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第一話 閉じ込められた娘
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美しく花々が咲く庭の中を、キャロルは桃色のドレスを身にまとい、踊るように歌いながら散歩をしていた。
庭の噴水は光を反射してキラキラと輝く。
「キャロル。」
名前を呼び止められ振り返ると、両親がにこやかにこちらに手を振っていた。
「お母様!お父様!」
二人はキャロルの名を優しい声で呼ぶ。
キャロルは、手を振り返し、そして両親の元へと走ろうとした。
だが、突然目の前が暗くなり、足が沼に沈むように進まなくなる。
「お母様!お父様!」
両親の姿が遠くなり、そして、庭の花々は枯れ、水は泥水へと姿を変える。
「いや、、、嫌!行かないで!お父様!お母様!」
声を上げるが両親の姿は闇に消え、そして、自分の体は地面へと沈んでいく。
全ての物が色を失い、消えうせていく。
「いかないで、お願い。お父様、、、お母様。」
息が苦しくなり、そして、全てが闇に沈んだ。
重たい瞼を、ゆっくりと開けると、古びた木張りの天井が見えた。蜘蛛の巣がいくつもかかり、天井の縁を蜘蛛が歩いていく姿が見える。
夢が終わりをつげ、現実が始まる。
体を起こすと、格子のかかった窓から朝日がさして見えた。
今日もまた、一日が始まる。
古びたベッドから起き上がると、水瓶から洗面器へと水を移し、顔を洗うと着替えを済ませる。
同じ型の古びたワンピースは少し小さく、丈があってはいない。これをもう一着と交互に着続けてもう三年が立とうとしている。
長い長い階段を上がってくる足音が響き、いつものように扉をたたく音が聞こえた。
キャロルは、今日で丁度十年目、もう十年続けている事を繰り返す。
「お願いします。ここから、出してください。」
けれど、扉の下についた小さな小窓から朝食が差し入れられると、すぐに足音は去って行ってしまう。
キャロルは足元に置かれている朝食を机へと持っていくと、椅子に座り大きく息を吐いた。
ハムのはさんだパンと野菜のスープ。
それを静かに咀嚼して、食べ終えると小窓から外へと出しておく。
ずっと変わり映えのしない日常が、十年続いていた。
キャロルは、閉じ込められていた当初から体力が落ちてはいけないと、部屋の中で踊ったり歌ったり、それに部屋に置いてある本を読み、文字の読み書きや算術などを独学で学んでいた。
欲しいものは、本など持ち込めるものであればある程度は願いが叶えられる。
だが、だからと言って、快適ではない。
格子のついた窓から太陽に手を伸ばし、キャロルは呟いた。
「自由が欲しい。」
自分はこのまま永遠に閉じ込められるのであろうか。
その時であった。
地面に描かれていた魔法陣が赤く輝き、自分の体を光がつつむ。
あぁ。今日も始まった。
「ぅぅ、、ぅぅぅぅ。」
全身に痛みが走り、体の中の魔力が吸い出されていく。
「もう、嫌だ。痛い。辛い、、、外に、行きたい。」
十年間、来る日も来る日もこの無理やりに体から魔力を吸い出される行為を受け続けていた。
全身に痛みが走り、苦しさ、辛さ、気怠さ、が体を襲う。
悪夢が始まったのは十年前。両親が事故で亡くなりその葬式を行った夜の事であった。
両親の兄弟だというマタイという男は、キャロルを見るなり嫌悪をあらわにした表情を浮かべた。
『汚れた娘。』
『呪われた娘。』
『醜い娘。』
さまざまなことを言われ、そしてキャロルの両肩を掴むとその青い瞳でキャロルを睨みつけて言った。
『お前を生かしてやる。その代りその身はこの屋敷に捧げよ。』
『や、やめてください。お願いします。』
『お前はただこの屋敷の為に生きればいい。連れていけ。』
『やめて。離して!』
それから無理やりにこの北の塔に閉じ込められ、そして毎日地獄が始まる。
