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5!追い立てられる令嬢
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ハンナは屋敷から続く一本道を黙々と歩いていた。
二つ隣街…子供の足ではどれだけ頑張っても一週間以上かかる。
それはハンナにも分かっていた。
なのでハンナは、黙々と歩いていた。灯りは要らなかった。
頭が、爛々と夜道を照らしていたからだ。
「はっ…はっ…はっ…」
いかに普通より鍛えているとはいえ、トランクは取り回しにくくドレスは動き辛い。一応動きやすいものを選んできたのだが、それに加えてハイヒールだ。
パーティー会場などではそれでよくても、外では無謀だ。
「ふう…ひとやすみですわ…」
それでも一時間、ただひたすら歩いたため、屋敷はすでに見えなくなっていた。
辺りは鬱蒼とした森だ。
「んぐ…ぷはっ。」
いつも普通に飲んでいた水も、貴重だ。
清流の気配などなく、制限しないとすぐに渇いてしまう。
一口だけ含み、飲み込んでまた歩きだした。
「……そうだ…おとうさま、いつかいってらしたわ…」
『デュオランダル家の子はまず強きこと。そして模範となること。5つになったら民草を脅かす獣を仕留めるのだ。それができてこそ真のデュオランダルと呼ばれる。』
「なにかこわいけものをたおせば…もしかしたらおとうさまも、わたくしをみなおしてくださるかも…!」
ダッ!
自分の名案に嬉しくなったハンナは足を早めた。そうと決まれば早く叔父の家に行き、獣を狩る支度がしたかったからだ。
普段から冷たい父親だったが、ハンナはそんな父親を何よりも愛し、憧れ、尊敬していた。
だからなんとしても見直して貰いたいのだ。
「ふふふふふ…おーっほっほっほっほっ!すぐになしとげてみせますわおとうさま!まっていてくださいませ!!」
その晩、森の中を凄まじい速さで炎が駆け抜けていく様を見た猟師達の噂がたちまち広まり、ただの森が"火魂の森"と呼ばれるようになったのは語種だ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
街に着いた。
だが、ここでメイナスやハンナ自身の考えの至らなさと無謀が浮き彫りとなった。
「ひい!化け物だあああ!!」
カンカンカンカンカンカン!!
ハンナを見た村人はすぐに警鐘を鳴らし、ハンナが街に侵入したのを民に知らせた。
もちろん歓迎のためではなく、迎撃するためだ。
「ど、どうして…このまちにはよくきてたのに…」
呆気に取られていたハンナをよそに、次々と街の男たちや警備隊が集まってくる。
「まさか獣が魔物化したのか!?国立討伐隊に連絡すべきか!」
「落ち着け!多分突然変異の獣か何かだろう!ここで殺せば金もかからねえ!」
「そうじゃ!ころせ!ころせ!!」
殺せ殺せと口々に叫ぶ民衆や街の偉い方の中には、ハンナが知った顔もある。
が、ハンナのことは分からないようだ。
それはそうだ。顔どころか頭もなく、代わりにそこには炎が灯っているのだから。
「あのっ…みなさま!わたくし…」
「来るぞ!街に入れるな!ころせええええ!!!」
「ひっ…!!」
石礫や矢、水の刃が飛んでくる。
それらは軽く避けられるハンナだったが、人々の目が怖かった。
獣を睨む目でハンナを見る彼らは、まるで獣のような雄叫びをあげ、ハンナを排除しようとしてくる。
「いやぁっ…!!」
…ハンナは逃げ出した。
街に続く道から逸れ、整備されていない森の奥に逃げ出した。
「逃げたぞ!追え!!」
尚も追ってくる男たちを引き離し、森を駆け抜けていく。
「はっ!はっ!はあっ!はあっ!!」
フワッ…!
