5 / 13
5:パーティ整備と黒きアデプト
しおりを挟む『「パワーUP!」「STRUP!」「クリティカルUP!」』
バトンのような樫の木のワンドをくるくると回して、黒髪ツインテールの魔女っ子ロゼリーが支援魔法を高速で拳道にかける。
それを受けて、厳つい顔にガタイのいい武闘家「パワーフィスター」の拳道が、現状の必殺スキルともいうべき「気功砲」を、丘陵地帯から遠くに見える小型の竜「ワイヴァーン」に向けて使う。
「ぬうううう…でりゃあ!」
「気功砲」は溜め状態から、両手を突き出して放つ、極太レーザー状の「気」による照射砲撃というスキルで、これをまともに受けたワイヴァーンは、極太レーザーのダメ―ジと、照射による継続ダメージ、そしてそれらに発生するクリティカルの連打で、HPが0になり、墜落しながら、セル状になり、かき消えた。
「LVUP!」
数度に渡る、この「気功砲」によるワイヴァーン撃墜狩りは、拳道とカレン、そしてロゼリーのLVを大きく跳ね上げた。拳道はとカレンは40→60LVとなり、ロゼリーは少し上の55→70LVだ。
そして、倒したワイヴァーンの分のGPも自動で入り、資金的にもかなりの余裕が出来上がった。
ここでの出番がまるでなかった黒髪の知的美人のプリースト、カレンが拳道に言う。
「そろそろこの狩り、いいんじゃない?LVもだいぶ上がったし。スキルと装備も整えないと良くないわよ」
…カレンにしてみれば、自分は何もせずに、大量のEXPとGPが入ってくるのだ。ゲーム的に内心面白くないのだろうと、拳道は感じた。
、なので彼女の意を汲んで、拳道たちは曇天模様の北西の丘陵地帯から、このゲームの首都ミラディに戻り、装備とスキルを整える事にした。武闘家クラスの拳道には、装備をあまり変更する余地はないが、スキルを整える必要があるのも事実ではあった。
☆
首都ミラディでの拳道たちのたまり場、茶色一色の酒場「泥沼亭」で、軽く飲食しながら、スキル談議する三人。VRとはいえ、子供に酒は飲ませられないので、ロゼリーは果物のミックスジュースである。
『この、「全てのスキルを溜めで使える」パッシヴの「スキルアクセル」はあった方がいいな、あとは、威力の高い「ガイア・アッパー」も登録しておこう』
拳道がいうと、カレンも自分のスキルを見直す。
『50LVで入った「プロテクト」はつかえそうね。一回だけだけど、どんな攻撃も無効化できるわ。後は、私もロゼリーと同じく「高速魔法」を入れておくわね』
ロゼリーはそれに少し不満気に、頬を膨らませて抗議する。
『あー、ずるい!ボクの専売特許なのに~。いいよ、ボクは「ALLUP」を覚えるから。これで、拳道の全能力を上げて、さらに活躍してみせるんだから~』
拳道はその発言に少し気になって、思う所を口にした。
『「ALLUP」を覚えたら「高速魔法」はいらなくならないか?一度に沢山かける必要ないしな』
ロゼリーは、しかし、クスっとおどけない顔に小悪魔的な笑みを浮かべてこう説明する。
『「ALLUP」は他の「パワーUP」や「STRUP」と重ねられるの。別系統の扱いね。だから、拳道はボクの支援でさらに強くなるよ。楽しみにしててね』
…そして、スキルが一段落すると、次は装備である。
拳道は普通に緑から白の武闘着に買い替えただけだが、カレンの装備は一新された。
緑のローブから、チェインメイルに着替え、メイスとシールドで武装したのだ。見た目ちょっとした戦士である。
ロゼリーは特に変化なし。フードを外した赤いローブ姿にバトンのような樫の木のワンドはそのままである。
…そうして一段落した訳だが、スキルも装備も整った所で、街を歩く三人に立ちふさがる人影一つ。
黒い短髪に、中性的なハンサム系の美女であった。整った顔立ち、気の強そうな意思のこもった眼。多分にきつく結んだ唇。そして、スレンダーなすらりとした身体を鎖帷子と紫の装束に包み、まるで「くノ一」のようないでたちだった。
『お前が拳道だな!私は闘技場中級の覇者「シャドウ・アデプト」の黒蘭!一つ手合わせ願おうか!』
「どういうことだ?まず理由を聞こうか」
拳道の質問に、黒蘭は「骨のある武闘家と聞いている。それ以上の理由が要るのか?」と答える。
「それは、失礼した。武を持って鳴る者に、手合わせに理由等要らぬな」
…こうして、この「くノ一」のようないでたちの「黒蘭」とデュエルをすることになった拳道。
互いに申請と承諾を行い、半透明のデュエルのドームに包まれて、二人の闘いが行われようとしていた。
「…なに二人の世界に入ってるのよ、馬鹿ね」
ここでも出る幕の無い、プリーストのカレンが少し嫉妬気味にこう呟いたのは、余談である…。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

拳法使いのVRMMO-鬼コンボで無双冒険-
秋月愁
SF
とあるVRMMOにおいて、主人公の拳法家の神道誠は、その武闘家のアバター「誠」で激ムズコンボを仲間の様々な支援を受けて、その拳法の才でモンスター相手に叩き込む「リアルでは戦えない竜をその手で倒すために…」これは、そんな彼のVRMMOでの無双的冒険の話である。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
剣客逓信 ―明治剣戟郵便録―
三條すずしろ
歴史・時代
【第9回歴史・時代小説大賞:痛快! エンタメ剣客賞受賞】
明治6年、警察より早くピストルを装備したのは郵便配達員だった――。
維新の動乱で届くことのなかった手紙や小包。そんな残された思いを配達する「御留郵便御用」の若者と老剣士が、時に不穏な明治の初めをひた走る。
密書や金品を狙う賊を退け大切なものを届ける特命郵便配達人、通称「剣客逓信(けんかくていしん)」。
武装する必要があるほど危険にさらされた初期の郵便時代、二人はやがてさらに大きな動乱に巻き込まれ――。
※エブリスタでも連載中
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる