33 / 43
記録三十三:試練について〜試練一
しおりを挟む
『だ~れ~だ~と~き~い~……
うぇぼっ!げほっ!いかんなぁ…
辞めだ辞め。この喋り方は辛い。
お前は誰だ?』
キノクニは剣を抜き、頭蓋骨を睨みます。
グリモアは恐怖で気絶しています。
『…まさか…貴様…』
「ぬぅ…」
キノクニは剣を奮おうとしました。
しかし…
『志望者か!!?』
「!?」
頭蓋骨は声を弾ませからの眼窩を輝かせます。
『操舵手志望か!ケタケタケタ!
だがこの方向はまずい!
世にも恐ろしい魔族の国だ!!
オイ!リーダー!リーダーは居ないのか!?』
頭蓋骨は青服の海賊リーダーを呼びますが、来るはずがありません。
キノクニは気を取り直し、止めた剣を再び奮おうとしました。
しかし…
『仕方がない奴め!また船に乗り遅れたのか!!
この世知辛い昨今、折角志望者が来たというのに!!
実に仕方がない!
"総員集合"~~~!!』
メキャッ!バキバキバキバキ!!
頭蓋骨が号令を出した瞬間、海賊船の甲板から、おびただしい量の白骨の腕が突き出て来ました。
カタカタと音を立てて這い出てくる様は、地獄絵図です。
『ぷはあああ!
久々の号令だぜえええ!』
『うわーい!
沈まずに済んだよー!』
『ケタケタケタケタ!
ギャハハハハハハ!!』
赤服海賊達が次々と這い出て、最後に青服の海賊リーダーが赤服達を押し退けて出てきました。
『キャプテン!!助かりやしたぜ!
突然船が出ちまいやがって…
オラァアア!
野郎どもぉ!整列だああああ!!!』
『『『ウィーーース!!』』』
ザッ!
海賊達は甲板に、綺麗に整列しました。
先頭の真ん中には、青服リーダーが敬礼して立っています。
『総員、ただ今集合しやした!!』
『ごぉ~くぅ~ろ~…
ゲホゲホェ!!…
宝と食料は?』
『へい!無事全て強奪完了しやした!
いやー、船が出ちまった時はどうしようかと思いやしたぜ…』
『志望者への案内を怠るからだ…』
『へっ?志望者??』
リーダーは、言われて初めて船長の横に立つキノクニに気が付きました。
『…なんだ?テメェは…』
「…私は…」
『まさか…テメェ…』
キノクニは今度こそと、剣を握る手に力を込めます。
しかし…
『新入りかぁ!?野郎どもぉ!
2世紀ぶりの新入りだああああ!!』
『『『うおおおおおおお!!!』』』
リーダーとクルー達は、諸手を上げて大喜びし出してしまいました。
「待て。私は…」
『そうだ。待て。コイツはまだ正式なクルーではない。
まだ志願者止まりだ。
仲間になるには試練を乗り越えねばならない。
それが掟だ。』
違うと言いかけたキノクニの言葉を、キャプテンが違う言葉で遮ってしまいました。
リーダーはキャプテンに向き直り、敬礼します。
『ヘイッ!もちろん心得ておりやす!
オイ、アンタ!名前は!?』
「…」
『恥ずかしがり屋か!まぁいい!
こっちに来い!説明してやる!!
キャプテン!
よろしいでしょうか!?』
『任せた…
万事すんだら、我輩に連絡を。』
ジュワッ!
そう言うと、キャプテンは溶けるように消えてしまいました。
『野郎どもぉ!!取舵一杯!!
残りは掃除だあああ!!』
『『『ウィーーース!!』』』
『よーし、ではオッサン。
こっちに来い!
色々と説明してやろう!』
「…」
キノクニは、とりあえず流れに身を任せる事にし、リーダーに従いました。
何故なら、ここで暴れてしまえば舵輪を破壊してしまう可能性があったからです。
渋々リーダーに付いて行き、船首の方へ移動するキノクニでした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『これからオッサンには大まかに5つの試練を乗り越えてもらう!』
「…それは何だ。」
キノクニは何故受けねばならないんだという意味で尋ねたのですが、リーダーは真逆の意味で捉えます。
『ケタケタケタ…やる気十分だなぁ!
生きが良いのは大歓迎だ!
