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第十話 キャロルの動揺

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 キャロルは空をしばらく飛び続け、自分の心を落ち着かせていた。

 おそらくだが、自分は初めて人に好意と言うものを寄せられたのだ。

 それを思うと、胸が熱くなるような、恥ずかしくなるような気がする。

 けれど、人を信じてはダメだ。

 そう自分を奮い立たせ、そして、きっと夜になればもうあのシンと言う男もいないはずだとキャロルは思い、夜遅くになるまで空を飛び続けた。

 夜中に帰り、あたりを見回すとさすがにシンはおらずキャロルはほっとすると穴の中でいつものように丸くなって眠った。

 そして、次の日の朝、衝撃を受ける。

 いつものように目覚め、水浴びを済ませ、そしてほっと息をついて人の姿に戻ろうかと思った時であった。

 がさりと音がしたかと思ったらシンが花束を抱えて現れたのである。

「愛しい人よ。おはよう。」

 キャロルは目を丸くするとしばらく動けずにいた。

 するとシンはキャロルの前に花束を置き、そして話し始めた。

「昨日は本当にすまなかった。愛を語る前に、まずはキミと色々な話をしてみたいのだ。なので、近くに野営地を作ってある。キミのいる時間に、話に来てもいいだろうか?」

 キャロルはブンブンと首を横に振った。

 だが、ふと思う。

 来る時間さえ分かれば人にも戻れる。だが、来る時間が分からなければいつ人に戻ればいいのかが分からない。

「朝であれば、キミはいるだろう?だから、朝、少しの時間でいい。一時間、一緒に話をしてはくれないか?」

 キャロルはその言葉に迷い、そして小さくうなずいた。

 シンはパッと顔を輝かせると頷いた。

「良かった!これからよろしく。」

 なんだろうか。これは。

 キャロルはこれから毎日この男と顔を合わせるのかと、何とも言いようのない気持ちが胸の中を渦巻いた。

 それにしてもと思う。

 この男は毎日自分の所に来て話をして、最終どうするつもりなのだろうか。

 やはり、自分を捕えるつもりなのではないかという思いが浮かぶ。

 しかし、そんな思いとは裏腹に、シンは毎朝来ては挨拶をし、そして自分の事の話をしたりキャロルに花を持って来たり、果物を差し入れたり、好きなものを聞いてきたりと言う事をする。

 さすがのキャロルも、あまりの悪意のなさに拍子抜けしたのであった。

 



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