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第二十五話 引っ付き虫

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 シンはキャロルと再開したその時から、キャロルの側から離れなくなり、仕事に行く時もキャロルを抱き抱えて移動するようになった。

 さすがに寝室は別にしてくれとキャロルは顔を真っ赤にしながら懇願したのたが、しゅんとした顔でシンにじっと見つめられ続け、最後には折れた。

「まって!シン、近い。近いわ。」

「何故だ?側で寝た方がキャロルを感じられる。」

「恥ずかしいの!」

「時期に慣れる。」

「嘘よ!」

 手は出されないものの、ぎゅっと抱き締められたまま寝るのには、中々慣れそうもなかった。

 その為、ここしばらくキャロルは寝不足ぎみたが、シンは毎日スッキリとした表情をしている。

 またシンが女になったどころか、妃にするという女性を連れて歩くものだから、シンの配下らも最初のうちは困惑した。

 だがそれをラハトはどう伝えたのか有無を言わせないように丸め込み、シンとキャロルは今日も共に過ごしていた。

「ねぇ、シン、本当に一緒にいていいの?」

「ん?当たり前だ。もう離すつもりはない。」

「えっと、でも、早く元の体に戻るために何かしなきゃいけないんじゃないの?」

 シンはその言葉に苦笑を浮かべると言った。

「心配しなくてもいい。手は打っているしそろそろ向こうから連絡がくるだろう。」

「え?」

「我が国の者達は、竜に呪われた者を王にするほどバカではないからな。」

「竜の呪い?」

「キャロル。竜の力とは強大だ。その力を人が悪用しようとすれば、何らかの異常をきたすことは明白な事だ。」

「どういうことなの?」

「恐らくヒューはもう人の姿を保ってはいられないだろう。」

「え?」

「力を得るためには、それ相応の対価が必要になるということだ。」

「シン様、入ってもよろしいですか?」

「あぁ、いいぞ。」

 シンがそう言った時、ラハトがノックをしてから部屋に入ってくるとこちらに一礼をしてから言った。

「犯人らが出頭して参りました。」

「懸命な判断だな。ラハトに対応は任せる。キャロルには聞かせられないならな。」

「はい。仰せのままに。」

 ラハトは部屋を出ていき、キャロルは子首をかしげた。

「良かったの?ラハトは大丈夫?」

「あぁ。キャロルはラハトの優しい面しか知らないからなぁ。あいつは国のためならば、俺よりも恐ろしい男だよ。」

「え?嘘よ。ラハトは優しいわ。」

「お前には負い目もあるからなぁ。」

 あの事件の日、キャロルに土下座をして謝り、命をもって償うと言ったのを必死で止めた時は本当に大変であった。

 あの優しいラハトが本当に恐ろしいの?と、キャロルは首をかしげるのであった。




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