まぁ、船の上でやる試練は1つしか無え!"イカ狩りの試練"だ!!』
「…」
『ここらの海域にゃあ、大王イカやクラーケン、テンタクルやタコ入道なんかの軟体生物がウヨウヨ生息してやがる!
そして俺たち海賊は、その軟体生物が主食の1つだ!
そこでオッサンにはいずれかの軟体生物を捕獲してきてもらいたい!』
そこへ、掃除のために通りかかったクルーが騒ぎ立てて来ます。
『クラーケンには特殊なコラーゲンがたっぷり含まれていてお肌に良いのよん!あちき、食べるならクラーケンが良いわん!』
『おいどんはたこ焼きが食べたかばい!どうせならタコパやんべタコパ!
タコ入道狩ってくんろ!』
『おれテンタクル!』
『おりゃあスキュラ!!』
いつの間にかクルー達が集まり、口々に注文を飛ばして来ます。
「…」
『だぁりやがれ!!掃除はどうした野郎どもぉ!!!飯抜きにすんぞぉ!』
『『『いやだあああ!』』』
クルー達はリーダーに叱られ、一目散に掃除に戻りました。
『…とまぁこんな風だ。野郎どもは飢えてやがる。
出来るだけ大量に、たくさんの種類を捕まえて来てくれると助かる。
なぁに!小舟を貸してやるから安心しな!』
「…小舟だと?」
『そうだ!しかもキャプテンの呪印入りのな!
船から離れすぎたら近くまで転送してくれる優れもんだぜ!!
だから安心して狩りをしな!
ケタケタケタケタ!』
「…なるほどな…
逃げられんという訳か。」
『そうそう!逃亡も無理だ!
まぁ小舟で逃げようなんざ素っ頓狂は、この船にはいないがな!
無謀も無謀よ!』
キノクニの皮肉も、リーダーには全く通用しません。まさかキノクニが海賊船を強奪しようとした犯人だとは、つゆほども思っていないようです。
そうこうしていると、キノクニは小舟に乗せられてしまいました。
「…むぅ…」
『リミットは1時間だ!1時間経つと自動的に船に戻されるからな!
しっかり獲ってこい!ケタケタケタケタ!
ゴーゴーゴーゴー!!!』
『『『いってらっしゃーい!
頼んだぞー!!』』』
そしてキノクニは、大海のど真ん中に、1人ぽつんと漂っていました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「…以上だ。」
「なんかお前…異常にツイてへんな…
やっぱ日頃の行いか?
なんで海賊船の強盗犯が、海賊志願者になっとんねん。
普通そこまで話ってこじれへんで。」
「知らん…」
「え?てか、もうすぐ1時間経つんとちゃう?獲物狩らんでもええのん?」
「このまま何も獲らずに戻り、追い出される。不毛過ぎるからな。」
「大丈夫か…?十中八九は戦闘になるんとちゃう…?」
「その方が手っ取り早い。どうせ船を使えないのなら、同じことだ。」
「…ま、そらそうか。」
あれから時間は40分ほど経過しています。
キノクニはグリモアに説明し終えると、海面に目をやり、ただただ今後について考えを巡らせていました。
残り10分となった頃でしょうか。
キノクニの耳が、大きな泡音を捉えました。
チャキッ…
ジャララッ…
キノクニは双剣に鎖をかませて構えます。
「何かくる…」
「ふぁあああ…え?」
ボコッ
ボコボコボコボコボコッ…
ザパアアアアアアアン!!!!
「コボロコロオオオオオオオオン!!」
「なんじゃこりゃああああ!!」
「グリモア!鑑定だ!」
「は、はいよおお!」
__________________
名前:大海獣オオボケイカタコ
種別:海獣 Lv.7
数値:攻 9800
:守 5000
:魔 80
:運 960
特性:打撃無効
:水操作
:狂暴化
:強力粘液
:???
説明
イカ、タコ、それぞれの触手と頭、胴
体を持つ海獣。この個体はまだ若く、
その身は煮ても焼いても燻しても非常
に美味である。
__________________
「オオボケイカタコてなんやねん!
聞いたこと無いわ!
打撃は禁物やで!」
「ぬううう!」
イカタコは大津波を起こし、キノクニを沈没させようとします。
キノクニは小舟にしっかりと掴まり、バランスを取って海に落ちないようにしています。
「あああああ揺れるうううぅ…
おぇっぷぅ…」
もしグリモアに胃袋があれば、とっくに胃酸を逆流させていたことでしょう。
キノクニめがけて、巨大な触手が迫ってきます。
「ぬりゃああああ!!」
ジャラララララ!!
