拳法使いのVRMMO外伝-漢は一撃必殺-

秋月愁

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5:パーティ整備と黒きアデプト

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『「パワーUP!」「STRUP!」「クリティカルUP!」』

 バトンのような樫の木のワンドをくるくると回して、黒髪ツインテールの魔女っ子ロゼリーが支援魔法を高速で拳道にかける。

 それを受けて、厳つい顔にガタイのいい武闘家「パワーフィスター」の拳道が、現状の必殺スキルともいうべき「気功砲」を、丘陵地帯から遠くに見える小型の竜「ワイヴァーン」に向けて使う。

 「ぬうううう…でりゃあ!」

 「気功砲」は溜め状態から、両手を突き出して放つ、極太レーザー状の「気」による照射砲撃というスキルで、これをまともに受けたワイヴァーンは、極太レーザーのダメ―ジと、照射による継続ダメージ、そしてそれらに発生するクリティカルの連打で、HPが0になり、墜落しながら、セル状になり、かき消えた。

 「LVUP!」

 数度に渡る、この「気功砲」によるワイヴァーン撃墜狩りは、拳道とカレン、そしてロゼリーのLVを大きく跳ね上げた。拳道はとカレンは40→60LVとなり、ロゼリーは少し上の55→70LVだ。

 そして、倒したワイヴァーンの分のGPも自動で入り、資金的にもかなりの余裕が出来上がった。

 ここでの出番がまるでなかった黒髪の知的美人のプリースト、カレンが拳道に言う。

 「そろそろこの狩り、いいんじゃない?LVもだいぶ上がったし。スキルと装備も整えないと良くないわよ」

 …カレンにしてみれば、自分は何もせずに、大量のEXPとGPが入ってくるのだ。ゲーム的に内心面白くないのだろうと、拳道は感じた。

、なので彼女の意を汲んで、拳道たちは曇天模様の北西の丘陵地帯から、このゲームの首都ミラディに戻り、装備とスキルを整える事にした。武闘家クラスの拳道には、装備をあまり変更する余地はないが、スキルを整える必要があるのも事実ではあった。

                    ☆

 首都ミラディでの拳道たちのたまり場、茶色一色の酒場「泥沼亭」で、軽く飲食しながら、スキル談議する三人。VRとはいえ、子供に酒は飲ませられないので、ロゼリーは果物のミックスジュースである。

 『この、「全てのスキルを溜めで使える」パッシヴの「スキルアクセル」はあった方がいいな、あとは、威力の高い「ガイア・アッパー」も登録しておこう』

 拳道がいうと、カレンも自分のスキルを見直す。

 『50LVで入った「プロテクト」はつかえそうね。一回だけだけど、どんな攻撃も無効化できるわ。後は、私もロゼリーと同じく「高速魔法」を入れておくわね』

 ロゼリーはそれに少し不満気に、頬を膨らませて抗議する。

 『あー、ずるい!ボクの専売特許なのに~。いいよ、ボクは「ALLUP」を覚えるから。これで、拳道の全能力を上げて、さらに活躍してみせるんだから~』

 拳道はその発言に少し気になって、思う所を口にした。

 『「ALLUP」を覚えたら「高速魔法」はいらなくならないか?一度に沢山かける必要ないしな』

 ロゼリーは、しかし、クスっとおどけない顔に小悪魔的な笑みを浮かべてこう説明する。

 『「ALLUP」は他の「パワーUP」や「STRUP」と重ねられるの。別系統の扱いね。だから、拳道はボクの支援でさらに強くなるよ。楽しみにしててね』

 …そして、スキルが一段落すると、次は装備である。

 拳道は普通に緑から白の武闘着に買い替えただけだが、カレンの装備は一新された。

 緑のローブから、チェインメイルに着替え、メイスとシールドで武装したのだ。見た目ちょっとした戦士である。

 ロゼリーは特に変化なし。フードを外した赤いローブ姿にバトンのような樫の木のワンドはそのままである。

 …そうして一段落した訳だが、スキルも装備も整った所で、街を歩く三人に立ちふさがる人影一つ。

 黒い短髪に、中性的なハンサム系の美女であった。整った顔立ち、気の強そうな意思のこもった眼。多分にきつく結んだ唇。そして、スレンダーなすらりとした身体を鎖帷子と紫の装束に包み、まるで「くノ一」のようないでたちだった。

 『お前が拳道だな!私は闘技場中級の覇者「シャドウ・アデプト」の黒蘭!一つ手合わせ願おうか!』

 「どういうことだ?まず理由を聞こうか」

 拳道の質問に、黒蘭は「骨のある武闘家と聞いている。それ以上の理由が要るのか?」と答える。

 「それは、失礼した。武を持って鳴る者に、手合わせに理由等要らぬな」

 …こうして、この「くノ一」のようないでたちの「黒蘭」とデュエルをすることになった拳道。

 互いに申請と承諾を行い、半透明のデュエルのドームに包まれて、二人の闘いが行われようとしていた。

 「…なに二人の世界に入ってるのよ、馬鹿ね」

 ここでも出る幕の無い、プリーストのカレンが少し嫉妬気味にこう呟いたのは、余談である…。






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