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四、無双しちょく。
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………
……………ん……
「んが…?」
あたたたた…腰が痛い…あれ、ここどこやったかね…
「起きたか…」
「んあ?…あー、焼き鳥屋かね。ここ。あたしゃあ…」
「凄まじい騒ぎようだった…あそこまで賑わったのは久しぶりだ…」
「あっはっはっ…はしゃいでしもたね…」
思い出した。結局酔っ払って竜人の兄ちゃんやら犬のおっちゃんやらと馬鹿騒ぎしたんやった。
「あ~美味しかった。ご馳走さんでした。久しぶりに美味しい酒のんだねえ。」
「そうか…最後にあれだけ楽しい宴会になって良かった。感謝する。」
「最後?あー、それであんなに昼間から客が入っちょったんやねえ。」
「そうだ…みな、良い客だった。」
「そうみたいやね。」
「ああ…」
「…」
とっくに日が暮れて月が出ちょう。まん丸お月さんは日本と変わらんごとある。
「……なぜ、最後になるか聞かないのか。異世界人は、そういう話が好きだと聞いたことがあるが。」
「あはっ!あたしゃそんなことまで話したかね!あっはっはっ!…今日、あるお嬢ちゃんにも話したけど、暗い話は好かんき、壁にでも話しちょき!黙って聞いてくれろ。」
「…そうか。そうするか。」
「そうしそうし!あ!酒をもうチキっとだけ持ってきちゃっちょき。あれ美味しいき。」
「…まだ呑むのか。」
「へへへ!最後やきね。」
「…何?」
「あんたー!!大変…早く支度しないと奴らが…」
「何だと…!?」
んあ?なんか外が騒がしい…なんやろうね。
「おらあ!とっとと出て行けクソオーガども!!」
なんか始まりそうやけど…迎え酒探そかね。銭は…ここ置いちょこ。
「お前達…約束は明日のはず…まだ日は変わっていない…」
「ああん!?うるせえよクソが!!てめーら衰退種族は人間に逆らわねえのがこの国の法律なんだよ!!それとも逆らってテメーらのガキ殺されてーか!?」
「やめろ…!」
「いやぁっ!!」
「父ちゃん!母ちゃん!!」
「やめてくださいだろぉが!!」
…なんか嫌な雰囲気やねえ。
外を見ると人間の男たちが鬼夫婦の子供であろうのを檻に入れて脅しよった。
胸くそ悪いねえ。
「ヒャハハハ!!おらおらおら!」
男の1人が鬼の大将と女将を剣で斬りつける。雑な太刀筋やねえ。素人やかねえ。
「ぐうっ……」
「うっ……!!」
「父ちゃん!!母ちゃん!!!」
「うるせえ!クソガキ!!」
あ、いけん。子供にも剣を。
バキン!!
「……あ?」
「………うっ……あれ?僕…?」
脆い檻やねえ。いや、やっぱりこの杖が異常なんやろうねえ。
「お、おばあちゃんが、助けてくれたの…?」
「へへへへ…さぁ、どうやかねえ?そこの男が檻斬っちまったんかもしれんよ?下手くそやきねえ。」
「なんだとこのババア…!」
ヒュルンッ!!
男は剣を振るけど、無駄に終わる。
そらそうやろね。剣も折ったき。
へへへ。阿呆面晒しちょう。面白いねえ。
「な…んで…?!」
「ババア!そのガキ返しやがれ!!」
バキン!
どいつもこいつもすっとろいねえ。ババアに負けよるようじゃ、剣握るのなんざ90年早いばい。
「なっ!?ババア魔導師かっ…!?」
魔法の杖と勘違いしたんかねえ。確かに丈夫で、魔法んごとある杖やけどねえ。
「け、剣が折れてる…おばあちゃんが?!」
「へへへへへ…さあ、お父さん達んとこに帰り。」
「う、うん…!」
「逃がすか!!」
バシュッ!!
弓矢かい。用意が良いね。
スパンッ!
まぁその程度斬るうけどねえ。
「なんだとぉ!!?」
ひーふーみーよー…
「ほーん。物陰のも合わせて30人かいね。衰退種族?なんじゃないかねこん人たちゃ。それにしちゃこんな頭数だけ揃えて肝のちいちゃいねえ。」
「な、なんでバレてやがる…!?」
「へへへ…なんでやかねえ?」
旦那は刀剣馬鹿やったからねえ。気配の探り方やら力のいらん剣術やら居合いやら色々教えてくれよった。
役に立たんと思ちょったけど、まさか異世界で役立つとはねえ。
「さぁ、ババアと子連れの鬼夫婦の4人やけど、その人数で勝てるやかねえ…?」
「ババア…サカキ組舐めんなよ…行けテメーらぁ!!」
「「「「「うおおおおおおおおおおお!!」」」」」
馬鹿やねえ安い挑発に乗ってこんな狭い路地に大挙してから。
歩いても仕留めらるっばい。
「よっこいしょっと。」
ドドムッ!!
「ごふっ!?」
「かっ!!」
近くの2人を杖の持ち手で気絶。
「ほら。」
物陰から弓矢を構える奴らにそいつらの剣を投げちょく。
ゴス!ガン!!ゴン!!
「ぶがっ!!」「ぎゃっ!!」「あっ!」
鞘ごとやき死にゃせんめ。3人とも気絶させられてツイとうばい。
「そらそらそらそらそらそら。」
ガスゴスガスバカドガバキ!!!!!
これで追加6人。合わして11人。中々手際良いんやないかね。
「ぎゃあっ!!」
「うがぁっ!??」
ん?
「ほほー。やるばいねえ。」
「ぼ、僕もやり返す…!」
「私らも鬼の一族だからね!おばあちゃんだけにゃ任せらんないよ!」
女将さんと子供ちゃんの追加が10人。合わして21人。
「おおおおおおおお…!!!」
「ぎゃああああああ!!」
「ひいいあたすけええええ!!!」
「いやあああああああ!!!」
大将が残り9人。終わったかね…
「ぐあっ…!」
ドシャッ!
ん…変な気配…?
「あんた!!」
「父ちゃん!!!」
大将が倒れちょる。
焦げくさい…火やね。
「調子乗んなよテメェら…俺の部下共くちゃくちゃにしてくれやがって…」
「それは…こちらのセリフだ…俺たちがお前らに何をした……」
「邪魔。」
「なに…?」
「存在が邪魔。俺らの縄張りのすぐ近くで、オーガ風情がギャアギャアとうざってえ。テメーらは日陰で静かに暮らしとけバカが。」
ボウッ!!
「危ないばい。」
大将の足に杖を引っ掛けて引き寄せる。
あんままやったら燃やされちょった。
「ちっ。邪魔するなババア。死にたくねえだろ。」
「へへへ…別に死ぬのはかまわんよ。死に場所探しよったきね。」
ボボボボボボ…
口振りからするに、組長やろうね。
手からを吹きよる。あれが魔法やろう。面白いけど、感心しどころやないね。
「ならここが死に場所だ…!」
ボウッ!!!
火の玉が飛んできよる。
「おばあちゃん!!」
ボファッ!!
「まぁ…ただの火の玉やしねえ。」
「何…!?」
杖で絡めて回して吹き消す。
木製の杖やったら一回しか出来んけど、やっぱし丈夫やね。燃えそうもない。
「クソババアッ…!!」
ボウッ!ボウッ!ボウッ!!
ボファッ!ボファッ!ボファッ!
「下手な鉄砲、数撃っても当たりゃせんばい。ちゃんと狙わな。」
店やら他の家に引火せんごとしちょかな。火遊び覚えたてのクソガキんごとあって面倒やねえ。
「近寄るなぁっ…!!!」
ボオオオオオオオ!!!
おっほ!火炎放射!
「よいせっ」
ギュルルルルルル!!
杖を回して火を散らす。
昔やった時ゃ熱かったけど、手の皮が厚いき全然応えんねえ。
「そんなバカなっ!!」
「ほら、終わり。」
バカンッ!!
頭への一撃で組長ものす。
へへへへ…最後の最後、目を見開いて驚いてたねえ。面白かったねえ。
それにしても魔法もあるとはねえ。さすが異世界やねえ。ちょっとだけ興味湧いてしもた。
「凄い…魔法をただの杖で…」
大将の顔も女将の顔も子供ちゃんの顔も驚いちょる。あっはっは!
「へへへ…ただの火遊び。良い子は真似せんごとねえ。」
「しようとしても出来ん…」
「おばあちゃん凄い!!」
「本当に凄いわ…」
「へっへ…褒めてもなんも出らんけどねえ。へへへへ…」
酔いが覚めた。腹ごなしにはなったし、土産に酒も貰っちょったき、そろそろ森に行こうかね。
「じゃ、達者でねえ。あんた達この国から出たが良いよ。きな臭い国やきねえ。」
「ああ…そうする…もう妻と息子を危険な目には合わせたくない…」
「この国も異種人差別が酷かったわね…」
「ううう…怖かった…」
異種人差別…異世界も大変やねえ。
そういえば昼間の客達の中にも、普通の人間はおらんやったねえ。
「貴女は…どうするんだ…?」
「あたしゃ今から森に行くんよ。」
「何をしに…?」
「死に場所探しに。綺麗な泉があるらしいきねえ。」
「なに…!?」
「えっ…!?」
「なんで…?」
あたしはアヤメちゃんにしたのと同じ説明を夫婦にもした。
「…言わんとすることは分かるが…」
「そうやろ?へへへ…じゃあ、元気でねえ。美味しかったよ。焼き鳥。」
むぎゅっ
ん?
「こらこら、離さんね。行けれんが。」
「おばあちゃん、死んだらダメだよ…」
「ナロ…邪魔をしてはダメだ…」
「ナロ…」
「でもぉ…」
あー、今日はよく泣かれる日やねえ。
「ナロちゃんて言うんやねえ。良い響きの名前やねえ。あんね、ばあちゃんは自分で死ぬんやないよ。自然と、ゆっくり静かに死ぬんよ。そのために森に行くんよ。」
「でも死ぬんでしょ…?」
「あっはっは!生き物はみーんないつか死ぬんよ。それなら静かに綺麗に死にたいききね。」
「ううう…分からない…」
「あっはっはっ!!死ぬ時になったら分かるよ!ほら、離してごらん。お父ちゃんもお母ちゃんも、生きちょうき良かったねえ。ナロちゃんも生きちょうき良かった。ばあちゃんはそれで満足。ね。良かろう?」
「……ありがとう、おばあちゃん。」
ようやくナロちゃんは話してくれた。
あー、割烹着が鼻水と涙でべちゃべちゃやねえ。月明かりでキラキラ光って綺麗やけど。
「……もし、どこかでもしまた会うことがあれば…」
「ん?」
「最高の焼き鳥と酒をタダで振る舞おう….だからどうか…長生きしてくれ……」
「あ…そうだおばあちゃん名前を…」
「あっはっはっ!そうやねえ。そしたらもし万が一また会った時は、名前を教えるのと焼き鳥交換やねえ。」
「あっ…」
そこで話を切って歩き出す。これ以上後ろ髪引かれたら行きたくなっしまう。
「おばあちゃん…!」
「おばあちゃんまたね!また会おうね!」
「どうか…元気で…!!」
何も言わずに手だけ振って返しちょく。
王は腐っちょったけど、あったかい国やったねえ。
最後の最後で、ほんとに楽しかったねえ。良かった。良かった。
……………ん……
「んが…?」
あたたたた…腰が痛い…あれ、ここどこやったかね…
「起きたか…」
「んあ?…あー、焼き鳥屋かね。ここ。あたしゃあ…」
「凄まじい騒ぎようだった…あそこまで賑わったのは久しぶりだ…」
「あっはっはっ…はしゃいでしもたね…」
思い出した。結局酔っ払って竜人の兄ちゃんやら犬のおっちゃんやらと馬鹿騒ぎしたんやった。
「あ~美味しかった。ご馳走さんでした。久しぶりに美味しい酒のんだねえ。」
「そうか…最後にあれだけ楽しい宴会になって良かった。感謝する。」
「最後?あー、それであんなに昼間から客が入っちょったんやねえ。」
「そうだ…みな、良い客だった。」
「そうみたいやね。」
「ああ…」
「…」
とっくに日が暮れて月が出ちょう。まん丸お月さんは日本と変わらんごとある。
「……なぜ、最後になるか聞かないのか。異世界人は、そういう話が好きだと聞いたことがあるが。」
「あはっ!あたしゃそんなことまで話したかね!あっはっはっ!…今日、あるお嬢ちゃんにも話したけど、暗い話は好かんき、壁にでも話しちょき!黙って聞いてくれろ。」
「…そうか。そうするか。」
「そうしそうし!あ!酒をもうチキっとだけ持ってきちゃっちょき。あれ美味しいき。」
「…まだ呑むのか。」
「へへへ!最後やきね。」
「…何?」
「あんたー!!大変…早く支度しないと奴らが…」
「何だと…!?」
んあ?なんか外が騒がしい…なんやろうね。
「おらあ!とっとと出て行けクソオーガども!!」
なんか始まりそうやけど…迎え酒探そかね。銭は…ここ置いちょこ。
「お前達…約束は明日のはず…まだ日は変わっていない…」
「ああん!?うるせえよクソが!!てめーら衰退種族は人間に逆らわねえのがこの国の法律なんだよ!!それとも逆らってテメーらのガキ殺されてーか!?」
「やめろ…!」
「いやぁっ!!」
「父ちゃん!母ちゃん!!」
「やめてくださいだろぉが!!」
…なんか嫌な雰囲気やねえ。
外を見ると人間の男たちが鬼夫婦の子供であろうのを檻に入れて脅しよった。
胸くそ悪いねえ。
「ヒャハハハ!!おらおらおら!」
男の1人が鬼の大将と女将を剣で斬りつける。雑な太刀筋やねえ。素人やかねえ。
「ぐうっ……」
「うっ……!!」
「父ちゃん!!母ちゃん!!!」
「うるせえ!クソガキ!!」
あ、いけん。子供にも剣を。
バキン!!
「……あ?」
「………うっ……あれ?僕…?」
脆い檻やねえ。いや、やっぱりこの杖が異常なんやろうねえ。
「お、おばあちゃんが、助けてくれたの…?」
「へへへへ…さぁ、どうやかねえ?そこの男が檻斬っちまったんかもしれんよ?下手くそやきねえ。」
「なんだとこのババア…!」
ヒュルンッ!!
男は剣を振るけど、無駄に終わる。
そらそうやろね。剣も折ったき。
へへへ。阿呆面晒しちょう。面白いねえ。
「な…んで…?!」
「ババア!そのガキ返しやがれ!!」
バキン!
どいつもこいつもすっとろいねえ。ババアに負けよるようじゃ、剣握るのなんざ90年早いばい。
「なっ!?ババア魔導師かっ…!?」
魔法の杖と勘違いしたんかねえ。確かに丈夫で、魔法んごとある杖やけどねえ。
「け、剣が折れてる…おばあちゃんが?!」
「へへへへへ…さあ、お父さん達んとこに帰り。」
「う、うん…!」
「逃がすか!!」
バシュッ!!
弓矢かい。用意が良いね。
スパンッ!
まぁその程度斬るうけどねえ。
「なんだとぉ!!?」
ひーふーみーよー…
「ほーん。物陰のも合わせて30人かいね。衰退種族?なんじゃないかねこん人たちゃ。それにしちゃこんな頭数だけ揃えて肝のちいちゃいねえ。」
「な、なんでバレてやがる…!?」
「へへへ…なんでやかねえ?」
旦那は刀剣馬鹿やったからねえ。気配の探り方やら力のいらん剣術やら居合いやら色々教えてくれよった。
役に立たんと思ちょったけど、まさか異世界で役立つとはねえ。
「さぁ、ババアと子連れの鬼夫婦の4人やけど、その人数で勝てるやかねえ…?」
「ババア…サカキ組舐めんなよ…行けテメーらぁ!!」
「「「「「うおおおおおおおおおおお!!」」」」」
馬鹿やねえ安い挑発に乗ってこんな狭い路地に大挙してから。
歩いても仕留めらるっばい。
「よっこいしょっと。」
ドドムッ!!
「ごふっ!?」
「かっ!!」
近くの2人を杖の持ち手で気絶。
「ほら。」
物陰から弓矢を構える奴らにそいつらの剣を投げちょく。
ゴス!ガン!!ゴン!!
「ぶがっ!!」「ぎゃっ!!」「あっ!」
鞘ごとやき死にゃせんめ。3人とも気絶させられてツイとうばい。
「そらそらそらそらそらそら。」
ガスゴスガスバカドガバキ!!!!!
これで追加6人。合わして11人。中々手際良いんやないかね。
「ぎゃあっ!!」
「うがぁっ!??」
ん?
「ほほー。やるばいねえ。」
「ぼ、僕もやり返す…!」
「私らも鬼の一族だからね!おばあちゃんだけにゃ任せらんないよ!」
女将さんと子供ちゃんの追加が10人。合わして21人。
「おおおおおおおお…!!!」
「ぎゃああああああ!!」
「ひいいあたすけええええ!!!」
「いやあああああああ!!!」
大将が残り9人。終わったかね…
「ぐあっ…!」
ドシャッ!
ん…変な気配…?
「あんた!!」
「父ちゃん!!!」
大将が倒れちょる。
焦げくさい…火やね。
「調子乗んなよテメェら…俺の部下共くちゃくちゃにしてくれやがって…」
「それは…こちらのセリフだ…俺たちがお前らに何をした……」
「邪魔。」
「なに…?」
「存在が邪魔。俺らの縄張りのすぐ近くで、オーガ風情がギャアギャアとうざってえ。テメーらは日陰で静かに暮らしとけバカが。」
ボウッ!!
「危ないばい。」
大将の足に杖を引っ掛けて引き寄せる。
あんままやったら燃やされちょった。
「ちっ。邪魔するなババア。死にたくねえだろ。」
「へへへ…別に死ぬのはかまわんよ。死に場所探しよったきね。」
ボボボボボボ…
口振りからするに、組長やろうね。
手からを吹きよる。あれが魔法やろう。面白いけど、感心しどころやないね。
「ならここが死に場所だ…!」
ボウッ!!!
火の玉が飛んできよる。
「おばあちゃん!!」
ボファッ!!
「まぁ…ただの火の玉やしねえ。」
「何…!?」
杖で絡めて回して吹き消す。
木製の杖やったら一回しか出来んけど、やっぱし丈夫やね。燃えそうもない。
「クソババアッ…!!」
ボウッ!ボウッ!ボウッ!!
ボファッ!ボファッ!ボファッ!
「下手な鉄砲、数撃っても当たりゃせんばい。ちゃんと狙わな。」
店やら他の家に引火せんごとしちょかな。火遊び覚えたてのクソガキんごとあって面倒やねえ。
「近寄るなぁっ…!!!」
ボオオオオオオオ!!!
おっほ!火炎放射!
「よいせっ」
ギュルルルルルル!!
杖を回して火を散らす。
昔やった時ゃ熱かったけど、手の皮が厚いき全然応えんねえ。
「そんなバカなっ!!」
「ほら、終わり。」
バカンッ!!
頭への一撃で組長ものす。
へへへへ…最後の最後、目を見開いて驚いてたねえ。面白かったねえ。
それにしても魔法もあるとはねえ。さすが異世界やねえ。ちょっとだけ興味湧いてしもた。
「凄い…魔法をただの杖で…」
大将の顔も女将の顔も子供ちゃんの顔も驚いちょる。あっはっは!
「へへへ…ただの火遊び。良い子は真似せんごとねえ。」
「しようとしても出来ん…」
「おばあちゃん凄い!!」
「本当に凄いわ…」
「へっへ…褒めてもなんも出らんけどねえ。へへへへ…」
酔いが覚めた。腹ごなしにはなったし、土産に酒も貰っちょったき、そろそろ森に行こうかね。
「じゃ、達者でねえ。あんた達この国から出たが良いよ。きな臭い国やきねえ。」
「ああ…そうする…もう妻と息子を危険な目には合わせたくない…」
「この国も異種人差別が酷かったわね…」
「ううう…怖かった…」
異種人差別…異世界も大変やねえ。
そういえば昼間の客達の中にも、普通の人間はおらんやったねえ。
「貴女は…どうするんだ…?」
「あたしゃ今から森に行くんよ。」
「何をしに…?」
「死に場所探しに。綺麗な泉があるらしいきねえ。」
「なに…!?」
「えっ…!?」
「なんで…?」
あたしはアヤメちゃんにしたのと同じ説明を夫婦にもした。
「…言わんとすることは分かるが…」
「そうやろ?へへへ…じゃあ、元気でねえ。美味しかったよ。焼き鳥。」
むぎゅっ
ん?
「こらこら、離さんね。行けれんが。」
「おばあちゃん、死んだらダメだよ…」
「ナロ…邪魔をしてはダメだ…」
「ナロ…」
「でもぉ…」
あー、今日はよく泣かれる日やねえ。
「ナロちゃんて言うんやねえ。良い響きの名前やねえ。あんね、ばあちゃんは自分で死ぬんやないよ。自然と、ゆっくり静かに死ぬんよ。そのために森に行くんよ。」
「でも死ぬんでしょ…?」
「あっはっは!生き物はみーんないつか死ぬんよ。それなら静かに綺麗に死にたいききね。」
「ううう…分からない…」
「あっはっはっ!!死ぬ時になったら分かるよ!ほら、離してごらん。お父ちゃんもお母ちゃんも、生きちょうき良かったねえ。ナロちゃんも生きちょうき良かった。ばあちゃんはそれで満足。ね。良かろう?」
「……ありがとう、おばあちゃん。」
ようやくナロちゃんは話してくれた。
あー、割烹着が鼻水と涙でべちゃべちゃやねえ。月明かりでキラキラ光って綺麗やけど。
「……もし、どこかでもしまた会うことがあれば…」
「ん?」
「最高の焼き鳥と酒をタダで振る舞おう….だからどうか…長生きしてくれ……」
「あ…そうだおばあちゃん名前を…」
「あっはっはっ!そうやねえ。そしたらもし万が一また会った時は、名前を教えるのと焼き鳥交換やねえ。」
「あっ…」
そこで話を切って歩き出す。これ以上後ろ髪引かれたら行きたくなっしまう。
「おばあちゃん…!」
「おばあちゃんまたね!また会おうね!」
「どうか…元気で…!!」
何も言わずに手だけ振って返しちょく。
王は腐っちょったけど、あったかい国やったねえ。
最後の最後で、ほんとに楽しかったねえ。良かった。良かった。
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