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3:ゲーマー仲間の新戦力
しおりを挟む次の日、リアルで玄人が上機嫌に授業を受けて、さあ昼休みだというときに、ゲーマー仲間の女子、高倉冥子がからんでくる。
この、眼鏡をかけた地味系女子は、
「玄人が上機嫌ってことは、いいゲームがあったんやな?ウチにも教えろ!そして、VRMMOだったらウチも混ぜろ!」
これには、玄人は返答に少し窮した。冥子はゲーム通ではあるが、お調子者で、トラブルメーカーでもあるからだ。
しかし、貴重なゲーマー仲間であるので、かいつまんで事情を話すと、冥子はふむ、と頷いて、
「なるほど、ツインクラスか…。やが、二人では、ストーリー進めるときにきついやろ。しょうがない。ウチが一肌脱いでやろう」
こうして、冥子と「ツインクラス・オンライン」で合流することになった玄人は、帰ってログインしてゼクロスになると、先にエリシャと合流して、この経緯を説明した。
「そうなんだ、ゲーマー仲間の女の子ねえ…。上手いの?その人」
「性格に少し難はあるけど、プレイヤースキルは多分、俺より上だ。キャラが育てば、強力なPT仲間になることは間違いないよ」
そして、冥子のアバター「ローザ」が合流地点、中央公園の噴水前に姿を現す。ネームは事前に聞いていたので、合流は速やかに行われた。
「ローザ」は「ダークナイト」に「ダークプリースト」のクラスを持つ、いわゆる「暗黒系」のキャラで、アバターの外見も、妖艶な美女であった。
艶やかな肩まで届く黒髪に、赤い眼。大人の美人だが、、不敵な笑みを浮かべており、ロールプレイか、しゃべり口調もリアルと異なる。
「私と冒険できるなんて、ラッキーよ、あなたたち。この「ダークプリンセス」(ローザの自称でそんなクラスはこのゲームにはない)が優しくサポートしてあげるわ」
エリシャはゼクロスにウィスパーモードで語り掛けて「本当に大丈夫なの?この人」心配そうに聞き、ゼクロスも返して「戦力としては一流になるよ。性格の方は、根は悪い奴じゃないから、多少は目をつぶってくれ」と答えた。
☆
まずローザは、武器、防具を買いそろえた。
ダークナイトでは「ロングソード」(500G)レザーアーマー(200G)。
ダークプリーストでは、メイス(150G)と黒いローブ(50G)を購入して、残りは初心者ポーションに回した。
…このゲームの「ダークナイト」は剣に状態異常やステータス低下を敵に与える効果を付けることができる。斬るごとに、相手のSTRを下げたり、毒を与えたりするような感じだ。使うごとにMPは要るが、種類が多く、汎用性はやや高めだ。
…「ダークプリースト」は普通に回復魔法も使えるが、闇魔法-黒魔術師に近いもの-も多少使える。
例えば能力上げの「祝福」の代りに、敵に能力減少の「カース」をかけたり、毒を直す「キュア」の代りに毒を与える「ポイズン」が使えたりも、するのだ。
☆
「さあ、狩りに出発しましょう」
ローザが、半ば仕切るように、促す。ゼクロスも、分かっているようで、北の初心者MAPではなく、南門をくぐり、少し強めの敵が出る、平原のMAPに出た。
そして、狩りの時間である。
「せいっ!」
ゼクロスが、ローザに倣って買ったロングソードで、オークに「クロススラッシュ」で斬りつけ、これを瀕死にすると、エリシャがショートボウで鉄の矢を射かけて「エイムショット」で止めを刺す。
ゼクロスが、他のオークの剣で斬りつけられて、HPを減らされると、即座にローザの「ヒール」が飛んで、ゼクロスを全快状態にする。
3人PTなので、EXPの割は少し減るが、専門の回復役がいると、戦闘の手を休めずに戦えるので、ゼクロスもエリシャにも、これはありがたい事であった。
そして、ローザのLVが、ガンガン上がり5LVとなると、ローザはリザードマンを指さして、
「じゃあ、次はあれを倒してみましょうか」と言い出した。
エリシャは、先日苦戦したばかりの敵に、少し尻込みしたが、ゼクロスは何やら悟った風で、
「じゃあ、俺が斬りつけてタゲを取るから、頼むぜ、ローザ」
と、言って、リザードマンに斬りつけた。
「さあ、俺が相手だ!」
「クロススラッシュ」でゼクロスがターゲットを取ると、ローザは闇魔法の「ポイズン」を使った。
紫の泡のようなエフェクトがリザードマンを包み、じりじりと、そのHPが減っていく。
ここで、ゼクロスは守りの態勢「パリィ」に入り、リザードマンの攻撃を寄せ付けない。
結果、毒でHPが0になったリザードマンは、倒れ伏して、黒くなって、かき消えた。
今度はPT全員のLVが、上がる。
ゼクロスは、ふう、と息をついて、ローザに向かって、
「相変わらず、的確な支援で助かるよ」と言ったが、ローザはふふ、と微笑して、
「こちらこそ、有意義な狩りをありがとう、と言っておくわ。ダークナイトのLVは、ソロで上げるつもりだから、しばらくはこのスタイルで同行するわよ」と、返した。
そこで、蚊帳の外であったエリシャは、リザードマンが、何か落としたのを発見した。
それは紅い宝石であった。ゼクロスはそれを見て、
「武具の強化に使うジェムの類のようだな。GPやドロップ品は、自動で持ち物にはいるけど、こういったレアドロップは、その場に残るから、気付かないケースも多いんだ。良く見つけたな、助かるよ」
…こうして、この日の狩りは終わり、ゼクロス達は、セルフィの街に戻った。
この狩りで、ゼクロスはパラディンのLVを12として、ホーリーナイトも7とした。
エリシャもレンジャーを11LVとして、新しいスキルを使えるようになった。
そしてローザは、1LV→7LVに躍進して、ステータス、魔法の類を多く獲得した。
そして、件のジェムだが、売り買いしないと商人のLVが上がらないので、エリシャが露店で5000Gでこれを売りに出して、戦士のプレイヤーが目ざとくそれを買うと、エリシャの商人LVは2→5となった。
一日に、売り買いで稼げるEXPが、商人には決まっているので、エリシャにはこれは有難かった。
で、PTで配分するのだが、エリシャが2000G、ゼクロスとローザが1500Gでの配分となった。
「あら?私がこんなにGPもらっていいの?」とエリシャは多少困惑したが、ローザ曰く、
「PTリーダーはゼクロスになってますけど、これは元々、あなたへのヘルプ系プレイでもありますから、これはこれでいいのよ。一緒にこのゲームをクリアできるよう、キャラ育成、頑張りましょう」
「はい!」
エリシャは素直に笑顔で応えた。
この新戦力「ローザ」の参戦で、PTのLVも程よく上がり、装備も充実してきて、この日は大過ない狩りの時間を過ごした一行であった…。
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