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第二章 強制労働 -女子高にて-
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私はベッドによじ登りブラウスとスカートを着たまま毛布にくるまった。確かにみんな女だった。ここは女だけの世界だった。しかし心が落ち着くどころかおぞましいとしかいいようのない場所だった。
しばらくして下のベッドにいた厚化粧の女は、薄汚れたタンクトップを脱ぎ捨て上半身素っ裸で意外と形の整った乳房を丸出しにして、ベッドから這い出した。部屋の真ん中の床に胡坐をかき、ベッドの下から取り出した一升瓶を抱えて、茶碗に安酒を注ぎ飲み始めた。私に声を掛けた。
「上の新入りさんよ。飲むかい。」
私は毛布から顔を出し、ちらっと女の顔を見たがすぐ天井を向いた。
女は喉を鳴らしながら茶碗酒を飲み始めた。
「飲むより飯か。食堂に一応人数分の飯は用意してあるんだけどね、少ししかないから惣菜はむりだろうが麦飯ぐらい残ってるんじゃないか。遅くなるとなくなっちまうよ。」
厚化粧は茶碗酒を飲み続けながら、盛んに私に話しかけた。
「いっしょに飲める女が部屋にいなくてね。あんたは酒のちょっとくらいは飲めるだろう。今日は来たばっかりだから、無理にはすすめないがね。」
意外と気のいい人なのかもしれない。少なくとも他の老婆や浅黒い娘よりははるかにましだった。
「今日は風呂は無理だろうね、もう垢だらけのぬるま湯だろうよ。新入りだから我慢するんだね。でも、風呂には入らんでもちゃんと股の間はきれいにしておいてくれよ。前に上にいた女は臭くてかなわなかったからね。」
どう応えていいのかわからず毛布を被って寝たふりをしていた。スカートのポケットにねじ込んでいた学校の用務員室からくすねてきた干からびたさきイカを口にして空腹を紛らわしていた。
厚化粧は何の返事もしない私に愛想をつかしたのか、溜息をついて茶碗酒を飲み干すと自分のベッドにもぐりこんだ。部屋の中は初老の女の意味不明な独り言と老婆の奇声だけになった。そのうち電灯も消され、いつの間にか二人の独り言と奇声も途絶え静かになり部屋の中は女たちの鼾と寝息だけとなった。
しかし、どうにも寝付かれなかった。いったいここはどこなのなのだろうか。女しかいない。それに私のことを疑いもなく女と見ている。女の服を着ているが、化粧をしているわけでもなく、髪も短いままだ。鏡などどこにもないが、恐らく私を見れば男丸出しで単に不細工な男が女装しているだけだ。そもそも女装にもなっていないだろう。
私はこの世界の住人にならなくてはならないのだろうか。あのリーダーだという女性は、この国に入れてやったという言い方をしている。
私の暮らしていた深い森の向こうの世界では多少は私のことを気にかけてくれているだろうか。どうせろくな仕事もしていないし、親兄弟ともほとんど連絡もとりあっていないので、誰も心配もしなければ困っていることもないかもしれない。でも、職場のロッカーには私物を置き去りにしているし、一人暮らしのアパートには碌なものはないものの、僅かばかりの残高しかない預金通帳やら、貴重なゲームソフトなども置きっぱなしだ。そんなどうでもいいものでも処分に悩むのではないか。
ここがどこなのか調べようにも、誰かに連絡をつけようにも、内ポケットに入れていたスマートフォンは城郭で身ぐるみ剥がされたときに一緒に取り上げられてしまった。あのリーダーも、高校生たちも、誰もスマートフォンを持っているようには見えないし、そもそも固定電話すら見かけない。この宿舎には公衆電話すらなさそうだ。もっとも、あったとしても財布も取り上げられたので小銭もない。手帳も取り上げられたので電話番号やメールアドレスもわからない。記憶している番号もない。どうにも連絡の取りようがない。
尿意を覚えて、そっとベッドから下りた。忍び足で部屋を出るとあちこちの部屋から声が聞こえる。何を言っているのかわからないが、おおかた自分の部屋にいる老婆と同じような状態だろう。ようやく薄暗い非常灯に照らされたトイレらしき場所を見つけた。見つけたというより臭いでわかった。学校と同様、入口にも個室にも扉がない。一応、個室を示す低い仕切りらしきものはあるが。染みだらけの大便器はすべて見通せた。便器の前に立ち股間を探ったがチャックはなくスカートのひだに手を触れただけだった。女の恰好をしていることに気が付きスカートの中に手をいれたが、取り出すモノはなかった。数日前リーダーに切断された状況をありありと思い出した。誰もいないとはいえ、ほとんど丸見えの便器の上で下着をおろすことには抵抗を感じたが、尿意にはかなわなかった。便器に跨りスカートをたくし上げた。
宿舎内をそっと歩きまわったが、口にできるものは当然のことながら何もなく、電話の類も一切ない。ここがどこかということを暗示させるようなポスターも張り紙も看板も何もなかった。
部屋に戻り、そっとベッドに上がった。
「早く寝なよ。」
下から声が聞こえた。あの厚化粧の女はまだ起きていたのか。
しかし、すぐに寝息に変った。
向いのベッドからは、何やら声が聞こえた。
相変わらず何を言っているのかわからない。すぐに静かになり寝息と鼾にかわった。
