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記録二十五:愚者達の動向〜死闘
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「…以上が報告です。
件の顔無しは顔無しにあらず。
白金貨1000枚の報酬も、捕縛指令も、お取り下げ願います。」
「誠か。そちの言う事だ…間違いはなかろうが…」
「…誠でございます。」
「…了承した。
直ちに取り消させよう。」
ギルド長、エドガードは一礼すると謁見の間を後にします。
長く広い城内を歩き、城門をくぐって外に出た時には、すでに30分ほど時間が経ってしまいました。
「よー!時間かかったなあ!
お疲れさん!」
「疲れた…ギルド長なんざ、なるもんじゃないな…」
「がっはっはっ!ギルド長にしか謁見の権利は無いからな!
名誉なことだぜ!」
「…ふう。それで、キノクニ君は?」
「見つかんねぇなぁ…ルークの馬鹿小僧は指名手配が解かれたら消えやがるし…
どうも不穏だぜ…」
「職員総出で捜索しろ…もう手遅れかも知れんがな…」
エドガードは眉間のシワを深くし、オルドガに言いました。
時刻は18時、キノクニが斧を取り戻した、まさにその時の出来事でした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「なんなんだよこれ…」
ルークは驚愕し、混乱していました。
突然気持ち悪くなり、倒れ、目が覚めてみるとゼドがいません。
廊下からは血の匂いがして、様子を見に行ってみると手下が首を千切られ、血や糞尿、脳漿など、あらゆる体液を垂れ流して死んでいます。
「くそっ!くそぉ!アイツだ!アイツが来やがったんだ!畜生め!!…ふー…ふー…はっ…落ち着け。
僕は強い。SSS級冒険者だ。あんな旅人風情に…」
ルークの頭に記憶が蘇ります。
タツノオ平原でキノクニにめり込まされた記憶…
ルークは頭を振って、それを払います。
「…そうさ……あれは何かの間違いさ…
僕が負けるはずない…
ロイド!ロイドはいるかー?!」
ルークは屋敷を歩き回り、同郷の部下で唯一信頼しているロイドを探します。
やがてルークは、地下鍛治部屋に辿り着きました。
そこは嵐でも通り過ぎたのかと思うくらいに滅茶苦茶で、ズタズタに破壊されていました。
「…はは…まさか…ロイド……
なぁ…ロイド!」
そしてルークは見つけてしまいます。
捻り切られた首を。
離れ離れになった、頭と胴体を。
甲冑をつけたまま転がる、ロイドの生首を。
「うそ…だ……こんな……」
ルークの中を悲しみと憎しみと怒りと絶望が埋め尽くしていきます。
目は濁り、脂汗がしたたり、頭が熱を持ち、冷静さなどは露ほどもありません。
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!!」
ルークはただただ喚きちらし、地団駄を踏みまくりました。
「…うそだ……うぅっ…」
ルークはうつむき、震えつつも、気配察知を発動し、周囲を伺います。
部屋の奥に何かがいます。
そこでルークは思い出しました。
___この部屋でロイドは爺さんを拷問していた…___
ルークの中に、復讐の黒い雨が吹き荒れます。
「ふふふふ…ははははは!……奴がやるなら……僕だってやってやる…
…これは…正当な権利だ!!!」
キュイーン…
ルークは光の矢を作り出すと、奥の老人であろう何かに、狙いを定めます。
「……死ね!」
ピュン!
光の矢が、ついに放たれたその時です。
「所詮貴様はその程度か。」
ガバッ!カキィン!!
キノクニが起き上がり、光の矢を弾いたのです。
横たわっていたのは、キノクニでした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
時間は少し遡ります。
ルークを倒そうと、地下鍛治部屋を飛び出したキノクニでしたが、1つだけ懸念がありました。
ルークの気配察知です。
___暗殺しようにも、もし気配察知を使われれば、反撃されてしまうかもしれない。___
___反撃されるならまだいいが、厄介なのは逃げられるかもしれないことだ。___
そう考えたキノクニは、一旦ガンマの下へ戻り、ガンマを抱え中庭のゼドと同じ茂みに隠すと、ただの布を被って鍛治部屋の奥に横たわり、ガンマの身代わりとなりました。
作戦は見事に大成功です。
ルークは矢を放って来ました。
十分に引きつけることができたのです。
「お前はっ…なぜそこに……!!」
「貴様ならば十中八九は腹いせに鍛治師を殺そうとするだろうと考えた。
だから鍛治師を移し、私がここに潜んでいたのだ。
貴様に気配を悟られ、逃げられるのは面倒なのでな。」
キノクニはそういうと、双剣を構えます。
「…逃げる…だと?ははっ…僕が逃げるわけないじゃないか……
お前を殺してやる!!!」
ルークは怒りに顔を歪ませ、体の周りに多数の光の矢を作り出します。
「僕の"光魔法"をなめるなよ?!お前なんか一撃だ!!」
「当たればな。」
ピュン!ピュンピュンピュン!
矢はキノクニに連射されます。
カキン!カキキキン!
しかしキノクニは、まるで舞でも踊るかの如く、双剣を華麗に奮い、光の矢を寄せ付けません。
「くそっ!くそぉ!くそおおお!!」
ルークは闇雲に矢を作り、撃ち続けますが、焼け石に水です。
キノクニは双剣で弾きつつ、どんどんルークに近付いていきます。
「なんだよ!!なんなんだよお前はぁ!!」
「貴様も言っていた通り、ただの旅人だ。」
カキィン!!
いよいよ最後の矢を弾かれ、ルークにはもう何も残っていません。
武器も、新たな矢を作る魔力も。
「そんな…こんなはずじゃ……」
「人は皆そう言って死んで行く。
貴様は己が行動に、もっと責任を持つべきだった。」
キノクニが右手に持つ剣を振り上げたその瞬間です。
___絶望しきったぁ!これなら移れる!!___
ルークに何かが入りました。
ルークを消し去る何かが。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その者はずっと見ていました。
首だけになりながらも。
転がりながらも。
ただ見ていました。
光を使う人間….ルークを。
正確には、ずっと昔から見ていました。
ロイドというガキの体を乗っ取った時から。
遊んでいる時も学んでいる時も学校にいる時もルークが1人の時も…
ロイドの中にいるそれは、
ロイドだと思っていたそれは、
ずっとルークを見ていたのです。
心が絶望に満ちる、その瞬間を待ち侘びて。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ガギィイ………ン!!
キノクニがルークの首目掛けて振り下ろした剣はしかし、光の剣に防がれていました。
「……ぬぅ……」
ギリギリギリィ!ギチギチギチッ…!
「こらアカンでキノクニ…」
「変わった…?」
うつむいていたルークは、ガバリと顔を上げました。満面の笑みで。
「ばあ!」
その瞬間、光が地下鍛治部屋で炸裂し…
眩すぎる光に、何も見えなくなってしまいました。
「ククククク!!ヒャハハハハハ!!ヒーヒヒヒヒヒ!!!
感謝するぜ旅人さんよぉ!お前のお陰で最高の力を手に入れたぁ!!
ヒャハハハハハ!!」
光の爆発の中から笑い声が響きます。
不快にくぐもったその低い声は、紛れもなくロイドの声でした。
「くっ…目が利かん…!」
「前方!光の矢多数!」
「むっ…ぬりゃあ!!」
ガギギギギギン!!
キノクニは目が眩んでいましたが、グリモアの助言でなんとか攻撃を防ぎます。
「上方と後方!光の剣2発ずつ!!」
キノクニは床を思い切り蹴り、跳躍すると光の剣をスレスレで避け、空中で双剣を掴む鎖を伸ばします。
ジャララララララ!
しかし、何かに当たった手応えはありません。
「敵はどこだ!グリモア!」
「あかんねん!アイツ、ピュンピュンと光みたいに移動しとる!
捉えられへんねん!」
ロイドだった者は、光の魔法を自在に使い、空中、床を所狭しと飛び回っていました。
まるで遊ぶかのように。
「ヒャハハハハハ!ヒーヒヒヒヒヒ!ククククク!」
その顔は、狂気の笑みで歪み切っています。
「さあさあさあさあさあさあ!どうした旅人!!?さっきみたいに俺様の首、千切ってみろよ?!
ヒャハハハハハ!!」
「くっ!キノクニ!まだ目は戻らへんのか!?」
「戻らぬ!!
戻ったとしても目は開けん!!
お前が見るのだ!」
「んな無茶なっ…あああ!斜め前!凄まじい突進!!」
「ぬああっ!!」
ガギィン!!
ガギギギギギギギギギギ
ギャイン!
キノクニは双剣を交叉させ、なんとか防ぎます。
しかし、ロイドだった者は、押し込めないと見切りをつけるや否や、すぐさま離脱します。
「ヒャハハハハハ!可笑しいなぁ?!目は見えて無えはずだが!!
なんかカラクリがあんのかぁ!?」
ロイドだった者は、ただの戦闘狂では無く、敵の力を冷静に分析する頭脳も持っていました。
「このままでは時期にバレる!!
早く見切るのだ!!」
「くっ…
なんか無いかなんか無いか…」
その時、グリモアの頭に、いつかキノクニが言った言葉が思い出されます。
___自分にできることを全力でやれ。___
「…それや!鑑定!!」
グリモアはすぐさま敵を鑑定しました。
キノクニの閉じた目に、情報が映ります。
__________________
名前:イルファ・ゾルゾド
性別:男
種別:魔族 Lv.8
数値:攻 6800
:守 2100
:魔 8000
:運 80
職業:殺戮者
技能:光魔法 Lv.7
:移魂
:痛覚一定遮断
説明
はぐれ魔族。数々の生物の体を乗っ取
って生きてきた、経験豊富な個体。
光魔法を長年追い求め、完璧なシュミ
レーションにより、元の持ち主よりも
光魔法を上手く扱う。魂を消し去らね
ば、殺せない。
__________________
鑑定レベルが上がり、以前より多くの個人情報が見られました。
「これは…奴か?!」
情報はヒュンヒュンと動き回っています。
「今、鑑定結果の座標を敵指定にしたで!
これなら奴がどこにおるか、目を閉じとっても分かるやろ!!」
「でかした!グリモア!!」
ヒュンヒュンと動く情報は、次第に近づいてきます。
「前方光の矢!上方光の剣!」
グリモアは鑑定結果を示しつつも、攻撃が来る方を指示します。
そして…
「ヒャハハハハハー!!!」
「ぬぅうん!!!」
ジャラララララ
ズパアアアアンッ!!!
ついにキノクニは魔族・イルファを捉え、胴体を真横一文字に斬り裂きました。
続きは次回のお楽しみです。
件の顔無しは顔無しにあらず。
白金貨1000枚の報酬も、捕縛指令も、お取り下げ願います。」
「誠か。そちの言う事だ…間違いはなかろうが…」
「…誠でございます。」
「…了承した。
直ちに取り消させよう。」
ギルド長、エドガードは一礼すると謁見の間を後にします。
長く広い城内を歩き、城門をくぐって外に出た時には、すでに30分ほど時間が経ってしまいました。
「よー!時間かかったなあ!
お疲れさん!」
「疲れた…ギルド長なんざ、なるもんじゃないな…」
「がっはっはっ!ギルド長にしか謁見の権利は無いからな!
名誉なことだぜ!」
「…ふう。それで、キノクニ君は?」
「見つかんねぇなぁ…ルークの馬鹿小僧は指名手配が解かれたら消えやがるし…
どうも不穏だぜ…」
「職員総出で捜索しろ…もう手遅れかも知れんがな…」
エドガードは眉間のシワを深くし、オルドガに言いました。
時刻は18時、キノクニが斧を取り戻した、まさにその時の出来事でした。
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「なんなんだよこれ…」
ルークは驚愕し、混乱していました。
突然気持ち悪くなり、倒れ、目が覚めてみるとゼドがいません。
廊下からは血の匂いがして、様子を見に行ってみると手下が首を千切られ、血や糞尿、脳漿など、あらゆる体液を垂れ流して死んでいます。
「くそっ!くそぉ!アイツだ!アイツが来やがったんだ!畜生め!!…ふー…ふー…はっ…落ち着け。
僕は強い。SSS級冒険者だ。あんな旅人風情に…」
ルークの頭に記憶が蘇ります。
タツノオ平原でキノクニにめり込まされた記憶…
ルークは頭を振って、それを払います。
「…そうさ……あれは何かの間違いさ…
僕が負けるはずない…
ロイド!ロイドはいるかー?!」
ルークは屋敷を歩き回り、同郷の部下で唯一信頼しているロイドを探します。
やがてルークは、地下鍛治部屋に辿り着きました。
そこは嵐でも通り過ぎたのかと思うくらいに滅茶苦茶で、ズタズタに破壊されていました。
「…はは…まさか…ロイド……
なぁ…ロイド!」
そしてルークは見つけてしまいます。
捻り切られた首を。
離れ離れになった、頭と胴体を。
甲冑をつけたまま転がる、ロイドの生首を。
「うそ…だ……こんな……」
ルークの中を悲しみと憎しみと怒りと絶望が埋め尽くしていきます。
目は濁り、脂汗がしたたり、頭が熱を持ち、冷静さなどは露ほどもありません。
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!!」
ルークはただただ喚きちらし、地団駄を踏みまくりました。
「…うそだ……うぅっ…」
ルークはうつむき、震えつつも、気配察知を発動し、周囲を伺います。
部屋の奥に何かがいます。
そこでルークは思い出しました。
___この部屋でロイドは爺さんを拷問していた…___
ルークの中に、復讐の黒い雨が吹き荒れます。
「ふふふふ…ははははは!……奴がやるなら……僕だってやってやる…
…これは…正当な権利だ!!!」
キュイーン…
ルークは光の矢を作り出すと、奥の老人であろう何かに、狙いを定めます。
「……死ね!」
ピュン!
光の矢が、ついに放たれたその時です。
「所詮貴様はその程度か。」
ガバッ!カキィン!!
キノクニが起き上がり、光の矢を弾いたのです。
横たわっていたのは、キノクニでした。
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時間は少し遡ります。
ルークを倒そうと、地下鍛治部屋を飛び出したキノクニでしたが、1つだけ懸念がありました。
ルークの気配察知です。
___暗殺しようにも、もし気配察知を使われれば、反撃されてしまうかもしれない。___
___反撃されるならまだいいが、厄介なのは逃げられるかもしれないことだ。___
そう考えたキノクニは、一旦ガンマの下へ戻り、ガンマを抱え中庭のゼドと同じ茂みに隠すと、ただの布を被って鍛治部屋の奥に横たわり、ガンマの身代わりとなりました。
作戦は見事に大成功です。
ルークは矢を放って来ました。
十分に引きつけることができたのです。
「お前はっ…なぜそこに……!!」
「貴様ならば十中八九は腹いせに鍛治師を殺そうとするだろうと考えた。
だから鍛治師を移し、私がここに潜んでいたのだ。
貴様に気配を悟られ、逃げられるのは面倒なのでな。」
キノクニはそういうと、双剣を構えます。
「…逃げる…だと?ははっ…僕が逃げるわけないじゃないか……
お前を殺してやる!!!」
ルークは怒りに顔を歪ませ、体の周りに多数の光の矢を作り出します。
「僕の"光魔法"をなめるなよ?!お前なんか一撃だ!!」
「当たればな。」
ピュン!ピュンピュンピュン!
矢はキノクニに連射されます。
カキン!カキキキン!
しかしキノクニは、まるで舞でも踊るかの如く、双剣を華麗に奮い、光の矢を寄せ付けません。
「くそっ!くそぉ!くそおおお!!」
ルークは闇雲に矢を作り、撃ち続けますが、焼け石に水です。
キノクニは双剣で弾きつつ、どんどんルークに近付いていきます。
「なんだよ!!なんなんだよお前はぁ!!」
「貴様も言っていた通り、ただの旅人だ。」
カキィン!!
いよいよ最後の矢を弾かれ、ルークにはもう何も残っていません。
武器も、新たな矢を作る魔力も。
「そんな…こんなはずじゃ……」
「人は皆そう言って死んで行く。
貴様は己が行動に、もっと責任を持つべきだった。」
キノクニが右手に持つ剣を振り上げたその瞬間です。
___絶望しきったぁ!これなら移れる!!___
ルークに何かが入りました。
ルークを消し去る何かが。
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その者はずっと見ていました。
首だけになりながらも。
転がりながらも。
ただ見ていました。
光を使う人間….ルークを。
正確には、ずっと昔から見ていました。
ロイドというガキの体を乗っ取った時から。
遊んでいる時も学んでいる時も学校にいる時もルークが1人の時も…
ロイドの中にいるそれは、
ロイドだと思っていたそれは、
ずっとルークを見ていたのです。
心が絶望に満ちる、その瞬間を待ち侘びて。
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ガギィイ………ン!!
キノクニがルークの首目掛けて振り下ろした剣はしかし、光の剣に防がれていました。
「……ぬぅ……」
ギリギリギリィ!ギチギチギチッ…!
「こらアカンでキノクニ…」
「変わった…?」
うつむいていたルークは、ガバリと顔を上げました。満面の笑みで。
「ばあ!」
その瞬間、光が地下鍛治部屋で炸裂し…
眩すぎる光に、何も見えなくなってしまいました。
「ククククク!!ヒャハハハハハ!!ヒーヒヒヒヒヒ!!!
感謝するぜ旅人さんよぉ!お前のお陰で最高の力を手に入れたぁ!!
ヒャハハハハハ!!」
光の爆発の中から笑い声が響きます。
不快にくぐもったその低い声は、紛れもなくロイドの声でした。
「くっ…目が利かん…!」
「前方!光の矢多数!」
「むっ…ぬりゃあ!!」
ガギギギギギン!!
キノクニは目が眩んでいましたが、グリモアの助言でなんとか攻撃を防ぎます。
「上方と後方!光の剣2発ずつ!!」
キノクニは床を思い切り蹴り、跳躍すると光の剣をスレスレで避け、空中で双剣を掴む鎖を伸ばします。
ジャララララララ!
しかし、何かに当たった手応えはありません。
「敵はどこだ!グリモア!」
「あかんねん!アイツ、ピュンピュンと光みたいに移動しとる!
捉えられへんねん!」
ロイドだった者は、光の魔法を自在に使い、空中、床を所狭しと飛び回っていました。
まるで遊ぶかのように。
「ヒャハハハハハ!ヒーヒヒヒヒヒ!ククククク!」
その顔は、狂気の笑みで歪み切っています。
「さあさあさあさあさあさあ!どうした旅人!!?さっきみたいに俺様の首、千切ってみろよ?!
ヒャハハハハハ!!」
「くっ!キノクニ!まだ目は戻らへんのか!?」
「戻らぬ!!
戻ったとしても目は開けん!!
お前が見るのだ!」
「んな無茶なっ…あああ!斜め前!凄まじい突進!!」
「ぬああっ!!」
ガギィン!!
ガギギギギギギギギギギ
ギャイン!
キノクニは双剣を交叉させ、なんとか防ぎます。
しかし、ロイドだった者は、押し込めないと見切りをつけるや否や、すぐさま離脱します。
「ヒャハハハハハ!可笑しいなぁ?!目は見えて無えはずだが!!
なんかカラクリがあんのかぁ!?」
ロイドだった者は、ただの戦闘狂では無く、敵の力を冷静に分析する頭脳も持っていました。
「このままでは時期にバレる!!
早く見切るのだ!!」
「くっ…
なんか無いかなんか無いか…」
その時、グリモアの頭に、いつかキノクニが言った言葉が思い出されます。
___自分にできることを全力でやれ。___
「…それや!鑑定!!」
グリモアはすぐさま敵を鑑定しました。
キノクニの閉じた目に、情報が映ります。
__________________
名前:イルファ・ゾルゾド
性別:男
種別:魔族 Lv.8
数値:攻 6800
:守 2100
:魔 8000
:運 80
職業:殺戮者
技能:光魔法 Lv.7
:移魂
:痛覚一定遮断
説明
はぐれ魔族。数々の生物の体を乗っ取
って生きてきた、経験豊富な個体。
光魔法を長年追い求め、完璧なシュミ
レーションにより、元の持ち主よりも
光魔法を上手く扱う。魂を消し去らね
ば、殺せない。
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鑑定レベルが上がり、以前より多くの個人情報が見られました。
「これは…奴か?!」
情報はヒュンヒュンと動き回っています。
「今、鑑定結果の座標を敵指定にしたで!
これなら奴がどこにおるか、目を閉じとっても分かるやろ!!」
「でかした!グリモア!!」
ヒュンヒュンと動く情報は、次第に近づいてきます。
「前方光の矢!上方光の剣!」
グリモアは鑑定結果を示しつつも、攻撃が来る方を指示します。
そして…
「ヒャハハハハハー!!!」
「ぬぅうん!!!」
ジャラララララ
ズパアアアアンッ!!!
ついにキノクニは魔族・イルファを捉え、胴体を真横一文字に斬り裂きました。
続きは次回のお楽しみです。
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