ツインクラス・オンライン

秋月愁

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22話:新エリアとアクシデント

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 新しく、初期の国ラストール王国と2番目のエリア、北部のディルドラ王国の国境付近にギルド拠点を建てたエリシャ達。

まだ、拠点はLV1のあばら家なので、拠点LVを上げるべく、拠点横にある「ギルドクエストカウンター」から依頼を受ける。

どうやら討伐クエストは、PT人数制限があるらしく、手始めにゼクロスが選んだ、ディルドラ王国の最初の町レスト周辺にでるという、「ゴブリンソルジャーを10体倒せ」というクエストをゼクロス、ローザ、エリシャ、クレイドの4人で受けることになった。

この人選はゼクロスがしたもので、ウェルトやライナスを入れなかったのは、クエストに手練れのウェルトやまだPT慣れしてないライナスを入れるのは、後からでもいいと思ったからで、個人的な他意はなかった。

「それじゃあ、行ってくるわね。すぐ終えて戻ってくるから、拗ねちゃいやよ、ウェルト」

ローザがウェルトにウィンクしてからかい、ウェルトも「ローザこそ、新エリアで不覚を取るなよ」と幾分厳しい表情で告げる。

「じゃあ、ライナス。何もないとは思うけど、少し留守を頼むよ」

ゼクロスが少し申し訳なさそうにいうと、ライナスは人好きのする笑顔で応じて、

「こっちは気にしないでいいですよ。それより、クエスト頑張ってください」とある意味大人の対応だ。

こうしてゼクロスPTは、ディルドラ王国に入り、北にあるレストの町に向かった。レストの町自体にはまだ用はないが、調べでは、その周辺に、ゴブリンソルジャーが出るからだ。

この国は、邪悪な魔導士に改造された「ブーステッド・モンスター」が出没するという設定になっており、ゴブリンソルジャーもその内に入る。オーガ並みのEXPもあるので、強さもたかがゴブリンと侮れないはずだ。

そしてゼクロスのPTは、空のどんより曇った荒れ地のMAPで早速、ゴブリンソルジャー3体と遭遇した。双刀に、粗いが兜と鎧で武装したそれは、初期エリアでみたゴブリンとは、別物の姿と殺気を放っていた。

「まずは先手よ!」

エリシャが魔弓「エイムスナイパー」を用いてレンジャーのスキル「トリプルパワーショット」で鉄の矢を3連射する。

ゴブリンソルジャーはステップしてかわそうとするが、強引なまでのエイムスナイパーの命中補正で曲がるように矢は全発命中。ゴブリンソルジャーはHPが0になり、黒くなってかき消える。

「なら僕は足を止める!」

クレイドも凍結の魔法「フリーズ」を用いて、ゴブリンソルジャーの一体を凍らせて、無力化する。

「久々に「暗黒剣」の効く相手ね」

残るは一体。ローザが白兵の間合いに入り、バスタードソードで「暗黒剣EX」を使って袈裟に斬りつけて、これを麻痺させると、

ゼクロスは新たに覚えた突撃系スキル「バスターチャージ」の態勢にはいる。これはパワーチャージとエイムチャージの効果を兼ね備えた上位スキルで、強引な命中補正と、高い威力を誇るスキルだ。

「受けてみろ!」

魔物に対して2倍の特効ダメージのある「シャインソード」でのチャージであり、相手は麻痺までしている。ゴブリンソルジャーは、この突撃をまともに受けて、HPが0になってかき消える。

凍った残り一体もローザがきれいに「始末」して、この戦闘は終了した。

                     ☆

「何よ、思ったより歯ごたえがないわね」

と、ローザが長い黒髪を後ろに撫でつけて、余裕の笑みを浮かべる。ゴブリンソルジャーは、一度に3体以上は出なかったので、ろくに反撃も許さないまま、10体を倒すクエストは終わった。

「じゃあ、報告に戻るか。拠点はすぐ近くだし、歩いて戻ろう」

ゼクロスはそう言って、PTを帰還の途につかせるが、ここで異常ともいえる事態に遭遇した。

他のPTが、翼をもった赤いミノタウロスと戦闘中で、そのPTは6人中3人が倒れて、今にも全滅しそうな勢いだった。

エリシャは「これ、助けたほうがいいよね」とゼクロスに心配そうに聞き、ゼクロスも厳しい表情で、

「あのPTは全滅寸前だ。横槍を入れても、文句は言われないだろう。助けるぞ!」

と言って、先頭を切って突撃をする。


「悪いが、加勢させてもらう!」

ゼクロスはそう言い「トライスラッシュ」の3連斬りで、赤いミノタウロスのターゲットをとり、その注意を引き付ける。他PTのメンバーは、これを見て慌てて後方に下がった。

「これは手ごたえのありそうな敵ね」と、ローザは「暗黒剣EX」のスキルで斬りつける。耐性があるのか、麻痺はかからなかった。斬撃のダメージはきっちり入ってはいるが。

クレイドも「フリーズ」をかけるが、これも耐性に防がれる。どうやら状態異常は効きにくいようだ。

「とりあえず、無力化しないと!」

エリシャは「トリプルエイムショット」による部位狙いで、赤いミノタウロスの右手首を狙う。

エイムスナイパーによる命中補正にエイム系のスキルの重複は高い狙撃能力を発揮して、両刃の大斧を持つ赤いミノタウロスの右手首に、3発の鉄の矢を命中させて、この大斧を取り落とさせる。

まともに魔法が効かないので、クレイドもソルジャーに「クラススイッチ」して、ヘビーメイスとチェインメイルにシールドの戦士姿になると、白兵にはいった。

「これなら、どうだ!」

クレイドが打撃スキル「スタンクラッシュ」で赤いミノタウロスをヘビーメイスで殴りつける。

赤いミノタウロスは、一瞬気絶状態になり、隙ができる。どうやら、短時間のスタンは効くようだ。

赤いミノタウロスは、何とか大斧を取り戻そうとするが、クレイドが「スタンクラッシュ」の連打でそれを妨害しつつ、ダメージも与える。

ゼクロスも負けじとシャインソードでの「トライスラッシュ」で、特効2倍の3連斬撃を与え続ける。

ローザもこの頃には「トライスラッシュ」を覚えていたので、これに合わせて斬撃を加えてダメージを重ねる。

赤いミノタウロスのHPバーはガリガリ削れて、後僅か。

「これでとどめよ!」

エリシャはエイムスナイパーで威力は大幅に上がるが命中の下がるスキル「ハイパワーショット」をここで、使う。

部位狙いで、眉間を狙ったその一矢は、エイムスナイパーの曲がるような強力な補正でドスッと赤いミノタウロスの眉間に刺さり、この一撃で、赤いミノタウロスは「グァァァァァ!」と断末魔を上げて、黒くなってかき消えた。

「LVUP!」

ゼクロスPTの全員のLVが上がる。どうやら、かなりLVの高い敵だったようだ。

助けたPTの内、生き残った3人はデスペナルティ―を免れて、ゼクロス達に礼を言うと、レストの町に戻っていった。

ゼクロス達は、被ダメージこそ少ないが、SPが底をつきかけていたので、ここは無理せず「翼のペンダント」でワープして、ギルド拠点のワープポイントに帰還した。

                      ☆

ギルド拠点に戻ったゼクロス達は「ごめん、遅くなった」とウェルトとライナスに言い。事の顛末をエリシャが説明すると、ウェルトはなるほど、と何かに納得したようで、

「最近、攻略サイトのエリア情報にない、強力なモンスターが現れる事が各地で多発していると聞く。おそらくそれもそうだったのだろう」とゼクロス達に裏情報を伝えた。

ライナスは、少しほっとしたようで、

「とにかく、皆無事でよかった。クエストの報告をすませて、エリシャの店に戻ろう」と促したので、ゼクロスはギルドクエストカウンターのNPC青年に「ゴブリンソルジャー討伐」のクエストの達成報告をして、ギルドのLVを1から3に、引き上げた。とはいえ、まだ拠点は小屋であるが。

そして「さあ、いつもの場所に、戻ろうか!」とゼクロスは言い、ギルド拠点のワープポイントから、セルフィの街の中央公園、噴水前にワープして、ルーシアの待つ、エリシャの「隠れ家的な店」に帰還した。

店に戻ると「みんな、おかえり」とルーシアが愛らしい笑顔で迎えて、腕を振るって、戻ったPTに手料理を振る舞い、こうしてギルドの初クエストは、思わぬアクシデントもあったがなんとか無事に達成、完了を果たしたのであった…。


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