私は闇の中で、相変わらず頭の中に色々なことが渦巻き、おまけに激しい空腹、眠気はなかなか襲ってこなかった。
しかし、明日何があるかわからない。目を閉じた。
いつの間にか眠りに落ちた。
しばらくして下のベッドにいた厚化粧の女は、薄汚れたタンクトップを脱ぎ捨て上半身素っ裸で意外と形の整った乳房を丸出しにして、ベッドから這い出した。部屋の真ん中の床に胡坐をかき、ベッドの下から取り出した一升瓶を抱えて、茶碗に安酒を注ぎ飲み始めた。私に声を掛けた。
「上の新入りさんよ。飲むかい。」
私は毛布から顔を出し、ちらっと女の顔を見たがすぐ天井を向いた。
女は喉を鳴らしながら茶碗酒を飲み始めた。
「飲むより飯か。食堂に一応人数分の飯は用意してあるんだけどね、少ししかないから惣菜はむりだろうが麦飯ぐらい残ってるんじゃないか。遅くなるとなくなっちまうよ。」
厚化粧は茶碗酒を飲み続けながら、盛んに私に話しかけた。
「いっしょに飲める女が部屋にいなくてね。あんたは酒のちょっとくらいは飲めるだろう。今日は来たばっかりだから、無理にはすすめないがね。」
意外と気のいい人なのかもしれない。少なくとも他の老婆や浅黒い娘よりははるかにましだった。
「今日は風呂は無理だろうね、もう垢だらけのぬるま湯だろうよ。新入りだから我慢するんだね。でも、風呂には入らんでもちゃんと股の間はきれいにしておいてくれよ。前に上にいた女は臭くてかなわなかったからね。」
どう応えていいのかわからず毛布を被って寝たふりをしていた。スカートのポケットにねじ込んでいた学校の用務員室からくすねてきた干からびたさきイカを口にして空腹を紛らわしていた。
厚化粧は何の返事もしない私に愛想をつかしたのか、溜息をついて茶碗酒を飲み干すと自分のベッドにもぐりこんだ。部屋の中は初老の女の意味不明な独り言と老婆の奇声だけになった。そのうち電灯も消され、いつの間にか二人の独り言と奇声も途絶え静かになり部屋の中は女たちの鼾と寝息だけとなった。
しかし、どうにも寝付かれなかった。いったいここはどこなのなのだろうか。女しかいない。それに私のことを疑いもなく女と見ている。女の服を着ているが、化粧をしているわけでもなく、髪も短いままだ。鏡などどこにもないが、恐らく私を見れば男丸出しで単に不細工な男が女装しているだけだ。そもそも女装にもなっていないだろう。
私はこの世界の住人にならなくてはならないのだろうか。あのリーダーだという女性は、この国に入れてやったという言い方をしている。
私の暮らしていた深い森の向こうの世界では多少は私のことを気にかけてくれているだろうか。どうせろくな仕事もしていないし、親兄弟ともほとんど連絡もとりあっていないので、誰も心配もしなければ困っていることもないかもしれない。でも、職場のロッカーには私物を置き去りにしているし、一人暮らしのアパートには碌なものはないものの、僅かばかりの残高しかない預金通帳やら、貴重なゲームソフトなども置きっぱなしだ。そんなどうでもいいものでも処分に悩むのではないか。
ここがどこなのか調べようにも、誰かに連絡をつけようにも、内ポケットに入れていたスマートフォンは城郭で身ぐるみ剥がされたときに一緒に取り上げられてしまった。あのリーダーも、高校生たちも、誰もスマートフォンを持っているようには見えないし、そもそも固定電話すら見かけない。この宿舎には公衆電話すらなさそうだ。もっとも、あったとしても財布も取り上げられたので小銭もない。手帳も取り上げられたので電話番号やメールアドレスもわからない。記憶している番号もない。どうにも連絡の取りようがない。
尿意を覚えて、そっとベッドから下りた。忍び足で部屋を出るとあちこちの部屋から声が聞こえる。何を言っているのかわからないが、おおかた自分の部屋にいる老婆と同じような状態だろう。ようやく薄暗い非常灯に照らされたトイレらしき場所を見つけた。見つけたというより臭いでわかった。学校と同様、入口にも個室にも扉がない。一応、個室を示す低い仕切りらしきものはあるが。染みだらけの大便器はすべて見通せた。便器の前に立ち股間を探ったがチャックはなくスカートのひだに手を触れただけだった。女の恰好をしていることに気が付きスカートの中に手をいれたが、取り出すモノはなかった。数日前リーダーに切断された状況をありありと思い出した。誰もいないとはいえ、ほとんど丸見えの便器の上で下着をおろすことには抵抗を感じたが、尿意にはかなわなかった。便器に跨りスカートをたくし上げた。
宿舎内をそっと歩きまわったが、口にできるものは当然のことながら何もなく、電話の類も一切ない。ここがどこかということを暗示させるようなポスターも張り紙も看板も何もなかった。
部屋に戻り、そっとベッドに上がった。
「早く寝なよ。」
下から声が聞こえた。あの厚化粧の女はまだ起きていたのか。
しかし、すぐに寝息に変った。
向いのベッドからは、何やら声が聞こえた。
相変わらず何を言っているのかわからない。すぐに静かになり寝息と鼾にかわった。
私は闇の中で、相変わらず頭の中に色々なことが渦巻き、おまけに激しい空腹、眠気はなかなか襲ってこなかった。
しかし、明日何があるかわからない。目を閉じた。
いつの間にか眠りに落ちた。
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