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腐れ大学生の孤軍奮闘編
第3話 『監獄』での被害報告の一覧
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私が現世で起居していたのは、下三永学生宿舎という五階建ての学生寮である。
この建物は、起居している学生からは自嘲の意味を込めて、近隣の小綺麗なワンルームマンションに住むブルジョワ学生からは蔑みの意味を込めて、『監獄』と呼ばれていた。
それもそのはず。
この建物の外装は、飾り気のない打ちっぱなしのコンクリートであり、経年劣化でところどころ黒ずんでいるため、遠目だと有刺鉄線がよく似合う更生施設にしか見えないのだ。
外装だけが荒涼としているだけならば、「人も建物も大事なのは中身だ!」と強がることもできたのだが、内装もこれまたひどかった。
床も壁も、温かみからは程遠いコンクリート仕立てであり、部屋の隅には排水管と思しきパイプが、むき出しのまま、天井から床を貫通しているのだ。
それだけでなく、備え付けのベッドや本棚や机まで、木製ではなくスチール製なのは一体どういうことか。
入居初日、配慮がないどころか入居者への悪意すら感じるレイアウトに愕然とし、カーテンにくるまってぶるぶる震えたあの夜のことを、私は未だ鮮明に思い出せる。
寮に対する不満は湧き出て尽きることがないが、あまりにネガキャンばかりしていると入居者が減って共益費の額が上がりそうなので、良いところも挙げていこう。
この寮に住むにあたって最大にして唯一の利点は、なんといっても費用の安さ、これに尽きる。
家賃・共益費・光熱費もろもろ込みで19,000円ポッキリという破格の値段である。
奨学金を限度額ギリギリまで借りて、なんとか学費と生活費を捻出する苦学生の私にとって、このメリットは大変にありがたいものだった。
かくして、費用の安さ一点のみで契約した私に待ち受けていたのは、『監獄』での壮絶極まる暮らしであった。
『安さ』という即物的なメリットに飛びつく輩にモラルなどは求めていなかったが、それにしたって、『監獄』内の民度は最悪であった。
土足厳禁だというのに土のついた靴で平気で入る。
全面禁煙だというのに部屋でタバコを吹かして火災報知器を鳴らす。
女人厳禁だというのに平気で女を連れ込む。
深夜には大声で麻雀大会を開き、玄関の傘立てを利用しようものなら確実に次の日にはなくなる。
当初はきらびやかなキャンパスライフに心躍らせ瞳を輝かせていた私も、ここに入居し生活するうちに、一人前の非常識を身につけていった。
その結果が、悪酔いして命を落として異世界送りである。
『監獄』の異臭騒ぎなど日常茶飯事だから、きっと私の死体が発見されるのは見るも無惨な姿に変わり果ててからだろうな、と、私は現世に残してきた自らの亡骸に思いを馳せた。
そうこうしているうちに、目覚めの珈琲を飲むための湯が、しゅこんしゅこんと沸いてきた。
この建物は、起居している学生からは自嘲の意味を込めて、近隣の小綺麗なワンルームマンションに住むブルジョワ学生からは蔑みの意味を込めて、『監獄』と呼ばれていた。
それもそのはず。
この建物の外装は、飾り気のない打ちっぱなしのコンクリートであり、経年劣化でところどころ黒ずんでいるため、遠目だと有刺鉄線がよく似合う更生施設にしか見えないのだ。
外装だけが荒涼としているだけならば、「人も建物も大事なのは中身だ!」と強がることもできたのだが、内装もこれまたひどかった。
床も壁も、温かみからは程遠いコンクリート仕立てであり、部屋の隅には排水管と思しきパイプが、むき出しのまま、天井から床を貫通しているのだ。
それだけでなく、備え付けのベッドや本棚や机まで、木製ではなくスチール製なのは一体どういうことか。
入居初日、配慮がないどころか入居者への悪意すら感じるレイアウトに愕然とし、カーテンにくるまってぶるぶる震えたあの夜のことを、私は未だ鮮明に思い出せる。
寮に対する不満は湧き出て尽きることがないが、あまりにネガキャンばかりしていると入居者が減って共益費の額が上がりそうなので、良いところも挙げていこう。
この寮に住むにあたって最大にして唯一の利点は、なんといっても費用の安さ、これに尽きる。
家賃・共益費・光熱費もろもろ込みで19,000円ポッキリという破格の値段である。
奨学金を限度額ギリギリまで借りて、なんとか学費と生活費を捻出する苦学生の私にとって、このメリットは大変にありがたいものだった。
かくして、費用の安さ一点のみで契約した私に待ち受けていたのは、『監獄』での壮絶極まる暮らしであった。
『安さ』という即物的なメリットに飛びつく輩にモラルなどは求めていなかったが、それにしたって、『監獄』内の民度は最悪であった。
土足厳禁だというのに土のついた靴で平気で入る。
全面禁煙だというのに部屋でタバコを吹かして火災報知器を鳴らす。
女人厳禁だというのに平気で女を連れ込む。
深夜には大声で麻雀大会を開き、玄関の傘立てを利用しようものなら確実に次の日にはなくなる。
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そうこうしているうちに、目覚めの珈琲を飲むための湯が、しゅこんしゅこんと沸いてきた。
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