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第十二話 人間など嫌いだ

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 キャロルとシーは古びた屋敷へと運び込まれると、一室の中に閉じ込められてしまった。

 男達は笑い声をあげ、そして、部屋に鍵を閉めると見張りを一人残して別の部屋へと移動していくのが足音でわかる。

 シーはキャロルの前にしゃがむと言った。

「大丈夫か?怪我はないか?」

 心配そうに眉を下げるシーに、キャロルは首を横に振ると言った。

「私の事はほっといてよかったのに。」

 するとシーは困ったように笑うと、キャロルのおでこを指で軽く弾いた。

「いった。」

「ほっとけるか。さ、どうやって逃げるかな。」

 キャロルはおでこをさすりながら、自分の胸が暖かくなるのを感じた。

「それにしても、あの男達は何者だろう。心当たりは?」

 その言葉に、キャロルはうつむくと、小さく息を吐いてから言った。

「多分、、、私の、、、おじさんの差し金だと思う。」

「おじさん?まさか、キャロルは家出娘か?」

 その言葉に、キャロルは少し考えると首を横に振った。

「家出ではなくて、家に帰るつもりはないわ。」

「なんで?」

 至極当たり前な問いに、キャロルは少しばかりばつが悪そうに言った。

「帰りたくないの。」

 それ以上詳しく話すつもりのなさそうなキャロルに、シーは肩をすくめると部屋を見回し、小窓から外を見ると言った。

「まあ、ここで待っていても、いずれ俺の仲間が助けに来ると思うが。」

 男らしいその言いようと、女の子なのに俺と言っているシーがキャロルには可愛らしく見えて苦笑を浮かべてしまう。

 だが、仲間とは誰の事であろうか。

「仲間?」

「おそらく他の事件性も考えて、調べてから来るだろうからなぁ。」

「シーの仲間?」

「ああ。頼りになる者達だ。だから、心配することはない。」

 その言葉に、キャロルはずきりと胸が痛んだ。

 仲間?

 心配する必要はない?

 助けてくれる?

 それは、シーの事をだろう。

 私を助けに来るわけではない。

 そう思うと、胸の中にずきりと痛みが走った後に、感情がすっと冷めていく。

 そうだ。

 元々、これは自分の問題でシーは何の関係もない。

 外からまた男達の声が響いて聞こえると、部屋の扉があき、そこに一人の男が現れた。

 シーがキャロルを守るようにして前に立とうとしたが、それをキャロルは押しのけ、自分から進んで前に出る。

 シーは何故というように目線を向けるが、視線を感じてもキャロルは引かない。

「っは。逃げたかと思えば、なんだその眼は。」

 次の瞬間、頬に痛みが走り、キャロルは地面に倒れた。

 シーは目を丸くし、男に殴りかかろうとしたのだがキャロルはシーの腕を掴みそれを止めると、ゆっくりと立ち上がり、シーに向かって言った。

「貴方は関係ない。黙っていて。」

「キャロル。」

「なんだ?勝手に逃げて、友達が出来たのか?化け物に友達か?」

 馬鹿にしたような笑いに、キャロルは言った。

「友達なんかじゃない。」

「ほう?なら、何だ?」

「知らない。勝手についてきた。」

「ふん。生意気な目をするようになりおって、つかの間の自由がそんなに楽しかったか。お前など誰からも愛してもらえるわけがないと言うのに。」

 キャロルはその言葉に失笑すると言った。

「愛?人間などと小汚い生き物に愛されるなんて反吐がでる。」

 男を睨みつけるキャロルに、男はキャロルの顎を掴むと言った。

「ほう?では、その小汚い生き物に良いように扱われるのはどうだ?」

 その言葉にシーの瞳は怒りに燃え、今にも男に掴みかかりそうな勢いがあるが、キャロルがそれを拒絶するのが肌で感じられて動けずにいた。

「私はもう自由。貴方には、2度と捕まらない。」

「ははは。この状況でよくそう言えるものだ。どうやって逃げるつもりだ?もしお前がここで姿を変えれば、この娘はがれきに埋もれて死ぬぞ?」

 その言葉にキャロルの肩がびくりと震える。

 シーは男の言葉の意味が分からずに眉間にしわを寄せキャロルに視線を移す。

「まあ、お前がこの娘など知らないと言うならば、どうだ?やるか?」

 キャロルは唇をぎりっと噛んだ。

 悔しい。

 人間など嫌いだ。

 薄汚く、裏切る。

 自分を物としか見ない。

 嫌いだ!

 嫌いだ!

 大っ嫌いだ!

 キャロルの瞳が怒りに燃えた時、すっとその手をシーが握った。

 冷たくひんやりとしたその手の感触に、キャロルはドキッとする。

「キャロル。俺を信じろ?」

 振り返ると、シーが困ったように笑い、こちらに伺いを掛けるように言った。

「俺が、お前を守ってやるから。」







 


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