ツインクラス・オンライン

秋月愁

文字の大きさ
上 下
5 / 17

5話前編:ツインの合成職(前)

しおりを挟む


 次の日のログイン時、ザラの港町で合流したゼクロス、エリシャ、ローザは、首都セルフィに戻った。

エリシャが、昨日の一件を引きずらないためでもあるが、首都のセルフィ街の方が何をするにも便利だからだ。

「ジェムも沢山はいったし、これを売って、商人のLVも上げられるわね」

とエリシャも幾分、気を取り直しているようで、ゼクロスもローザも少し、安堵した。

メインストーリーを進める予定ではあったが、サブシナリオで、ジェムがだいぶ入ったので、首都に着くと、エリシャは大通りで露店を構えて、ジェムを売りに入った。武具強化に使うジェムは高値で売れるので、売り買いでEXPの入る商人のLVの上げ時では、あったのも確かである。

エリシャがトラブルに巻き込まれないように、にぎわう大通りでのエリシャの露店で脇についていたゼクロスであったが「一人でも大丈夫よ。ローザと狩りでもしてなさい」と言われて、少し心配ではあったが、ローザと一緒に、東門の先にある森エリアに入った。

                    ☆

この森エリアは、それほどきつい緑ではなく、陽光も差して、木々の間には舗装された道もある。ご丁寧に「初心者、熊に注意!」との半ばジョークじみた看板もあり、モンスターもまた一段高いものがでそうではあるが、LV12のパラディンのゼクロスと、LV8のダークナイトのローザは、キャラLV的にはまだまだだが、プレイヤースキルで充分に戦えると、楽観的に踏んでいた。

ゼクロスは、ロングソードにレザーアーマー、ノーマルシールドと、鎧こそ少し心もとないがHPの高いパラディンであり、ローザはソロで入ったGPで買い揃えたバスタードソード(1000G)ブレストプレート(800G)レッグガード(200G)を付けている。

「ねえ、ゼクロス、エリシャを一人にして、本当によかったのかしら?」

懸念を示すローザにゼクロスは、う~ん、と困ったように、クセのある金髪を右手でかいて、

「本人がいいというのに、強引に付いてられないだろ。ジェムが売れるまで、この森で、LV上げしていようぜ」

この言に、ローザも少し乗り気になって、妖艶な顔に不敵な笑みを浮かべて曰く、

「まあ、あなたと二人で組むのも久しぶりだし、一つ、派手に行きましょう」

こうして、二人の、森エリアでの狩りは始まった。

                    ☆

森の脇道、少し粗い舗装のそれを進んでいくと、案の定、熊が現れて、あらかじめ予期していたゼクロスとローザが交戦状態に入る。

先手を取ったのは、ダークナイトのローザであった。

「くらいなさい!」

ローザのバスタードソードが、暗い光を帯び、熊を袈裟斬りにすると、熊は視力を失い、その場で暴れだした。ダークナイトのスキル「暗黒剣」での盲目効果である。ローザはすかさず後ろにステップして間合いを取る。

「暗黒剣での目つぶしか、相変わらず上手いな、ローザ」

ゼクロスはそういい「じゃあ、今度は俺の番だな」と、パラディン10LVで覚えたスキル「パワーチャージ」の態勢に入る。

…「パワーチャージ」はある程度、相手との距離がないと使えない突進技で、さらに外れると大きな隙ができる諸刃の剣的なスキルだが、その威力は、覚えるLVの割にはかなり高い。

「これに耐えられるか?」

目が見えず、回避もままならなない熊に、ゼクロスはロングソードで「パワーチャージ」で特攻した。

これは、見事に命中して、HPの比較的高いはずの熊を、一撃で打ち倒した。黒くなって、かき消える熊。

PTを組んでいる二人に「熊の毛皮」と「熊の肉」がノーマルドロップとして、自動で持ち物欄に入る。

「ノーマルドロップ品も、大分貯まってきたな。素材のままだとほぼ売れないし、どうしたものかな…」

ゼクロスの言に、ローザは反応して曰く、

「何?ゼクロス。まだ合成屋とFLしていないの?それなら、いい子がいるから紹介してあげるわ。その子は鍛冶屋と錬金師のツインクラス。私はソロの時に、その子のヘルプもしていたのよ。あなたが、エリシャにしているのと、少し似てるわね」

「ん、そうなのか、狩りで自動で貯まったアイテムが倉庫を圧迫しているから、それはありがたいな」

ゼクロスは素直に微笑んでそう答えたが、ローザは釘をさすように、

「でも、かなり内気な子だから、あまり無理させちゃ駄目よ?アイテムも一気に渡さずに、少しずつ渡した方が、いいわね。あまり、過度に負担はかけさせたくないから」と付け加えた。

そして、ローザは続けてこうもいう。

「折角だから、もう少し狩ってからその子と合流しましょう。「熊の毛皮」は合成材料にもなるから、きっとその子も喜ぶわ」

「分かった。じゃあもう少し、二人で狩りを楽しもうか」

こうして、熊が現れるごとに、ローザが暗黒剣で、盲目や麻痺を熊に与えて、ゼクロスが「パワーチャージ」で止めを刺す戦法が確立して、さらに5体の熊を倒した二人は、LVも上がった。

ゼクロスはパラディンLV15、ローザはダークナイトLLV12となった。

「ま、こんなところかな。ホーリーナイトのLVはまた今度上げよう」

「私もダークプリーストのLVも上げないとね。とりあえず、そろそろ戻りましょう」

こうして、二人は狩りを楽しみ、ドロップ品も大量に集めて、いたって機嫌良く、首都セルフィに帰還した。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

種族ランダム選んだらレア種族になっただけど!

ダイナマイト
SF
2078年に医療目的でのフルダイブ型のVR機器が発売されてから5年、遂にVRMMOが発売された。触覚 嗅覚 味覚 聴覚 視覚 全てがほぼリアルに再現され、マップの広さは驚きの地球面積の2倍!さらに様々な種族、職業はもちろん、魔法や魔物、剣や生産など、ゲームならではの世界。 色々なプレイヤーやNPCに出会い、そして交流をしてゲームを満喫するお話。 初心者です。誤字脱字が多いと思いますが、頑張ります。

後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~

夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。 多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』 一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。 主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!! 小説家になろうからの転載です。

ドスケベ・オンライン

Merle
SF
エロ要素てんこ盛りの18禁VRMMOで遊んでいるプレイヤーたちのオムニバス。だいたい、タイトル通り。NPCエルフ女子とエッチなポーション作りをする男性PCがいれば、MOB妖精を捕まえてオナホ改造する奴もいる。女性PCもダンジョンに沸くミノタウロスを性的な意味で襲って精液を素材ドロップさせたり、召喚したイケメンNPCと変態プレイする子もいる。他にもTSネカマプレイすることになるのがいたり、ロールプレイをリアルに引き摺りかけるのがいたり……そんな感じのお話。 Artificials meets Naturals.な感じもあったり。

タイムワープ艦隊2024

山本 双六
SF
太平洋を横断する日本機動部隊。この日本があるのは、大東亜(太平洋)戦争に勝利したことである。そんな日本が勝った理由は、ある機動部隊が来たことであるらしい。人呼んで「神の機動部隊」である。 この世界では、太平洋戦争で日本が勝った世界戦で書いています。(毎回、太平洋戦争系が日本ばかり勝っ世界線ですいません)逆ファイナルカウントダウンと考えてもらえればいいかと思います。只今、続編も同時並行で書いています!お楽しみに!

サモナーって不遇職らしいね

7576
SF
世はフルダイブ時代。 人類は労働から解放され日々仮想世界で遊び暮らす理想郷、そんな時代を生きる男は今日も今日とて遊んで暮らす。 男が選んだゲームは『グラディウスマギカ』 ワールドシミュレータとも呼ばれるほど高性能なAIと広大な剣と魔法のファンタジー世界で、より強くなれる装備を求めて冒険するMMORPGゲームだ。 そんな世界で厨二感マシマシの堕天使ネクアムとなって男はのんびりサモナー生活だ。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

処理中です...