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5話前編:ツインの合成職(前)
しおりを挟む次の日のログイン時、ザラの港町で合流したゼクロス、エリシャ、ローザは、首都セルフィに戻った。
エリシャが、昨日の一件を引きずらないためでもあるが、首都のセルフィ街の方が何をするにも便利だからだ。
「ジェムも沢山はいったし、これを売って、商人のLVも上げられるわね」
とエリシャも幾分、気を取り直しているようで、ゼクロスもローザも少し、安堵した。
メインストーリーを進める予定ではあったが、サブシナリオで、ジェムがだいぶ入ったので、首都に着くと、エリシャは大通りで露店を構えて、ジェムを売りに入った。武具強化に使うジェムは高値で売れるので、売り買いでEXPの入る商人のLVの上げ時では、あったのも確かである。
エリシャがトラブルに巻き込まれないように、にぎわう大通りでのエリシャの露店で脇についていたゼクロスであったが「一人でも大丈夫よ。ローザと狩りでもしてなさい」と言われて、少し心配ではあったが、ローザと一緒に、東門の先にある森エリアに入った。
☆
この森エリアは、それほどきつい緑ではなく、陽光も差して、木々の間には舗装された道もある。ご丁寧に「初心者、熊に注意!」との半ばジョークじみた看板もあり、モンスターもまた一段高いものがでそうではあるが、LV12のパラディンのゼクロスと、LV8のダークナイトのローザは、キャラLV的にはまだまだだが、プレイヤースキルで充分に戦えると、楽観的に踏んでいた。
ゼクロスは、ロングソードにレザーアーマー、ノーマルシールドと、鎧こそ少し心もとないがHPの高いパラディンであり、ローザはソロで入ったGPで買い揃えたバスタードソード(1000G)ブレストプレート(800G)レッグガード(200G)を付けている。
「ねえ、ゼクロス、エリシャを一人にして、本当によかったのかしら?」
懸念を示すローザにゼクロスは、う~ん、と困ったように、クセのある金髪を右手でかいて、
「本人がいいというのに、強引に付いてられないだろ。ジェムが売れるまで、この森で、LV上げしていようぜ」
この言に、ローザも少し乗り気になって、妖艶な顔に不敵な笑みを浮かべて曰く、
「まあ、あなたと二人で組むのも久しぶりだし、一つ、派手に行きましょう」
こうして、二人の、森エリアでの狩りは始まった。
☆
森の脇道、少し粗い舗装のそれを進んでいくと、案の定、熊が現れて、あらかじめ予期していたゼクロスとローザが交戦状態に入る。
先手を取ったのは、ダークナイトのローザであった。
「くらいなさい!」
ローザのバスタードソードが、暗い光を帯び、熊を袈裟斬りにすると、熊は視力を失い、その場で暴れだした。ダークナイトのスキル「暗黒剣」での盲目効果である。ローザはすかさず後ろにステップして間合いを取る。
「暗黒剣での目つぶしか、相変わらず上手いな、ローザ」
ゼクロスはそういい「じゃあ、今度は俺の番だな」と、パラディン10LVで覚えたスキル「パワーチャージ」の態勢に入る。
…「パワーチャージ」はある程度、相手との距離がないと使えない突進技で、さらに外れると大きな隙ができる諸刃の剣的なスキルだが、その威力は、覚えるLVの割にはかなり高い。
「これに耐えられるか?」
目が見えず、回避もままならなない熊に、ゼクロスはロングソードで「パワーチャージ」で特攻した。
これは、見事に命中して、HPの比較的高いはずの熊を、一撃で打ち倒した。黒くなって、かき消える熊。
PTを組んでいる二人に「熊の毛皮」と「熊の肉」がノーマルドロップとして、自動で持ち物欄に入る。
「ノーマルドロップ品も、大分貯まってきたな。素材のままだとほぼ売れないし、どうしたものかな…」
ゼクロスの言に、ローザは反応して曰く、
「何?ゼクロス。まだ合成屋とFLしていないの?それなら、いい子がいるから紹介してあげるわ。その子は鍛冶屋と錬金師のツインクラス。私はソロの時に、その子のヘルプもしていたのよ。あなたが、エリシャにしているのと、少し似てるわね」
「ん、そうなのか、狩りで自動で貯まったアイテムが倉庫を圧迫しているから、それはありがたいな」
ゼクロスは素直に微笑んでそう答えたが、ローザは釘をさすように、
「でも、かなり内気な子だから、あまり無理させちゃ駄目よ?アイテムも一気に渡さずに、少しずつ渡した方が、いいわね。あまり、過度に負担はかけさせたくないから」と付け加えた。
そして、ローザは続けてこうもいう。
「折角だから、もう少し狩ってからその子と合流しましょう。「熊の毛皮」は合成材料にもなるから、きっとその子も喜ぶわ」
「分かった。じゃあもう少し、二人で狩りを楽しもうか」
こうして、熊が現れるごとに、ローザが暗黒剣で、盲目や麻痺を熊に与えて、ゼクロスが「パワーチャージ」で止めを刺す戦法が確立して、さらに5体の熊を倒した二人は、LVも上がった。
ゼクロスはパラディンLV15、ローザはダークナイトLLV12となった。
「ま、こんなところかな。ホーリーナイトのLVはまた今度上げよう」
「私もダークプリーストのLVも上げないとね。とりあえず、そろそろ戻りましょう」
こうして、二人は狩りを楽しみ、ドロップ品も大量に集めて、いたって機嫌良く、首都セルフィに帰還した。
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