突然浮遊感に襲われた。
「え…なっ……!?」
崖だった。
そう気づいた時には遅かった。
「きゃっ……!!」
ハンナは崖下の暗闇に落ちていった。
二つ隣街…子供の足ではどれだけ頑張っても一週間以上かかる。
それはハンナにも分かっていた。
なのでハンナは、黙々と歩いていた。灯りは要らなかった。
頭が、爛々と夜道を照らしていたからだ。
「はっ…はっ…はっ…」
いかに普通より鍛えているとはいえ、トランクは取り回しにくくドレスは動き辛い。一応動きやすいものを選んできたのだが、それに加えてハイヒールだ。
パーティー会場などではそれでよくても、外では無謀だ。
「ふう…ひとやすみですわ…」
それでも一時間、ただひたすら歩いたため、屋敷はすでに見えなくなっていた。
辺りは鬱蒼とした森だ。
「んぐ…ぷはっ。」
いつも普通に飲んでいた水も、貴重だ。
清流の気配などなく、制限しないとすぐに渇いてしまう。
一口だけ含み、飲み込んでまた歩きだした。
「……そうだ…おとうさま、いつかいってらしたわ…」
『デュオランダル家の子はまず強きこと。そして模範となること。5つになったら民草を脅かす獣を仕留めるのだ。それができてこそ真のデュオランダルと呼ばれる。』
「なにかこわいけものをたおせば…もしかしたらおとうさまも、わたくしをみなおしてくださるかも…!」
ダッ!
自分の名案に嬉しくなったハンナは足を早めた。そうと決まれば早く叔父の家に行き、獣を狩る支度がしたかったからだ。
普段から冷たい父親だったが、ハンナはそんな父親を何よりも愛し、憧れ、尊敬していた。
だからなんとしても見直して貰いたいのだ。
「ふふふふふ…おーっほっほっほっほっ!すぐになしとげてみせますわおとうさま!まっていてくださいませ!!」
その晩、森の中を凄まじい速さで炎が駆け抜けていく様を見た猟師達の噂がたちまち広まり、ただの森が"火魂の森"と呼ばれるようになったのは語種だ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
街に着いた。
だが、ここでメイナスやハンナ自身の考えの至らなさと無謀が浮き彫りとなった。
「ひい!化け物だあああ!!」
カンカンカンカンカンカン!!
ハンナを見た村人はすぐに警鐘を鳴らし、ハンナが街に侵入したのを民に知らせた。
もちろん歓迎のためではなく、迎撃するためだ。
「ど、どうして…このまちにはよくきてたのに…」
呆気に取られていたハンナをよそに、次々と街の男たちや警備隊が集まってくる。
「まさか獣が魔物化したのか!?国立討伐隊に連絡すべきか!」
「落ち着け!多分突然変異の獣か何かだろう!ここで殺せば金もかからねえ!」
「そうじゃ!ころせ!ころせ!!」
殺せ殺せと口々に叫ぶ民衆や街の偉い方の中には、ハンナが知った顔もある。
が、ハンナのことは分からないようだ。
それはそうだ。顔どころか頭もなく、代わりにそこには炎が灯っているのだから。
「あのっ…みなさま!わたくし…」
「来るぞ!街に入れるな!ころせええええ!!!」
「ひっ…!!」
石礫や矢、水の刃が飛んでくる。
それらは軽く避けられるハンナだったが、人々の目が怖かった。
獣を睨む目でハンナを見る彼らは、まるで獣のような雄叫びをあげ、ハンナを排除しようとしてくる。
「いやぁっ…!!」
…ハンナは逃げ出した。
街に続く道から逸れ、整備されていない森の奥に逃げ出した。
「逃げたぞ!追え!!」
尚も追ってくる男たちを引き離し、森を駆け抜けていく。
「はっ!はっ!はあっ!はあっ!!」
フワッ…!
突然浮遊感に襲われた。
「え…なっ……!?」
崖だった。
そう気づいた時には遅かった。
「きゃっ……!!」
ハンナは崖下の暗闇に落ちていった。
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