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第十六章 様々な侵入者
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私がこの世界に来たとき、私はそもそもどのような扱いだったのだろうか。私が抱いている妄想の世界に来たのではないのか。たまたま、同じ種類の既存の妄想の世界に飛び込んできて、改造された結果なのか。もし、順調に女性化ができなかったら、生理が来るような本当の女性になれなかったら、処分されていたのだろうか。それとも、リーダーに追放されて森の中を彷徨った、あれが処分なのだろうか。
私の妄想で成り立っていながら、私の関知しないところで、多くの現実が進行しているような気がする。私は今後どうなるのだろうか。
もう一つ気になる言葉を司令官は口にしていた。「前のリーダーはフリヒラ女と言っていた」ということだ。ピンクハウスのことを、リーダーは「フリヒラ女」と呼んでいた。司令官は、リーダーの言ったことをそのまま表現しているはずだ。これだけなら、紺のワンピースを着た背の高い女性のことを何と呼んでいたか、「ノッポの女」ということであればそれもリーダーの表現だ。確認するまでもないことだろう。問題は「前のリーダー」と言っていたのだ。リーダーと最後に会ってから1年近くたつ。その最後の姿も若々しいリーダーではなかった。初老の姿だった。リーダーはどうしたというのだろうか。今は別のリーダーがいるというのだろうか。
「確認したいことがあるんですが。」
「何でしょう。」
「紺のワンピースを着た背の高い女性、その人は私の友人でした。」
「お知り合いだったのですか。」
「会いたいのです。」
「・・・」
「会う方法を教えてください。」
暫く沈黙が続いた。
「まさか、処刑されてしまったのでは。」
「そんなことはありません。」
「じゃあ、どこに。」
「たぶんお会いになることはできません。いや、方法はあるかもしれませんが、私にも総裁にも、できません。申し訳ありません。」
「やはり、そうですか。」
「もう、かなり向こうに行ってしまったものと思います。」
「じゃあ、あのフリルやレースのあるお姫様のような恰好をした人とは、あなた方がフリヒラ女と呼んでいる人とは。」
「それも私にはできません。」
「・・・」
「でもその女は、最近まで出現していたようなので、また突然出会うかもしれません。でも私にはその保証はできませんし、どうしたら会えるかもわかりません。どうですか総裁。」
途中から私と司令官のやり取りの場に同席していた総裁(すなわち本部の美少女)も暫く考えたうえで答えた。
「私たちの世界はここで完結しています。この前申し上げたとおり、あの女性たちは異世界に住む人です。たまたま、何らかの事情で共鳴してスリップしてきただけなのです。」
「また、スリップしてここに来ることもあるのでは。」
「物理的に紛れ込んできた、と理解しないほうがいいと思います。双方で認識している世界、それは全く異なる世界ですが、何らかの事情で重なりあったと考えるべきだと思います。お互いに話はできるのですが、実際に認知しているその周囲の世界は全く別物です。」
「・・・」
「この世界では、あのフリヒラ女は地下街の管理室でセーラー服姿の司令官と言い争いをしていたと私たちは認識しています。しかし、フリヒラ女自体は、商業施設のインフォメーションでピンクのワンピースを着た管理人と話をしていたという認識かもしれません。あるいは、私たちと全く同じ認識という可能性もないわけではありません。一人一人の主観はその人以外、本当は誰もわからないのです。異世界のステージで演技をしている人が、私たちの世界と共鳴して、私たちの世界では私たちのステージでその人が演技しているように見えるということなのです。それにもっと不思議なことに、その人と会話ができて、その会話限りでは辻褄があうということなのです。しかし、その背景や相手の見え方は実は全く違っているのではないかと思われるのです。でもはっきりしたことはわかりません。だから、私たちはあのフリヒラ女がいつこの世界に現れるかなど全くわからないのです。」
私の妄想で成り立っていながら、私の関知しないところで、多くの現実が進行しているような気がする。私は今後どうなるのだろうか。
もう一つ気になる言葉を司令官は口にしていた。「前のリーダーはフリヒラ女と言っていた」ということだ。ピンクハウスのことを、リーダーは「フリヒラ女」と呼んでいた。司令官は、リーダーの言ったことをそのまま表現しているはずだ。これだけなら、紺のワンピースを着た背の高い女性のことを何と呼んでいたか、「ノッポの女」ということであればそれもリーダーの表現だ。確認するまでもないことだろう。問題は「前のリーダー」と言っていたのだ。リーダーと最後に会ってから1年近くたつ。その最後の姿も若々しいリーダーではなかった。初老の姿だった。リーダーはどうしたというのだろうか。今は別のリーダーがいるというのだろうか。
「確認したいことがあるんですが。」
「何でしょう。」
「紺のワンピースを着た背の高い女性、その人は私の友人でした。」
「お知り合いだったのですか。」
「会いたいのです。」
「・・・」
「会う方法を教えてください。」
暫く沈黙が続いた。
「まさか、処刑されてしまったのでは。」
「そんなことはありません。」
「じゃあ、どこに。」
「たぶんお会いになることはできません。いや、方法はあるかもしれませんが、私にも総裁にも、できません。申し訳ありません。」
「やはり、そうですか。」
「もう、かなり向こうに行ってしまったものと思います。」
「じゃあ、あのフリルやレースのあるお姫様のような恰好をした人とは、あなた方がフリヒラ女と呼んでいる人とは。」
「それも私にはできません。」
「・・・」
「でもその女は、最近まで出現していたようなので、また突然出会うかもしれません。でも私にはその保証はできませんし、どうしたら会えるかもわかりません。どうですか総裁。」
途中から私と司令官のやり取りの場に同席していた総裁(すなわち本部の美少女)も暫く考えたうえで答えた。
「私たちの世界はここで完結しています。この前申し上げたとおり、あの女性たちは異世界に住む人です。たまたま、何らかの事情で共鳴してスリップしてきただけなのです。」
「また、スリップしてここに来ることもあるのでは。」
「物理的に紛れ込んできた、と理解しないほうがいいと思います。双方で認識している世界、それは全く異なる世界ですが、何らかの事情で重なりあったと考えるべきだと思います。お互いに話はできるのですが、実際に認知しているその周囲の世界は全く別物です。」
「・・・」
「この世界では、あのフリヒラ女は地下街の管理室でセーラー服姿の司令官と言い争いをしていたと私たちは認識しています。しかし、フリヒラ女自体は、商業施設のインフォメーションでピンクのワンピースを着た管理人と話をしていたという認識かもしれません。あるいは、私たちと全く同じ認識という可能性もないわけではありません。一人一人の主観はその人以外、本当は誰もわからないのです。異世界のステージで演技をしている人が、私たちの世界と共鳴して、私たちの世界では私たちのステージでその人が演技しているように見えるということなのです。それにもっと不思議なことに、その人と会話ができて、その会話限りでは辻褄があうということなのです。しかし、その背景や相手の見え方は実は全く違っているのではないかと思われるのです。でもはっきりしたことはわかりません。だから、私たちはあのフリヒラ女がいつこの世界に現れるかなど全くわからないのです。」
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