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第十八話

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 キャロルの事を話した途端、シンの顔色はどんどんと悪くなった。

 そんな主を見つめながら面白いなと、キャロルの護衛についていた少年は笑った。

「主もそのような顔をするのですね。」

「ヨミ。それで、キャロルは今どこにいる?」

「今は真夜中ですよ?眠っているに決まっているでしょう。」

「そうか。そうだな。」

 立ち上がり、部屋の中を歩き回る主を見つめながら、ヨキは言った。

「閉じ込められるのが嫌だと言っていましたが。」

 その言葉に、シンははっとしたような表情を浮かべると頷いた。

「そう、、だな。そりゃそうだな。だが、外に出すのは、、、。」

 葛藤しているのか表情がころころと変わる主にヨキは気になっていた事を尋ねた。

「もう一人のお妃候補の竜様はどうなっているんです?」

 その言葉に、シンは表情を暗くした。

「実のところ、最後に会った日以来巣には帰ってきていないと連絡があり、数名を残して一時皆を呼び戻した。」

 ヨキはその言葉におやっと思う。

「お嬢様と、竜様は同じ場所に監禁されていたんですよね?」

「あぁ。」

「それで、お嬢様をこっちに連れてきたら竜様はいなくなったんですか?」

「あぁ。」

 ヨキは思った。

 お嬢様と竜様は何か繋がりがあるのではないかと。

 だが、全くその可能性すら考えない主を見て、ヨキはにこにこと笑うとそれ以上は何も言わないことにした。

 表情がころころと変わる主は面白い。

 前のように仏頂面をずっとしているよりも断然よい。

「主の気持ちが通じるといいですねぇ?」

「あぁ。あー、、、少し散歩に行ってくる。」

 これはお嬢様の所に行くのだろうなと思いながらもヨキは無粋なことは言わなかった。



 キャロルの寝室までやってきたシンは、キャロルを起こさないようにそっとベットの傍らに寄った。

 キャロルは寝息をたてており、呼吸を聞くだけでもシンは癒しを感じた。

 可愛らしいその姿はずっと見ていても飽きない。

「可愛いな。」

 シンの呟きが、夜の闇にとけていった。



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