魔法陣から光が消え、キャロルは泣きじゃくりながら自身を抱きしめた。
「怖い。怖い、、、もう、ここは、嫌だ。」
その声は、誰にも届かない。
庭の噴水は光を反射してキラキラと輝く。
「キャロル。」
名前を呼び止められ振り返ると、両親がにこやかにこちらに手を振っていた。
「お母様!お父様!」
二人はキャロルの名を優しい声で呼ぶ。
キャロルは、手を振り返し、そして両親の元へと走ろうとした。
だが、突然目の前が暗くなり、足が沼に沈むように進まなくなる。
「お母様!お父様!」
両親の姿が遠くなり、そして、庭の花々は枯れ、水は泥水へと姿を変える。
「いや、、、嫌!行かないで!お父様!お母様!」
声を上げるが両親の姿は闇に消え、そして、自分の体は地面へと沈んでいく。
全ての物が色を失い、消えうせていく。
「いかないで、お願い。お父様、、、お母様。」
息が苦しくなり、そして、全てが闇に沈んだ。
重たい瞼を、ゆっくりと開けると、古びた木張りの天井が見えた。蜘蛛の巣がいくつもかかり、天井の縁を蜘蛛が歩いていく姿が見える。
夢が終わりをつげ、現実が始まる。
体を起こすと、格子のかかった窓から朝日がさして見えた。
今日もまた、一日が始まる。
古びたベッドから起き上がると、水瓶から洗面器へと水を移し、顔を洗うと着替えを済ませる。
同じ型の古びたワンピースは少し小さく、丈があってはいない。これをもう一着と交互に着続けてもう三年が立とうとしている。
長い長い階段を上がってくる足音が響き、いつものように扉をたたく音が聞こえた。
キャロルは、今日で丁度十年目、もう十年続けている事を繰り返す。
「お願いします。ここから、出してください。」
けれど、扉の下についた小さな小窓から朝食が差し入れられると、すぐに足音は去って行ってしまう。
キャロルは足元に置かれている朝食を机へと持っていくと、椅子に座り大きく息を吐いた。
ハムのはさんだパンと野菜のスープ。
それを静かに咀嚼して、食べ終えると小窓から外へと出しておく。
ずっと変わり映えのしない日常が、十年続いていた。
キャロルは、閉じ込められていた当初から体力が落ちてはいけないと、部屋の中で踊ったり歌ったり、それに部屋に置いてある本を読み、文字の読み書きや算術などを独学で学んでいた。
欲しいものは、本など持ち込めるものであればある程度は願いが叶えられる。
だが、だからと言って、快適ではない。
格子のついた窓から太陽に手を伸ばし、キャロルは呟いた。
「自由が欲しい。」
自分はこのまま永遠に閉じ込められるのであろうか。
その時であった。
地面に描かれていた魔法陣が赤く輝き、自分の体を光がつつむ。
あぁ。今日も始まった。
「ぅぅ、、ぅぅぅぅ。」
全身に痛みが走り、体の中の魔力が吸い出されていく。
「もう、嫌だ。痛い。辛い、、、外に、行きたい。」
十年間、来る日も来る日もこの無理やりに体から魔力を吸い出される行為を受け続けていた。
全身に痛みが走り、苦しさ、辛さ、気怠さ、が体を襲う。
悪夢が始まったのは十年前。両親が事故で亡くなりその葬式を行った夜の事であった。
両親の兄弟だというマタイという男は、キャロルを見るなり嫌悪をあらわにした表情を浮かべた。
『汚れた娘。』
『呪われた娘。』
『醜い娘。』
さまざまなことを言われ、そしてキャロルの両肩を掴むとその青い瞳でキャロルを睨みつけて言った。
『お前を生かしてやる。その代りその身はこの屋敷に捧げよ。』
『や、やめてください。お願いします。』
『お前はただこの屋敷の為に生きればいい。連れていけ。』
『やめて。離して!』
それから無理やりにこの北の塔に閉じ込められ、そして毎日地獄が始まる。
魔法陣から光が消え、キャロルは泣きじゃくりながら自身を抱きしめた。
「怖い。怖い、、、もう、ここは、嫌だ。」
その声は、誰にも届かない。
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