キノクニは双剣の一方を他の触手に向けて放ち突き刺すと、その剣の鎖を籠手に巻かせて、フックショットのように飛び移ります。
「ぬん!!」
そして今にも小舟を叩き壊さんとする触手にも剣を放ち、凄まじい腕力でもって、自分に向かって引き寄せます。
びたんっ!!
触手同士がくっつき、粘液を撒き散らしました。
キノクニは他の触手にも同じような作業を繰り返し、動きを封じて行きます。
「ぬん!」
びたんっ!
「でりゃあ!!」
べたんっ!!
「りゃあ!!」
びちんっ!
そして10回もそれを繰り返したところで、全ての触手の動きが止まりました。
「よっしゃ!
邪魔な触手は封じたで!!
いてもうたれ!キノクニ!」
「ぬあああああっ…!!!」
ドンッ!!
キノクニは凄まじい脚力で空を蹴ると、ギュルリと体を前転させ、鎖を伸ばし、丸ノコのような剣閃を描きます。
ジャラララララララララ!!
「ぬえりゃあっ!!!!」
ズパンッ!!
イカタコはそれぞれの頭をそれぞれの双剣によって、縦一文字に切り裂かれました。
「コポォオオオオ…」
ズバシャアアアアン………
内部組織まで深く抉り裂かれたイカタコは即死し、海に突っ伏し、大波を起こしました。
キノクニは丁度下に来ていた小舟にスタリと着地しました。
その時です。
ジュワアアアアアア…
「ぬ。」
「じ、時間や…」
小舟はキノクニを乗せ、溶けるように消えました。
オオボケイカタコも共に。
続きは次回のお楽しみです。
うぇぼっ!げほっ!いかんなぁ…
辞めだ辞め。この喋り方は辛い。
お前は誰だ?』
キノクニは剣を抜き、頭蓋骨を睨みます。
グリモアは恐怖で気絶しています。
『…まさか…貴様…』
「ぬぅ…」
キノクニは剣を奮おうとしました。
しかし…
『志望者か!!?』
「!?」
頭蓋骨は声を弾ませからの眼窩を輝かせます。
『操舵手志望か!ケタケタケタ!
だがこの方向はまずい!
世にも恐ろしい魔族の国だ!!
オイ!リーダー!リーダーは居ないのか!?』
頭蓋骨は青服の海賊リーダーを呼びますが、来るはずがありません。
キノクニは気を取り直し、止めた剣を再び奮おうとしました。
しかし…
『仕方がない奴め!また船に乗り遅れたのか!!
この世知辛い昨今、折角志望者が来たというのに!!
実に仕方がない!
"総員集合"~~~!!』
メキャッ!バキバキバキバキ!!
頭蓋骨が号令を出した瞬間、海賊船の甲板から、おびただしい量の白骨の腕が突き出て来ました。
カタカタと音を立てて這い出てくる様は、地獄絵図です。
『ぷはあああ!
久々の号令だぜえええ!』
『うわーい!
沈まずに済んだよー!』
『ケタケタケタケタ!
ギャハハハハハハ!!』
赤服海賊達が次々と這い出て、最後に青服の海賊リーダーが赤服達を押し退けて出てきました。
『キャプテン!!助かりやしたぜ!
突然船が出ちまいやがって…
オラァアア!
野郎どもぉ!整列だああああ!!!』
『『『ウィーーース!!』』』
ザッ!
海賊達は甲板に、綺麗に整列しました。
先頭の真ん中には、青服リーダーが敬礼して立っています。
『総員、ただ今集合しやした!!』
『ごぉ~くぅ~ろ~…
ゲホゲホェ!!…
宝と食料は?』
『へい!無事全て強奪完了しやした!
いやー、船が出ちまった時はどうしようかと思いやしたぜ…』
『志望者への案内を怠るからだ…』
『へっ?志望者??』
リーダーは、言われて初めて船長の横に立つキノクニに気が付きました。
『…なんだ?テメェは…』
「…私は…」
『まさか…テメェ…』
キノクニは今度こそと、剣を握る手に力を込めます。
しかし…
『新入りかぁ!?野郎どもぉ!
