ツインクラス・オンライン

秋月愁

文字の大きさ
上 下
3 / 39

3:ゲーマー仲間の新戦力

しおりを挟む


 次の日、リアルで玄人が上機嫌に授業を受けて、さあ昼休みだというときに、ゲーマー仲間の女子、高倉冥子がからんでくる。

この、眼鏡をかけた地味系女子は、

「玄人が上機嫌ってことは、いいゲームがあったんやな?ウチにも教えろ!そして、VRMMOだったらウチも混ぜろ!」

これには、玄人は返答に少し窮した。冥子はゲーム通ではあるが、お調子者で、トラブルメーカーでもあるからだ。

しかし、貴重なゲーマー仲間であるので、かいつまんで事情を話すと、冥子はふむ、と頷いて、

「なるほど、ツインクラスか…。やが、二人では、ストーリー進めるときにきついやろ。しょうがない。ウチが一肌脱いでやろう」

こうして、冥子と「ツインクラス・オンライン」で合流することになった玄人は、帰ってログインしてゼクロスになると、先にエリシャと合流して、この経緯を説明した。

「そうなんだ、ゲーマー仲間の女の子ねえ…。上手いの?その人」

「性格に少し難はあるけど、プレイヤースキルは多分、俺より上だ。キャラが育てば、強力なPT仲間になることは間違いないよ」

そして、冥子のアバター「ローザ」が合流地点、中央公園の噴水前に姿を現す。ネームは事前に聞いていたので、合流は速やかに行われた。

「ローザ」は「ダークナイト」に「ダークプリースト」のクラスを持つ、いわゆる「暗黒系」のキャラで、アバターの外見も、妖艶な美女であった。

艶やかな肩まで届く黒髪に、赤い眼。大人の美人だが、、不敵な笑みを浮かべており、ロールプレイか、しゃべり口調もリアルと異なる。

「私と冒険できるなんて、ラッキーよ、あなたたち。この「ダークプリンセス」(ローザの自称でそんなクラスはこのゲームにはない)が優しくサポートしてあげるわ」

エリシャはゼクロスにウィスパーモードで語り掛けて「本当に大丈夫なの?この人」心配そうに聞き、ゼクロスも返して「戦力としては一流になるよ。性格の方は、根は悪い奴じゃないから、多少は目をつぶってくれ」と答えた。

                    ☆

まずローザは、武器、防具を買いそろえた。

ダークナイトでは「ロングソード」(500G)レザーアーマー(200G)。
ダークプリーストでは、メイス(150G)と黒いローブ(50G)を購入して、残りは初心者ポーションに回した。

…このゲームの「ダークナイト」は剣に状態異常やステータス低下を敵に与える効果を付けることができる。斬るごとに、相手のSTRを下げたり、毒を与えたりするような感じだ。使うごとにMPは要るが、種類が多く、汎用性はやや高めだ。

…「ダークプリースト」は普通に回復魔法も使えるが、闇魔法-黒魔術師に近いもの-も多少使える。
例えば能力上げの「祝福」の代りに、敵に能力減少の「カース」をかけたり、毒を直す「キュア」の代りに毒を与える「ポイズン」が使えたりも、するのだ。

                    ☆

「さあ、狩りに出発しましょう」

ローザが、半ば仕切るように、促す。ゼクロスも、分かっているようで、北の初心者MAPではなく、南門をくぐり、少し強めの敵が出る、平原のMAPに出た。

そして、狩りの時間である。

「せいっ!」

ゼクロスが、ローザに倣って買ったロングソードで、オークに「クロススラッシュ」で斬りつけ、これを瀕死にすると、エリシャがショートボウで鉄の矢を射かけて「エイムショット」で止めを刺す。

