゅっと抱きしめた。
突然のことにエラは驚いたが、ルイスがあまりに嬉しそうにするものだから、エラもつられて笑った。
「まぁ! 突然びっくりしますわ」
「すまん。あまりにも君が可愛いから!」
「まぁ。ふふ。私は可愛くなんて」
「ある。君は可愛い。言っておくがな、君の元婚約者は目が腐っている。いや、目がおかしい。いや、目が……とにかく君が可愛く見えないなんて、バカな男だ。君も、俺以外の男の言葉など忘れてしまえ」
はっきりと告げられ、エラはくすくすと笑う。
この二か月間、ルイスは何度も何度もエラに可愛いと言い続けている。
元婚約者のジャンの言葉がエラの脳裏をよぎることに敏感なようで、そうした時には真っすぐにエラの瞳を見て可愛いを連呼するものだから、エラも今ではつい笑ってしまう。
「君は笑うがな、本当のことなんだ。エラ嬢。君は可愛い」
嘘のない真っすぐな瞳に、エラは癒される。
自分自身を可愛いと思ったことも、自分自身に自信があるわけでもない。
けれどルイスの言葉は、ジャンにずっと言われてきた言葉を打ち消してくれる。
ルイスの優しさにエラは惹かれ、この人とならば幸せになれると感じていた。
「ルイス様。私、ルイス様が大好きです」
自然とエラはそう口にしていた。
けれど、口に出してからこれは告白ではないかとはっと気づき、自分自身で言っておきながら驚いてしまう。
ルイスは見る見るうちに顔を真っ赤に赤らめると、エラを抱きしめた。
「俺も君が好きだ。あぁ。こんなに人を可愛いと思ったのは初めてで、どうしたらいいのか分からない」
「ルイス様……」
お互いの心臓の音が聞こえる距離。
エラは幸せだなとつい二か月前まではこんな幸せが来るなど思ってもいなかったなと考える。
ルイスはその日のうちにエラの実家へと今度正式に話をする場を設けていただきたいとのことを告げると、すぐさま両親は駆け付け、今すぐにでも話をしようとルイスの足を客室へと勧める。
エラは両親を止めようとしたが、ルイスは苦笑を浮かべながらそれを受け入れ、二人はその日のうちに両親公認の仲になる。
元々、出かけるたびに許可を取るたびに公認されていたので今更ではあるが。
その後正式な婚約については両家がそろってとの話しとなり、エラの両親はルイスが帰った後、屋敷の使用人もみんなでの大宴会を開いた。
「国の英雄との結婚など! 本当にめでたい!」
「婚約破棄なんてバカなことを言ってくれた元婚約者の方に感謝ですわね!」
大喜びするみんなの姿に、エラは恥ずかしいやら嬉しいやらで複雑な笑みを浮かべたのであった。
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