2世紀ぶりの新入りだああああ!!』
『『『うおおおおおおお!!!』』』
リーダーとクルー達は、諸手を上げて大喜びし出してしまいました。
「待て。私は…」
『そうだ。待て。コイツはまだ正式なクルーではない。
まだ志願者止まりだ。
仲間になるには試練を乗り越えねばならない。
それが掟だ。』
違うと言いかけたキノクニの言葉を、キャプテンが違う言葉で遮ってしまいました。
リーダーはキャプテンに向き直り、敬礼します。
『ヘイッ!もちろん心得ておりやす!
オイ、アンタ!名前は!?』
「…」
『恥ずかしがり屋か!まぁいい!
こっちに来い!説明してやる!!
キャプテン!
よろしいでしょうか!?』
『任せた…
万事すんだら、我輩に連絡を。』
ジュワッ!
そう言うと、キャプテンは溶けるように消えてしまいました。
『野郎どもぉ!!取舵一杯!!
残りは掃除だあああ!!』
『『『ウィーーース!!』』』
『よーし、ではオッサン。
こっちに来い!
色々と説明してやろう!』
「…」
キノクニは、とりあえず流れに身を任せる事にし、リーダーに従いました。
何故なら、ここで暴れてしまえば舵輪を破壊してしまう可能性があったからです。
渋々リーダーに付いて行き、船首の方へ移動するキノクニでした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『これからオッサンには大まかに5つの試練を乗り越えてもらう!』
「…それは何だ。」
キノクニは何故受けねばならないんだという意味で尋ねたのですが、リーダーは真逆の意味で捉えます。
『ケタケタケタ…やる気十分だなぁ!
生きが良いのは大歓迎だ!
まぁ、船の上でやる試練は1つしか無え!"イカ狩りの試練"だ!!』
「…」
『ここらの海域にゃあ、大王イカやクラーケン、テンタクルやタコ入道なんかの軟体生物がウヨウヨ生息してやがる!
そして俺たち海賊は、その軟体生物が主食の1つだ!
そこでオッサンにはいずれかの軟体生物を捕獲してきてもらいたい!』
そこへ、掃除のために通りかかったクルーが騒ぎ立てて来ます。
『クラーケンには特殊なコラーゲンがたっぷり含まれていてお肌に良いのよん!あちき、食べるならクラーケンが良いわん!』
『おいどんはたこ焼きが食べたかばい!どうせならタコパやんべタコパ!
タコ入道狩ってくんろ!』
『おれテンタクル!』
『おりゃあスキュラ!!』
いつの間にかクルー達が集まり、口々に注文を飛ばして来ます。
「…」
『だぁりやがれ!!掃除はどうした野郎どもぉ!!!飯抜きにすんぞぉ!』
『『『いやだあああ!』』』
クルー達はリーダーに叱られ、一目散に掃除に戻りました。
『…とまぁこんな風だ。野郎どもは飢えてやがる。
出来るだけ大量に、たくさんの種類を捕まえて来てくれると助かる。
なぁに!小舟を貸してやるから安心しな!』
「…小舟だと?」
『そうだ!しかもキャプテンの呪印入りのな!
船から離れすぎたら近くまで転送してくれる優れもんだぜ!!
だから安心して狩りをしな!
ケタケタケタケタ!』
「…なるほどな…
逃げられんという訳か。」
『そうそう!逃亡も無理だ!
まぁ小舟で逃げようなんざ素っ頓狂は、この船にはいないがな!
無謀も無謀よ!』
キノクニの皮肉も、リーダーには全く通用しません。まさかキノクニが海賊船を強奪しようとした犯人だとは、つゆほども思っていないようです。
そうこうしていると、キノクニは小舟に乗せられてしまいました。
「…むぅ…」
『リミットは1時間だ!1時間経つと自動的に船に戻されるからな!
しっかり獲ってこい!ケタケタケタケタ!
ゴーゴーゴーゴー!!!』
『『『いってらっしゃーい!
頼んだぞー!!』』』
そしてキノクニは、大海のど真ん中に、1人ぽつんと漂っていました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「…以上だ。」
「なんかお前…異常にツイてへんな…
やっぱ日頃の行いか?
なんで海賊船の強盗犯が、海賊志願者になっとんねん。
普通そこまで話ってこじれへんで。」
「知らん…」
「え?てか、もうすぐ1時間経つんとちゃう?獲物狩らんでもええのん?」
「このまま何も獲らずに戻り、追い出される。不毛過ぎるからな。」
「大丈夫か…?十中八九は戦闘になるんとちゃう…?」
「その方が手っ取り早い。どうせ船を使えないのなら、同じことだ。」
「…ま、そらそうか。」
あれから時間は40分ほど経過しています。
キノクニはグリモアに説明し終えると、海面に目をやり、ただただ今後について考えを巡らせていました。
残り10分となった頃でしょうか。
キノクニの耳が、大きな泡音を捉えました。
チャキッ…
ジャララッ…
キノクニは双剣に鎖をかませて構えます。
「何かくる…」
「ふぁあああ…え?」
ボコッ
ボコボコボコボコボコッ…
ザパアアアアアアアン!!!!
「コボロコロオオオオオオオオン!!」
「なんじゃこりゃああああ!!」
「グリモア!鑑定だ!」
「は、はいよおお!」
__________________
名前:大海獣オオボケイカタコ
種別:海獣 Lv.7
数値:攻 9800
:守 5000
:魔 80
:運 960
特性:打撃無効
:水操作
:狂暴化
:強力粘液
:???
説明
イカ、タコ、それぞれの触手と頭、胴
体を持つ海獣。この個体はまだ若く、
その身は煮ても焼いても燻しても非常
に美味である。
__________________
「オオボケイカタコてなんやねん!
聞いたこと無いわ!
打撃は禁物やで!」
「ぬううう!」
イカタコは大津波を起こし、キノクニを沈没させようとします。
キノクニは小舟にしっかりと掴まり、バランスを取って海に落ちないようにしています。
「あああああ揺れるうううぅ…
おぇっぷぅ…」
もしグリモアに胃袋があれば、とっくに胃酸を逆流させていたことでしょう。
キノクニめがけて、巨大な触手が迫ってきます。
「ぬりゃああああ!!」
ジャラララララ!!
キノクニは双剣の一方を他の触手に向けて放ち突き刺すと、その剣の鎖を籠手に巻かせて、フックショットのように飛び移ります。
「ぬん!!」
そして今にも小舟を叩き壊さんとする触手にも剣を放ち、凄まじい腕力でもって、自分に向かって引き寄せます。
びたんっ!!
触手同士がくっつき、粘液を撒き散らしました。
キノクニは他の触手にも同じような作業を繰り返し、動きを封じて行きます。
「ぬん!」
びたんっ!
「でりゃあ!!」
べたんっ!!
「りゃあ!!」
びちんっ!
そして10回もそれを繰り返したところで、全ての触手の動きが止まりました。
「よっしゃ!
邪魔な触手は封じたで!!
いてもうたれ!キノクニ!」
「ぬあああああっ…!!!」
ドンッ!!
キノクニは凄まじい脚力で空を蹴ると、ギュルリと体を前転させ、鎖を伸ばし、丸ノコのような剣閃を描きます。
ジャラララララララララ!!
「ぬえりゃあっ!!!!」
ズパンッ!!
イカタコはそれぞれの頭をそれぞれの双剣によって、縦一文字に切り裂かれました。
「コポォオオオオ…」
ズバシャアアアアン………
内部組織まで深く抉り裂かれたイカタコは即死し、海に突っ伏し、大波を起こしました。
キノクニは丁度下に来ていた小舟にスタリと着地しました。
その時です。
ジュワアアアアアア…
「ぬ。」
「じ、時間や…」
小舟はキノクニを乗せ、溶けるように消えました。
オオボケイカタコも共に。
続きは次回のお楽しみです。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
召喚アラサー女~ 自由に生きています!
マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。
牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子
信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。
初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった
***
異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います
かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
【完結】王太子妃の初恋
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
カテリーナは王太子妃。しかし、政略のための結婚でアレクサンドル王太子からは嫌われている。
王太子が側妃を娶ったため、カテリーナはお役御免とばかりに王宮の外れにある森の中の宮殿に追いやられてしまう。
しかし、カテリーナはちょうど良かったと思っていた。婚約者時代からの激務で目が悪くなっていて、これ以上は公務も社交も難しいと考えていたからだ。
そんなカテリーナが湖畔で一人の男に出会い、恋をするまでとその後。
★ざまぁはありません。
全話予約投稿済。
携帯投稿のため誤字脱字多くて申し訳ありません。
報告ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる