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19話前編:出店、2号店(前)
しおりを挟むこの日は、ゼクロスとライナス、クレイドとエリシャ、ウェルトとローザで別れて狩りをしていた。
ゼクロスが「ライナスのLVも特訓してあげておきたい」と二人でPTを組んで、後は仲のいい二人が組んだ感じである。
「オーラナイト」であるライナスは、剣にオーラをまとわせて、HPをすり減らしながら戦うので、ゼクロスはパラディンとホーリーナイトのツインのクラスをスイッチして、「ヒール」をかけて、ライナスの回復役に回った。
「せいっ!」
ライナスのブロードソードでの「ダブルスラッシュ」で、オーガは斬り倒されて、黒くなってかき消える。
「LVUP!」
丘陵地帯のこの特訓じみた狩りで、ライナスのLVは、早くもLV25まで上がり、「トライスラッシュ」を覚えた。
ライナスの剣での攻撃力はかなりのもので、単純な攻撃力だけなら、自分やローザより上ではないかと、ゼクロスには思われた。HPが減るのがなかなかにネックだが、そこはPTで補うのがいいとも考えた。
オーガをひとしきり狩ると、ゼクロスとライナスは、エリシャの隠れ家的な店に、翼のペンダントで帰還した。このころには、ライナスも既に店の常連で、みんなのFLでもあったので、これをルーシアから受け取っていた。
☆
ゼクロスとライナスが、エリシャの店に戻ると、1Fのカウンター奥で「おかえりなさい」とルーシアが優しい声で、出迎える。そして、台所から二人分の「クリームコロッケのパン」をもってきて、カウンター席に座る二人に手渡す。
「有難う、ルーシアは優しいね」
ライナスがそれを食べると、サクッとした衣に、トロリとしたクリームが程よく絡み、これもかなりの出来栄えであった。
「魔法のアイテムの製作はもういいのかい?」ゼクロスが聞くと、ルーシアはにこやかに、
「今作れる範囲のは、大体終わりました。GPもあと20万しかないので、大商人のルクバートさんに、幾つか売却しようともおもってます」と答えた。
ゼクロスはエリシャがルーシアに魔法の弓を作ってもらったのを聞いていたので、
「よければ、俺にもなにか、魔法の武器を作ってくれると嬉しいかな。最近、影が薄いんだ」とクセのある金髪を手でかいて言う。
「それなら、既に用意してあります」とルーシアは、ぱたぱたと2階に上がり、一本のロングソードを持って降りてくる。
「「輝く剣」シャインソードです。モンスターに2倍のダメージ特効能力があり、ダンジョンでは明かりがわりにもなります。大事に使ってくださいね」
ゼクロスはルーシアの手を取って、
「有難うルーシア。これで俺もさらに活躍できるよ!」と喜色満面でいい「代わりになにか、礼がしたいな」とルーシアに言う。
ルーシアは「それなら少し、お願いがありますけど、いいですか?」と逆に聞き、ゼクロスが「俺に出来る事ならね」と一応のOKサインを出すと、一つの提案をした。
それは、アイテム売却用の、この店の「2号店」を作ってみませんか?」というものだった…。
☆
やがていつものみんなも、この隠れ家的な店に戻って来て、この話を聞くと、みんなもこの話に肯定的であった。
「たしかに、この店はPTのみんなのたまり場的な場所で、あまり儲けを出す所ではないしな」とクレイドが言うと。
「ドロップアイテムと、ポーション類は、倉庫にかなり余っている。売れる所があるなら、確かに便利だな」ウェルトも乗り気だ。
「店員はこのさい、NPCを雇えばいいわね。GPは少しかかるけど、今なら賃金くらい余裕で払えるわ」とローザも同意。
エリシャはみんなの意見を受けて、高らかに宣言する。
「じゃあ、作っちゃいますか、2号店!」
…こうして、エリシャは「隠れ家」的なロッジ風の店とは他に、アイテム売却用の「2号店」をここセルフィの街に、建てる事となるのであった…。
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