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光剣になった女従者
しおりを挟む幻想大陸、エリア・ドールの外れにあるという「光剣城」
かつて剣の王が、闇魔族との戦いのために戦士の育成用に建てた城。
闇魔族との和睦がなってもまだ、その役割は続いていて、城主の認めを受けて「勇者」となると、各地で恩恵が受けられる「パスカード」をもらえて優遇される。そして「箔」もつく。
認めを受けて「勇者」となった者は、その実力を査定されて、「AからE」までのランク分けをされて、パスカードにも記載される。
そして、決まりという訳ではないが、大抵の勇者は、「従者」を持った。
強くても、補佐役、雑務役は必要なことが多いから。
☆
勇者ラーンも、その光剣城に認められた一人だった。
愛用の片手剣を持ち、左手には固定式の丸盾、鎧は革の簡素な物。
ランク的には「C」ランクと平凡な部類だが、金髪で整った顔立ちの彼は、女性に人気があった。しかし彼には「先約」がいた。
従者である、アルフィナという、眼鏡をかけて杖を持ち、白いローブを着た知的美人だ。
彼女は黒、白の両方の系統の魔法を使え、杖術にも長けている。
何故こんな、優秀な従者が、「C」ランクのラーンについているかというと、これには少し訳がある。
彼女は、ラーンが雇った「優秀な従者」だったのではなく、
ラーンのために、修達して自ら従者になったのである。
☆
‐この経緯は、少し話がさかのぼる。
幼い彼女には、幼馴染の男の子がいた。
男の子は「俺は、光剣城を出て、勇者になるんだ」といっていた。
そして、大人しい彼女が、他の男の子達にからかわれていると、必ず助けに飛んできた。
「お前ら、よってたかって、恥ずかしくないのかよ!」
男の子は、棒きれを振り回して、他の男の子達を追い払った。
「お前は俺が付いてないと、ダメだな。光剣城を出て勇者になったら、俺が従者にしてやるよ。守ってやるから安心しろ」
そういって、彼は幼年から、光剣城で修行するべく、故郷の村を後にした。
そして、成人して、「C」ランクの勇者になった彼が故郷に戻ると、女の子は、優れた魔法使いになっていた。村の武術家から、杖術まで、習って。
☆
そして、「C」ランクの勇者ラーンと百年に一人の才女と言われる魔法使いアルフィナは、人々の、平和のために、戦うことにしたのだが…。
闇魔族との和睦が成っているので、それほど大きな依頼はなく、主に、はぐれで生息する劣鬼つまりゴブリンやオーク、コボルド等の退治がほとんどだった。無理に二人がこなさなくても、他の冒険者がこなせる依頼でもあったので、二人の立ち位置は微妙だった。それでも、アルフィナは文句一つ言わずにラーンを補佐するのだが。
ある日、酒場で二人が食事をとっていると、「A」ランクの勇者、「魔法を無効化する破魔の籠手」を持つ武闘家のルークが、同じテーブルにつく。ルークは二人と同郷の出であったので、それは親し気に、
「二人とも元気そうだな。劣鬼ばかり相手にしているようだが、もう少し、マシな依頼はこなせないのか?ラーンもアルフィナも、俺と組めば、もっと強い敵と戦えるぞ。まあ、ラーンには少し荷が重いかもしれないが」
ルークはこの少し前、邪教団を相手に一人で乗り込み、これを壊滅させていた。
確かに、ルークと組めば、大きな依頼や強大な集団とも戦えるかもしれない‐
が、アルフィナは、はっきり言った。
「お断りします。あなたは確かに強いけど、ラーンのほうが、強い心をもっているわ。それに、あなたも、馬に蹴られて死にたくはないでしょう?」
要するに「恋路の邪魔をするな」ということだな、と解釈したルークは、手早く食事を済ませると、
「悪かったな、二人とも。まあ、死なない程度に稼いで、仲良くやってているといい」
そういって、酒場を出るルーク。
皆、それなりに平和と秩序のために戦い、それでいて、無難に仕事をこなしていたのだが、
この後、思わぬ事件に巻き込まれることになる。
☆
「下手な魔物より、人のすることのほうが恐ろしい」
と、ある学者がいったように、
彼らの居る国、ラクティアでは、王弟のオルウェンが、王に反旗を翻して、内乱を起こした。
内乱自体はすぐに鎮圧されたが、この王弟は、追い詰められた際に、「己と家人の魂」を犠牲にして、
一つの「禁呪」を使い、他次元への穴を開け、そこから、闇魔族ともまた別の、「異形の魔神」を呼び込んだのだ。
その巨大な「魔神」は、館の屋根を突き破り、暴れてこれを倒壊させると、王都の方角に向けて進み始めた。
王によって勇者たちが招集されて、これに当たるが、「A」ランクの勇者たちが束になっても歯が立たない。
仮面のような装甲を顔面に付けた単眼の黒い魔神は、その眼から、光線を放ち、村や街を薙ぎ払いながら、ゆっくりと進んでいた。
