32 / 39
24話前編:幸運を呼ぶ者(前)
しおりを挟むこの日のゼクロス達は、2番目のエリアのディルドラ王国にあるレストという町の北で「アーマーオーク」を討伐するクエストをしていた。
PTは、パラディンのゼクロス、ソルジャーのクレイド、ガードナイトのライナス、そして新たに入ったビショップのリオールであった。
前衛3人、支援一人のこの布陣は、リオールが提案したもので、戦士3人でのスキルを用いた白兵と、回復系魔法の覚えが早いビショップのリオールの回復魔法「ハイヒール」でのHP回復により、アーマーオークは相手にもならず、曇天模様の岩場のMAPで、無難にクエストは進んでいた。
「この調子なら、楽にいけそうだな」とゼクロスは余裕をかましていたが、油断大敵とはいったもので、またも場違いな強力そうなモンスターと遭遇した。
翼の生えた巨大な黒いリザードマンが、PTの前に立ちはだかったのだ。
この巨大な黒いリザードマンは、意外に俊敏でもあり、曲刀を以って、前衛のゼクロスに斬りつける。
「ぐはっ!」
ゼクロスは、HPの6割を超える大ダメージを受けて、慌てて「パリィ」で防御態勢に入る。
「危ないわ、持ちこたえて!」
リオールが素早く「ハイヒール」でゼクロスのHPの4割弱を回復させる。
「このっ!」
クレイドが白兵にはいり、この黒いリザードマンに、新しく覚えた打撃スキル「デストロイクラッシュ」を使い、ヘビーメイスで殴りつける。ギロリとクレイドを睨んでターゲットする黒いリザードマン。
「おっと、やらせないよ!」
そこにライナスが、ターゲットを取る「ヘイト」上昇系スキル「ドレッドノート・アタック」をブロードソードで仕掛けて、この突きスキルで、黒いリザードマンのターゲットを自分に向ける。
この「ドレッドノート・アタック」は、相手とのLV差が高いほど、高いヘイト値が取れるので、ライナスはこれを連打して、ターゲットを自分に固定しにかかる。
もちろん、黒いリザードマンの攻撃が向かうわけだが、この時、ライナスはプレートメイルにガントレット、レッグガードにオープンヘルム、さらにはラージシールドまで持った重装備であったので、2割強のHPダメージでこの曲刀による攻撃をしのぐ。
(これは見たところデーモン系だな。なら、あれでいけるはずだ)
そう思い、ゼクロスは、クラススイッチして「パラディン」から「ホーリーナイト」になると、魔族やアンデッド系に絶大なダメージを与えるスキル「聖光剣」での斬撃を、この黒いリザードマンに浴びせた。黒いリザードマンは、予想通り魔族の類であったようで、そのHPバーが3割程削れる。
「前衛は大丈夫だな。よし、僕は支援に回る!」
クレイドはこれを見て、自分も後ろに引きながらクラススイッチして「ウィザード」になると「ステータス・ブレイク」の魔法でこの黒いリザードマンの防御力を大幅に下げた。
ターゲットを取り続けるライナスのHPは、リオールが回復魔法「ハイヒール」で治している。
「弱体化させるから、止めは頼むぞ、ゼクロス!」
クレイドは「ステータス・ブレイク」の魔法でさらに黒いリザードマンの素早さも大幅に下げる。
「これで決まりだ!!」
そして、ゼクロスが、その支援を受けて、スキル「聖光剣」での2撃目、3撃目を入れると、黒いリザードマンはHPが0になって「グェェェェェ」と断末魔を上げて、黒くなって、かき消えた。
「LVUP!」PT全員のLVが上がる。
「結構きつい相手だったな。リオールの提案したこの編成でなかったら、もっと危なかったかもしれない。助かったよ」
手で軽く自分の頭をかきつつ、ゼクロスがリオールに礼を言う。司祭服姿のリオールは口元に笑みを浮かべて、曰く。
「私の編成もそうですが、PTのみんなの連携がうまくいった上での勝利ですよ?相手モンスターとの相性もありますから、色々メンバーを入れ替えて、有効だと思える編成で討伐クエストを受けるともっといいですね」とのこと。
ゼクロス達は、この後ポーション類でHPとSP、MPを回復させて、「アーマーオーク討伐」の続きをこなすと、翼のペンダントで、ギルド拠点に戻り、ギルドクエストカウンターに報告した。
するとギルドLVが10になり、拠点が小屋から家屋にレベルアップした。
「よし、大分見栄えもよくなってきたな」とゼクロスは満足そうに言い、ギルド拠点のワープポイントから、セルフィの街の中央公園に戻り、エリシャの隠れ家的な店に帰還した。
このとき、店では、ちょっとしたハプニングが起こっていた……。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷
くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。
怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。
最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。
その要因は手に持つ箱。
ゲーム、Anotherfantasia
体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。
「このゲームがなんぼのもんよ!!!」
怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。
「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」
ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。
それは、翠の想像を上回った。
「これが………ゲーム………?」
現実離れした世界観。
でも、確かに感じるのは現実だった。
初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。
楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。
【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】
翠は、柔らかく笑うのだった。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
運極さんが通る
スウ
ファンタジー
『VRMMO』の技術が詰まったゲームの1次作、『Potential of the story』が発売されて約1年と2ヶ月がたった。
そして、今日、新作『Live Online』が発売された。
主人公は『Live Online』の世界で掲示板を騒がせながら、運に極振りをして、仲間と共に未知なる領域を探索していく。……そして彼女は後に、「災運」と呼ばれる。

神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜
FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio
通称、【GKM】
これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。
世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。
その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。
この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。
その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
VRゲームでも身体は動かしたくない。
姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。
古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。
身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。
しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。
当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる