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第二話 眼帯の皇帝

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 静かな屋敷の執務室で、マタイは机をたたきつけた。

「まだ、足りないのか?」

 マタイの前にいる全身を黒服で覆った男達は、頷いた。

「まだ足りませぬ。」

「あと少しでございます。」

「そう言いながら何年が立ったと思っている!この屋敷の為だと思い協力をしたが、いつまでかかると言うのだ!」

 その声に男たちはこそこそと囁きあうと言った。

「あと少しでございます。」

「だから、あと少しとはいつまでだと聞いている!」

「ほう。その、あと少しとは何のあと少しだ?」

 外から爆音が響き渡り、何かが崩れる音と鋼のぶつかり合う音が響いて聞こえた。

 マタイは窓の方から声が聞こえ、驚いて振り返ると目を丸くした。

 そこには、片方の眼に眼帯を携えた金色の髪の男が立ち、青く鋭い瞳でマタイを睨みつけていた。

 そしてマタイには一目でそれが誰だかが分かり、慌ててその場に跪いた。

「こ、皇帝陛下。」

「それでマタイ伯爵。何のあと少しだ?」

 マタイの額から汗が流れ落ち、そして罪を黒服で身を覆った者達へと擦り付けようとした。

「わ、、、私は何も知らないのでございます!脅され、仕方なくそれに従っていたまででございます!」

「ほう、誰にだ?」

「そ、それはこの男達に聞いてください。私は脅され、仕方なく。」

 皇帝は、剣を引き抜くと黒服の男たちを切り捨てた。だが、それに実体はなく、ただ服がばさりと落ちるだけであった。

 それに、マタイは目を丸くし、愕然とした。

「それで?何をしていた?」

「そ、それは。」

 突然、地面が激しく揺れ、マタイは体を床に転がすと、本棚につかまりながら立ち上がった。

「こ、これは。まさか!結界を破ったのですか?!」

「あぁ?あー。そうかもな。」

「何という事を!」

 マタイは顔を青ざめさせて窓へと駆け寄ると、北の塔を見た。

 皇帝はマタイの様子に首をひねり、その視線の先へと目線を送り、目を見開いた。

「あれは。竜、か。」

 銀色の鱗が太陽の光を反射してきらきらと輝き、その赤い瞳が恋しそうに空を見つめる。

 マタイはそんな竜に向かって叫んだ。

「どこへ行くつもりだ!」

 すると、竜はこちらへと顔を向け、皇帝は血のように赤いその瞳が自分の眼とあったような気がした。

 竜は翼をゆっくりと開き、はためかせるとこちらに向かって飛んでくる。

「こ、こら!来るな!来るな!」

 マタイは叫び声をあげるが、竜はこちらへと迫ってくる。

「ひえぇぇぇぇ!」

 皇帝はじっとその竜を見ていた。

 竜は、マタイの事など眼中にないようにそのまま空へと飛び上がると、空を気持ちよさそうに飛んでいく。

 マタイはがたがたと震えている。

「聞くことは、たくさんありそうだな。」

 皇帝は、美しい竜を目に焼き付けながらそう呟いた。

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