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第十一話

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 朝、朝食の準備をして食べていたのだが、まとわりつくような視線が嫌になる。

「蓮。」

「なぁに豊。」

 名前で呼ばれるのにもまだ慣れない。

「視線が痛い。」

「ごめん。愛してる。」

 言葉を無視して皿を片付ける。
 すると、後ろからぎゅっと抱きしめられて首元にキスを落とされる。

「やばい。愛が止まらない。」

 いや、止めてくれと思う。

 先日、蓮の気持ちを受け止め付き合う事になった日に蓮に襲われた。

 足腰たたなくなるまで愛され、初めて死ぬかと思った。

 強すぎる快感はもはや拷問であると、自分で身を持って証明できるとは思わなかった。

「愛してるー。」

 肩にぐりぐりと顔を押し付けられ、皿を洗いながらため息をつくと、首筋にひやりとした感触が当たる。

「ひゃっ」

 ぬるりとした舌に首筋を舐められ、甘噛みされると記憶が呼び覚まされて腰がぞくりと粟立つ。

「ぁ、、、やめい!」

 気合で怒り、体を引き離すと、くぅーんと犬の鳴き声が聞こえそうな表情を浮かべた蓮と目が合う。

「いたずらしないから、ぎゅってさせて。」

 夜はあんなに狡猾な表情をするくせに、昼は子犬のように甘えてくるのはズルい。

 七歳も年下の相手にこんなに翻弄されるとは思わなかった。

「いたずらはなしだぞ。」

「はぃ。」

 最近は毎日のように朝はずっと抱きしめられている。

 なんだか自分が人形か何かになったかのように感じるのだが、可愛くねだられて、拒否できない自分は蓮に甘いのだと思う。



 職場に付き、パソコンを起動させると大きくいきをついた。

「なんだ、朝から疲れているのか?」

「あー。疲れてはいないんだが、なんだかな。」

 悠馬に首をかしげられる。

 朝からわざわざ自分に声をかけに来てくれたのだろう。それほど自分が疲れて見えたのだろうか。

「大丈夫か?」

「大丈夫だ。」

 頭をぽんぽんとされ、なんだかため息がもれた。

「無理すんなよ。」

 仕事をしながら、蓮の事を考える。

 疲れているのではない。ただ、若さと甘い生活というものに不慣れすぎてどぎまぎしてしまうのだ。

 これが、たぶん立場が違ったらまだよかった。

 自分が抱かれる側というのが、さらに恥ずかしさを助長させるのだ。

 しかも蓮は夜は極甘だ。

 つい、夜のことを思い出してしまい、頭を抱えてしまう。

 恥ずかしい。

 それでも、蓮から離れるという選択肢はまったくないのであった。
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