33 / 39
24話後編:幸運を呼ぶ者(後)
しおりを挟むゼクロス、クレイド、ライナス、リオールのPTが隠れ家的な店に戻ると、白髪の、青い眼をした、どこかのんびりした風の、少年アバターが茶色を基調とする、喫茶店風の店内のカウンター席に座っていた。
レザーアーマーに、ショートソードを装備したその軽装の少年は、多分ルーシアが作ったであろうサンドイッチを食べていて、ゼクロス達が店に入ると、手早くその最後のひとかけらを口に放ると、ゼクロスPTに軽く手を振って、にこやかに挨拶してみせる。
ゼクロスが「やあ、初めまして、かな?」と少年に話しかけると、その少年は「うん、シレネスっていいます。よろしく」と手短かに名乗り、PTのみんなと軽い挨拶を交わすと、こう続けた。
「風の噂で、ここで、絶品の料理が食べられると聞いて、来たんだ。でも、看板もなくて「準備中」の札もかかってたから、間違いかなと思ったんだけど、店内に人がいるみたいだから、聞いてみたんだ。そうしたら、入れてくれて、こうして軽食を出してもらったというわけさ」
ひとしきり、いきさつを話したシレネスは、台所のルーシアが作ったチキンカツのサンドイッチにも満足したらしく「どうやら、当たりだったみたいだ。GPは、幾ら払えばいいのかな?」とカウンターのエリシャに聞いたので、エリシャは優しく微笑んで、
「GPはいらないわ。ここは、形式上は店になってるけど、FLのみんなが集まるたまり場みたいなものだから。だから、看板も出てないし、常に「準備中」になっているの。勘違いさせちゃって、ごめんね」
シレネスは、得心がいったという感じで、なるほど、と頷いた。
「なるほど、秘密の憩いの場所という感じですね。じゃあ僕も、ここのことは秘密にしますから、また遊びにきても、いいですか?」
「もちろんよ。あなたさえよければ、また来てね。FLとかもしてもらえると、なおいいわね」
こうして、エリシャとシレネスはFLを交わすのだが、FLリストでクラス欄を見たエリシャは少し困惑した。シレネスは「グッドラッカー」と「鑑定士」のツインクラスで、共に珍しいクラスであったからだ。
「初めて見るクラスね。「グッドラッカー」ってどんなクラスなの?」
首を傾げるエリシャに、シレネスはこう説明する。
「PTの味方のアイテムドロップ入手数を増やしたり、レアドロップ率を引き上げたり、入手GPを増やしたりするクラスかな?こういうと便利だけど、簡単な装備と魔法しか使えないから、ほとんど戦力にはならないけどね」
「なるほど、PTでアイテム収集する時に、居ると良い感じのクラスだね。良ければ僕ともFLをしてもらえるかな?」と興味ありげにクレイドが頼むと、
「私もFLいいでしょうか」とルーシアも同調して、シレネスはこの2人とも快くFLを交わした。
「ドロップアイテムが沢山必要になったら、気軽にFLから呼んで。それじゃあ、またね」
そういって、愛想よくみんなに手を振ってからこの隠れ家的な店から出るシレネス。
それから彼は度々この隠れ家的店に来ては、料理と会話を楽しみ、これに満足すると「これは気持ちばかりのお礼だよ」といって「珍しい合成アイテムの材料」を沢山もってきて、主に料理の腕を振るっていた錬金師のルーシアを喜ばせた。
…やがて、彼も店の常連となって、時にPTの一員として、狩りでアイテム収集の効果を高めつつ自らのLVも上げて、エリシャの隠れ家的店のみんなとも改めてFLを交わしたのであった…。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる