ハデスが転生したそうデス〜前世の仇を殺す為なら、今世の神すら殺しマス〜

第29章:死の死デス

　我輩の胸に突き刺さった剣は、我輩の力を吸い取っていく。

　『何者…だ…！？』

　「俺は…お前を殺す者だ！！」

　『そうか…来い。』

　襲撃者の足元に亡者どもを召喚し、襲撃返しを仕掛ける。

　「無駄だ！！」

　しかし、亡者どもは襲撃者に触れる事叶わず、端から溶けて消えてゆく。

　「俺は光の加護に守られている！
　お前の力は通用しないぞ！！」

　『…ふん…ならば……これはどうだ？』

　我輩は手中に門を作り出し、奴を召喚する。

　『っひゃああああ！？
　何故わしなのじゃああああ！！？』

　「？！」

　襲撃者は咄嗟に剣を引き抜き、我輩から距離を取る。

　むう…折角この世に来て、ほぼ力が回復していたと言うのに…

　8割ほど奪われた。憎たらしいガキめ…

　「くそっ…老人を投げつけるなんて卑怯だぞ！！」

　『いきなり背後から剣を刺す方がよほど卑怯だと思うがな。
　…チッ……』

　魂が綻び始めた。

　原型を保てず、やむなく球状になる。

　『貴様の目的はなんだ？
　か弱き我輩の力を奪うことか？
　神に成り代わろうというのか？』

　「俺の目的はお前を殺すことだ！！
　死神め！！！」

　『我輩は死の神だ…死を支配する王。
　死神などという、ありふれた異形では無い！！』

　「うるさい！！"カミコロシ"！！」

　襲撃者が剣を横薙ぎに振り払うと、そこから金色の蛇が現れ、我輩に襲いかかってきた。
 
　アレか。我輩の力を奪った者は。

　我輩はバイデントを操り、目の前で回転させ、蛇を受け止める。

　「大人しく死ね！！死神め！！」

　ギュルギュルギュルギュルギュル…！！

　今は勢いよく回転しているバイデントだが、どうやら我が槍の力も吸い取られつつある。

　我輩にあの蛇が当たるのも、時間の問題だ。

　『なんなのだ…！！
　あの剣…あの蛇は……！！？』

　「これは神様から賜りし"カミコロシ"！！異界の神様がお前を殺すために授けてくださったんだ！！」

　『異界の…神だと……！！？』

　ビキビキとバイデントが悲鳴をあげる。

　我輩は迫り来る蛇をまじまじと見る。

　あれは……あの見覚えのある黄金色は……

　『そうか…貴様かゼウス！！！』

　元世だけでは飽き足らず、今世でも我輩を殺すということか！！！

　『ぐっ……！？？』

　我輩の足元から、槍の防御を掻い潜った黄金色が這い上がってくる。

　『フッ……フハハハハハ！！！！
　ゼウスよ！！これが貴様のやり方か！
　我輩を永久に殺し続けるつもりか！！神殺しの愚神よ！！』

　その問いに誰も答えない。

　『我輩は死なぬ…貴様に思い知らせるまでは！！
　死は無くならぬぞゼウス！！』

　バキィィィン………。

　そして。

　バイデントは砕け散り、黄金の蛇に正面から呑み込まれ…

　我輩は完全に力を奪い尽くされて。

　この世からも消えるのだった。