ゼクロスが、他のオークの剣で斬りつけられて、HPを減らされると、即座にローザの「ヒール」が飛んで、ゼクロスを全快状態にする。

3人PTなので、EXPの割は少し減るが、専門の回復役がいると、戦闘の手を休めずに戦えるので、ゼクロスもエリシャにも、これはありがたい事であった。

そして、ローザのLVが、ガンガン上がり5LVとなると、ローザはリザードマンを指さして、

「じゃあ、次はあれを倒してみましょうか」と言い出した。

エリシャは、先日苦戦したばかりの敵に、少し尻込みしたが、ゼクロスは何やら悟った風で、

「じゃあ、俺が斬りつけてタゲを取るから、頼むぜ、ローザ」

と、言って、リザードマンに斬りつけた。

「さあ、俺が相手だ!」

「クロススラッシュ」でゼクロスがターゲットを取ると、ローザは闇魔法の「ポイズン」を使った。

紫の泡のようなエフェクトがリザードマンを包み、じりじりと、そのHPが減っていく。

ここで、ゼクロスは守りの態勢「パリィ」に入り、リザードマンの攻撃を寄せ付けない。

結果、毒でHPが0になったリザードマンは、倒れ伏して、黒くなって、かき消えた。

今度はPT全員のLVが、上がる。

ゼクロスは、ふう、と息をついて、ローザに向かって、

「相変わらず、的確な支援で助かるよ」と言ったが、ローザはふふ、と微笑して、

「こちらこそ、有意義な狩りをありがとう、と言っておくわ。ダークナイトのLVは、ソロで上げるつもりだから、しばらくはこのスタイルで同行するわよ」と、返した。

そこで、蚊帳の外であったエリシャは、リザードマンが、何か落としたのを発見した。

それは紅い宝石であった。ゼクロスはそれを見て、

「武具の強化に使うジェムの類のようだな。GPやドロップ品は、自動で持ち物にはいるけど、こういったレアドロップは、その場に残るから、気付かないケースも多いんだ。良く見つけたな、助かるよ」

…こうして、この日の狩りは終わり、ゼクロス達は、セルフィの街に戻った。

この狩りで、ゼクロスはパラディンのLVを12として、ホーリーナイトも7とした。

エリシャもレンジャーを11LVとして、新しいスキルを使えるようになった。

そしてローザは、1LV→7LVに躍進して、ステータス、魔法の類を多く獲得した。

そして、件のジェムだが、売り買いしないと商人のLVが上がらないので、エリシャが露店で5000Gでこれを売りに出して、戦士のプレイヤーが目ざとくそれを買うと、エリシャの商人LVは2→5となった。

一日に、売り買いで稼げるEXPが、商人には決まっているので、エリシャにはこれは有難かった。

で、PTで配分するのだが、エリシャが2000G、ゼクロスとローザが1500Gでの配分となった。

「あら?私がこんなにGPもらっていいの?」とエリシャは多少困惑したが、ローザ曰く、

「PTリーダーはゼクロスになってますけど、これは元々、あなたへのヘルプ系プレイでもありますから、これはこれでいいのよ。一緒にこのゲームをクリアできるよう、キャラ育成、頑張りましょう」

「はい!」

エリシャは素直に笑顔で応えた。

この新戦力「ローザ」の参戦で、PTのLVも程よく上がり、装備も充実してきて、この日は大過ない狩りの時間を過ごした一行であった…。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

現実的理想彼女

kuro-yo
SF
恋人が欲しい男の話。 ※オチはありません。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

獣人の里の仕置き小屋

真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。 獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。 今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。 仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。

Solomon's Gate

坂森大我
SF
 人類が宇宙に拠点を設けてから既に千年が経過していた。地球の衛星軌道上から始まった宇宙開発も火星圏、木星圏を経て今や土星圏にまで及んでいる。  ミハル・エアハルトは木星圏に住む十八歳の専門学校生。彼女の学び舎はセントグラード航宙士学校といい、その名の通りパイロットとなるための学校である。  実技は常に学年トップの成績であったものの、ミハルは最終学年になっても就職活動すらしていなかった。なぜなら彼女は航宙機への興味を失っていたからだ。しかし、強要された航宙機レースへの参加を境にミハルの人生が一変していく。レースにより思い出した。幼き日に覚えた感情。誰よりも航宙機が好きだったことを。  ミハルがパイロットとして歩む決意をした一方で、太陽系は思わぬ事態に発展していた。  主要な宙域となるはずだった土星が突如として消失してしまったのだ。加えて消失痕にはワームホールが出現し、異なる銀河との接続を果たしてしまう。  ワームホールの出現まではまだ看過できた人類。しかし、調査を進めるにつれ望みもしない事実が明らかとなっていく。人類は選択を迫られることになった。  人類にとって最悪のシナリオが現実味を帯びていく。星系の情勢とは少しの接点もなかったミハルだが、巨大な暗雲はいとも容易く彼女を飲み込んでいった。

性転換ウイルス

廣瀬純一
SF
感染すると性転換するウイルスの話

性転換マッサージ

廣瀬純一
SF
性転換マッサージに通う人々の話

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

処理中です...