ラーンは、自分にかなう相手ではないと、王都で腐っていたのだが、アルフィナは彼に、一つの問いを投げかける。
「ラーン、ホントの勇者になりたくない?」と。
ラーンは、こう返した。
「なりたいさ、でも、俺は「C」ランクで、大した力を持ってない。今の俺に何ができる?」
「私が、あなたの力になるわ」
そういって。片膝をついて、祈ると、彼女は、燐光と共に、光る片手剣になった。
「これは…」
ラーンがその剣を手にすると、それは彼の手にはっきりと馴染み、湧き出る力を感じさせた。
アルフィナの声が頭に響く。「これは、「七星光剣」邪を滅するためだけに、使われる。私の、そしてあなたの切り札」
「行きましょう。ルークが、そして、みんなが、待ってるわ」
ラーンは、手早く準備をすると、王都に向かう、魔神の所に、向かった。
☆
ラーンがそこに着くと、ランクの高い勇者たちが、苦戦しつつも戦っていた。
しかし、それが、足止め以上の成果をだせていないのも、見て取れた。
負傷して、交代していたルークがラーンを見つけて、叫ぶ。
「バカ!何しに来た!おまえに何か出来る相手じゃない!!」
アルフィナは、今度はルークの頭に語り掛けた。
「ルーク、時間を稼いで。私達が、なんとかするよう、やってみるから」
ルークは、アルフィナの声と、光る剣を見て、何かをさっしたようで、
「いっとくが、俺も怪我してる。長くはもたせられないから、やるなら早めにたのむぞ」
そういって、左手の籠手を構えて、ラーンを守る態勢に入る。
「ラーン、集中して、周囲の力をこの剣に、集めて…」
ラーンが光る剣を構えて集中すると、周囲のから、光の粒子が剣に集まってくる。
魔神もそれに気づいたのか、ラーンに向けて、眼から光線を発射する。
割って入ったルークが、破魔の籠手をかざして、それの発する障壁で、光線を、防ぐ。
「Aランクの勇者をなめるな!」
ルークが籠手を振ると、光線は、あさっての方角に、逸れた。
「今よ!ラーン。前に出て、薙いで!!」
アルフィナの激で、ラーンがルークの前に出て、光る剣にためた力を解放する。
それは、粒子を放ちながら、巨大な光の剣となった。
ラーンが、気迫と共にその刃を魔神に向けて横に薙ぐと、バチバチと魔神を守る謎の障壁とぶつかり、火花を散らす。
「このおおー!!」
ラーンがさらに力を込めると、刃の光はさらに強くなり、謎の障壁を貫通し、魔神を真っ二つに胴斬りにした。
魔神は傷口から、黒い煙を出すと、サラサラと粉状になって、消滅した。
ルークがラーンに駆け寄る。
「すごいぞ、ラーン。これでお前も立派な勇者だ」
しかし、ラーンは答えず、光を失った剣に、何度も問いかける。
「アルフィナ!大丈夫か!答えろよ!アルフィナ!!」
剣は力を出し尽くしたのか、普通の片手剣と何ら変わりないようラーンは感じて、その剣をを抱きしめて、泣いた。
☆
その後、ラーンは王から褒章を受けたが、彼は、心ここにあらずであった。
王都の宿の一室を貸し切り、剣に何度も語り掛けて、抱きしめた。
「信じないぞ、認めないぞ、こんなの…」
そして、月の綺麗な晩の事。
窓からさす月の光に照らされて、剣が淡い光を帯びる。
そして、それは、知的美人の女従者のアルフィナの姿を取り戻した。
「力を使いすぎたから、少し時間がかかったわね」
といい、つづけて、
「まったく、情けない姿。あなたには、人の姿の私がいないとダメみたいですね」
ラーンはアルフィナを抱きしめて、
「光剣の力なんかより、名声なんかより、お前のほうが、俺にはよっぽど魅力的だ」
「まったく、ほんとに、バカなんだから」
月光の照らす中、二人はくちづけを交わした。
☆
二人はこの後、故郷の村に帰り、村人の歓喜をもって迎えられたが、その功績を誇ることなく、離れの森に住居をもち、仲睦まじく、ひっそりと、穏やかにくらしたといいます。
(了)
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訂正:タイトル回収忘れてました^^;
大丈夫ですよ。いつも読んでくださりありがとうございます。今後もこういう形で作品を出していければとおもいます。出来ればでいいですので、また読んでくださると嬉しいです。(ルゼより)
アルフィナが剣になる伏線がない。
「二人の」故郷という設定も急過ぎて戸惑う。
でも全体的に作風は好き。
細かい設定だけしっかりしたら面白くなる(と思う。)
今回も執筆お疲れ様です。
読んでくださりありがとうございます。アルフィナが剣になる設定は冗長的に長くなりますのでここでは触れませんでした。故郷の話ももう少し加えたほうがよかったかもしれませんね。設定に関しては、今後の参考にさせていただきます。重ねてありがとうございました。(ルゼより)